歯科医の年収(給料)|高収入イメージのある業種のふところ情報
「医師=高収入」というイメージが一般的にあると思います。治療や手術も他の医療分野とひと味違う歯科業界。医療業界の中での歯科医師の年収事情はどうなっているのでしょうか。同じ医療分野でありながら、医師と年収に差も気になるところです。また、開業医と勤務医では差など。
今回は、この普段はあまり知られることの無い「歯科医師」のふところ事情を探っていきましょう。歯科医師の皆さんも、ぜひ参考にしてみてください。
資格別平均年収ランキング
まず、「歯科医師」は、資格を活かした職業の中でどのくらいの年収なのでしょう。統計では、次のようなランキングとなっています。
1位 医師 1,154万円
2位 弁護士 1,036万円
3位 歯科医師 734万円
4位 公認会計士 716万円
4位 税理士 716万円
歯科医師はランキング3位でした。2位との差がありますが、あくまでも平均値です。これから詳しく内訳を見てみましょう。
歯科医師の平均年収
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によりますと、平成26年の歯科医師の平均月収は59万円、推定平均年収はボーナスも含め734万円でした。年齢や性別、勤務先でどのように違うのか細かく見てみましょう。
■勤務先の規模別平均年収
10~99人…785万円
100~999人…529万円
1000人以上…551万円
■年齢別・男女別平均年収
40歳以上の男性歯科医師は年収がおおむね1,000万円を超えてきます。女性は50代で1,000万円台になり、全体的に見て女性の方が、年収が低いようです。
年収が最も高い年代は男性45~49歳、女性50~54歳です。年齢が高くなるにつれ、勤務医ではなく開業医として収入が上がることから、このような結果になると推測されます。
勤務医と開業医ではどれくらい収入に差がある?
■勤務医のふところ事情
常勤歯科医師の場合、月給で約30~50万円が相場です。賞与を含め、年収450~800万円ほどになります。これらは地域差(都会と田舎の差)もあります。初任給は月給で23万~30万円くらいが相場のようです。しかし近年は、年収が200万円~300万円の「ワーキングプア」と言われる歯科医師が増えているとされています。
■開業医のふところ事情
開業医は、給与という形ではなく、収益からさまざまな経費を差し引きした「収支差額」が収入に当たるため、経営状態によって変わります。経営をうまく回せる人であれば年収1,000万円を超えると言う場合も。それには経営に関しての知識やセンスが必要となります。歯科医院の競争は激化しているため、経営が厳しい開業医も数多くあるのが現状です。保険外診療の治療法や経営論を勉強し、保険診療に取り入れていくなどの努力が必要となります。
■そのほかに差がつくところはどんなところ?
勤務医であれ開業医であれ、高い年収を取得するためには、それなりの努力が必要だと言うことが解りました。常に新しい知識を取り入れるアンテナを張り、技術を向上させる勉強を惜しまないこと。それにより平均以上の月収・年収に結びついてくるのです。
たとえば、専門技術(歯列矯正やインプラントなど)を行っていることを標榜することで、他の一般歯科医院との差別化を図ります。最近の患者様は、最新医療を安心・安全であれば受けられる治療の選択肢が多い医院を選びます。選択肢として保険外診療が入っていても、それが有効な治療であれば選択します。このため、顧客を多く抱えるようになれば、勤務医であっても給与アップにつながるのです。
歯科医師としての就職事情はどうなっている?
昨今、歯科業界は歯科医院の数の増加や歯科医師数の大幅な増加が問題視されています。平成24年統計での日本の歯科医師数は102,551人となっています。また、年間約3,000人の新人歯科医師が排出され、増加の一途をたどっているのです。
供給が多くなれば希少性は低くなり、それに伴って収入は低くなってしまいます。就職先もたくさんあるようですが、歯科医院が多い地区などでは激戦で、経営も難しくなりますので、そのような医院に努めた場合は当然収入も低くなります。
歯科医師は定年退職年齢が無いこともあり、新人歯科医師は年々増えています。この現象を踏まえ、国としては2004年から歯科医師国家試験の難易度を引き上げ、歯科医師の過剰を抑える方向で動いています。
これからの歯科医師の就業スタイルを考える
先に述べたように昨今、歯科医師数の増加による現象から、年収の高い就職先を望むことが難しくなってきているといえます。このような問題をいかに解決していくのかが重要です。
■「潜在的な需要」を創出する
増え続ける歯科医師の中で突出するには、「潜在的な需要」を創出することが必要です。
例えば…
・歯科先進国フィンランドに学ぶ予防歯科の需要
・要介護高齢者への訪問歯科の需要
・歯周病菌が及ぼす影響による患者の潜在的な需要
・webやモバイル等活用した集客広告への転換と移行
これらすべてがチャンスに繋がるとは限りませんが、昔のままのスタイルではなく、今後需要が生まれるであろう分野、いままさに需要がある問題をどう解決していくかを考えねばならないでしょう。
■常に「新しい情報」をキャッチするアンテナを持つ
今、つねに新しい情報にアンテナを張れる人材が求められていると思います。一昔前、歯科医師数が少なかった頃は、「待っていても患者が来る」時代でした。しかし現代は、医師数も増え歯科医院も多いため、「患者が歯科医院を選ぶ」時代になっています。相対的な歯科医師の収入減の理由は、経営能力のないまま開業している点からきている部分もあるのではないでしょうか。経営に強い歯科医院は、周りと比べて頭一つ抜け出すことができるでしょう。
昨今はネット社会。口コミや波及性が高い時代になってきています。患者側はより高い技術と最新治療を選びたいと思い、評判や口コミの情報を頼りにします。ここで経営能力を発揮し、患者様の需要に合ったサービスを提供することが収入向上に繋がるのではないでしょうか。
従来のプル型経営の時代は終わり、「潜在的な需要に応える」ことと「積極的な経営スタイル」が収入向上に不可欠です。
将来を見据えて長く勤務できる工夫はある?
