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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科医師が勧める歯の健康法って?患者が自宅で簡単にできる歯の運動

「歯科医院に定期的に通い、家でも歯磨きをしているから大丈夫。」と思っていらっしゃる患者様がたくさんいます。しかし上手に咀嚼するためにはしっかりとした咬合支持が備わっていなくてはいけません。

舌や下顎がきちんと機能して動くことが必要です。咀嚼障害の原因には歯の欠損や義歯の不具合などが原因となる「器質性咀嚼障害」と、舌や口唇、下顎などの運動障害(麻痺や運動不足)による「運動障害性咀嚼障害」があるといえます。

「器質性咀嚼障害」の場合は齲蝕、歯周病などに対する歯科治療をしたり義歯の作成などの補綴治療を施せばいいのですが、「運動障害性咀嚼障害」の場合は生理的老化により少しずつ身体機能が低下して起こります。

しかし口の機能の低下に気付き早い段階で改善、予防することができれば齲蝕や歯周病の予防になるだけでなく、その後の口腔機能をできる限り維持し、最後まで自分の口で食事を楽しむことができます。

少しでも予防するために日頃から口腔機能に働きかけるトレーニングをするように患者様にすすめてみましょう。

咀嚼機能にかかわるトレーニング

咀嚼機能にかかわるトレーニング

①舌の運動のトレーニング
目的:舌の運動範囲を改善する
●ゆっくりと舌を前方に大きく突出させた後、しっかりと後退させ、口角を横に引く
ゆっくりと確実に行う。

②舌の巧緻性、運動速度のトレーニング
目的:舌を巧みにすばやく動かせるようにする
●舌を左右の口角に交互につけるのをできるだけ早く繰り返す
●舌を前方に突出と後退を交互にできるだけ早く繰り返す
●「パタカラ、パタカラ、パタカラ」を繰り返しはっきり発音する
鏡を見ながら確認して行うと効果が上がりやすい。

③咀嚼のトレーニング
目的:口の中で食べ物を取り回す巧みな動きを鍛える
●さきいかなどの細長くて溶けない食品を一部口腔内に入れ、舌で臼歯の上にもっていき軽く噛んだら舌で反対側の臼歯の上にもっていく
手でさきいかなどを誘導せず舌と唇だけで動かすようにする

④舌、頬、口唇の力強さと持久力のトレーニング
目的:舌の強さと持久力を鍛える
●舌を前に突出させスプーンなどで押して抵抗させる。上からや下から、左右からも同じようにする。
●頬を膨らましてそれに抵抗して両手で負荷をかけるように頬を押す。
上下の口唇の間に糸をつけたボタンを入れ引っ張る。ボタンが口から出ないように口唇の力で抵抗する

嚥下機能にかかわるトレーニング

嚥下機能にかかわるトレーニング

①開口のトレーニング
目的:舌骨上筋の筋力トレーニングをし、嚥下の際に必要な喉頭の挙上や食堂入口部開大を促す
●椅子に座るか横になり、体幹が安定した状態で口を最大限に開ける(顎の下の舌骨上筋が強く収縮する)その状態で秒間保持し、10秒間休憩する。これを5回1セットで1日2セット
顎関節症や顎関節脱臼のある患者には行わない。

②前舌保持嚥下訓練
目的:嚥下の際に咽頭内で必要となる舌根部と咽頭壁の接触を強化し、咽頭収縮力を高める
●前方に突出させた舌を上下の切歯で軽く保持し、そのまま空嚥下する。舌を突出させる量が多いほど嚥下する負担量が多くなります。これを1日6〜8回×3セット

③嚥下おでこ体操
目的:舌骨上筋の筋力トレーニングを行うことで、嚥下の際に必要な咽頭の挙上や食道入口部開大を促す。
●額に手を当てて抵抗を加えおへそを覗き込むように強く下を向く。即時効果もあるので食前に実施してもいい。頸椎症や高血圧の患者には推奨しない。これをゆっくり5つ数える間に1回行う。1から5まで数える間に合わせ5回行う反復訓練も効果的

身体と歯の健康は同じです

身体と歯の健康は同じです

咀嚼運動は「運動範囲」「運動の力」「巧緻性」「速さ」という4つの要素に分けて考えることができます。いずれの機能も上手に咀嚼するために必要なものです。咀嚼するためにはある一定の運動範囲で舌や下顎が動く必要があります。捕食時に舌は前歯を超えて食べ物を迎え入れるために突出し、たべものを歯の咀嚼面に移動したり咽頭に送り込んだりするために一定の範囲において十分な力で運動します。一方で咀嚼の際には口腔内で食べ物を巧みに動かす必要があり、舌や口唇の巧緻性も要求されます。また十分な量の食事を摂るためには運動の持久力も必要となるでしょう。また舌や口唇だけがかってに動くのではなく、舌や口唇、頬、下顎が協調性をもってお互いに運動してこそ咀嚼は成り立つのです。しかし残念ながら全ての人に老いは訪れ身体機能、認知機能の低下に伴って口腔機能も低下し口腔衛生管理が徐々に困難になってきます。そうなると歯周病のリスクも高まり「器質的咀嚼障害」が起こります。
何歳になっても「口から食べる」ということは生活の楽しみであり生きがいでもあります。

口腔機能が低下すると時に食事という行為が命取りになってしまうこともあります。その原因の1つは「本人の摂食嚥下機能に合わない食事を摂ること」です。食事中にむせてしまったり食事時間が長くなったらする場合「食事が摂食嚥下機能に合っていない可能性」が考えられます。

そしてこれらの問題に対策を講じなければいずれは誤嚥性肺炎や窒息を引き起こしてしまうかもしれません。咀嚼機能が十分でない人には弱い咀嚼力でも食べられる食事にしなければなりません。

「嚥下障害の人はスプーン1杯の水で溺れる」という言葉があります。通常水と言うと誰しも飲みやすいものだと思いがちです。しかし嚥下障害の人にとって水は動きが速く口腔内でバラバラに広がることから最も誤嚥をしやすく飲みにくいものなのです。水は私たちが生きていくためには毎日摂取しなければいけない重要なものです。

嚥下障害になり、水やお茶、お味噌などの水分をとる時にむせるようになると知らず知らずのうちに摂取量が減少し「脱水」につながります。

社会が高齢化し、歯科においても齲蝕、歯周病だけでなく「口腔機能」にアプローチすることが重要視されています。

食べる事と飲む事は直接生きることにつながります。その行為をいつまででも楽しく満喫できる人生を送るために口腔機能のトレーニングを早くから取り入れる事を患者様にも伝えてみませんか?

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