歯科医師として安定した給与を得るためには、1つの歯科医院に長く勤務することが挙げられるでしょう。これからの歯科医師の就業スタイルも大切ですが、そのことを活かしながら長く勤務できる歯科医院と出会うためにはどうしたらよいのでしょうか?
■需要と供給が上手くできている歯科医院であるか
歯科医院の数が軒並み増加傾向にありますが、人口は減少傾向にあります。さらに、歯科医院の新規開業が都会に集中しているために激戦区の増加と、歯科医師の過疎化を生んでいる地域も増えてきています。当然、歯科医院の患者獲得が難しい世の中だということです。そのため、先にお話しした「潜在的需要に応える」という事も関係してきます。
たとえば田舎で高齢者が多い地域に、スタイリッシュな審美歯科があっても需要は高くないでしょう。しかし、入れ歯専門やインプラントに特化した歯科医院であれば需要は高くなることが考えられます。
就職先を選択するにあたり、需要と供給が上手くいっている歯科医院であるかどうかを確認しましょう。その中から自分の就業スタイルと合う歯科医院に勤務することが、仕事も給与にも満足のいく仕事につながるのではないでしょうか。
■地域や年齢層に合った経営スタイルであるか
また、「積極的な経営スタイル」に関しても、地域性や患者の年齢層などを考えて経営されているかどうかは大きく影響します。患者の動向を把握し、「どこで・誰に・何を」ということができている歯科医院かどうかがポイントです。
歯科医院を構えている地域に合っている経営スタイルであるかどうか。そして歯科と患者がコミュニケーションを取れる場を積極的に企画・提供しているような歯科医院は、患者との信頼関係ができている歯科医院だといえます。
そのような歯科医院に勤務することができれば、歯科医院の経営も安定しており将来性もあります。長く勤務していくことを見据えるとすれば、就職前にそのあたりにも注目しておくことが大切です。
成功している歯科医院の「マーケティングの戦略」を知りましょう!
患者が多く安定した経営を維持している歯科医院は、その経営戦略が確立しているといえるでしょう。成功している歯科医院では、患者獲得のための「マーケティング戦略」を行っているのです。
■患者のQOLを向上させること
来院する患者のQOLを向上させるためのさまざまな工夫をしています。具体的には豊富な医療サービスの提供、医院の内外装の改良、自費の価格設定など。そしてホームページなどを作成し、オープンに情報を公開するなどしています。「自分が患者であれば気に入るか」という第三者目線で考え、待合室の快適さや落ち着いた雰囲気の診療室。医院設備の充実と公開など。これらを「40~50代女性が喜ぶには?」という目線で考えるのも、口コミで医院の良さが広がっていく戦略となっています。
■歯科スタッフの満足度を向上させること
マーケティング戦略を成功させるためには、つねに最新医療にアンテナを張り、治療技術の向上やコスト面の低減も必要です。これらを実施するのは歯科スタッフ。そのため、学会や外部セミナーへの参加のバックアップ、接遇の向上などに力を入れ、勤務医やスタッフの意欲と能力の向上に積極的な支援をしている場合が多いようです。
■時代の流れに沿った患者層に合わせた工夫
歯科医院来院患者の過半数が50~70代の中高年層です。そこでこの年代の利便性や治療内容に沿った医療サービスをマーケティングしていくことも成功のカギです。
歯周病やインプラントなど、中高年層に増えてくる悩みに特化したり、予防歯科などの充実により定期検診をおこなっている。また、訪問診療や在宅診療、歯科医院のバリアフリー化など高齢者に向けたサービスの充実も喜ばれ、また中年層は高齢者になった時のことを見据えて継続患者となることでしょう。
まとめ
高収入なイメージのある歯科医師。職業別ランキングからも、職業の中では高い方であることは確かです。しかしこれらは平均値であり、歯科医師の収入にも格差があることがわかりました。一昔前のような自転車操業では、もはや成り立たなくなってきています。これから歯科医師が高収入に繋げるには、時代のニーズに沿った「潜在的需要」を考えていきましょう。