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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

誰もが驚く海外医療との違い!歯科医を専門ごとに分担している国

海外の歯科医療は、日本の歯科業界と大きく異なります。日本の歯科では、虫歯治療や歯周病、補綴などほとんどの場合全て一人の歯科医師で行われることが一般的です。

これに比べて海外ではどうでしょうか。先進医療国ではひとつの症例に対してそれぞれ専門医が分担しますが、実は歯科においても同様のことが行なわれています。国によっては医科と同じように歯科も専門医に分かれているのです。

では海外における歯科の専門医とはどのようなものでしょうか。アメリカを例にとってみていきます。

一般歯科医と専門歯科医

一般歯科医と専門歯科医

日本で歯科医師になるためには、歯科大学や歯学部を受験し、そこで必要過程を習得したのちに国家試験を受験し、歯科医師となります。しかしアメリカで歯科医師を目指す場合はまず4年生の大学に進学し、卒業してから新たに歯科大学に入学するシステムになっています。

ここで各治療部門に専門養成プログラムが定められ、4年間の在学中に相当数の治療実績を残した学生のみ卒業することができるという過酷なシステムです。

そして卒業できた学生は、ここでようやく国家試験を受ける資格を得て、合格できた者が歯科医師となります。この段階では専門医ではなく、GPと呼ばれる一般歯科医であり、虫歯、簡単な歯周病、入れ歯など日常的な歯科治療を行います。

難症例に対し高度な治療を行う専門医

難症例に対し高度な治療を行う専門医

一般歯科の治療では改善されないような症例で、高度な技術と治療を必要とする場合や全身に疾患がある場合など、アメリカでは専門分野に委ねられます。ここで歯科の専門医が治療に携わることになるのです。歯科と聞くと一科目しかないように思えますが、アメリカの歯科にはいくつかの専門分野があり、いずれも一般歯科や他の専門医と連携を取りながら高度な治療を行う歯科治療のエキスパートです。

専門歯科医の種類として、歯内療法科医、歯周病科医、矯正歯科医、口腔外科医、補綴歯科医などがあります。
ここで歯周病科医と歯内療法科医を例に挙げてみます。

■歯周病を専門とする歯周病科医
歯周病は口の中のトラブルの中でも虫歯と並んで最も日常生活に関係しています。日本だけでなく、世界中でも歯周病の罹患率は非常に高く、加えて全身と密な関連があるため、生活習慣病の一部とも言われています。

日本では、重度の歯周病の患者も一般歯科医院の歯科医師が治療を行ないますが、アメリカでは専門分野である歯周病科の医師や歯科衛生士が治療にあたります。歯肉炎や軽度の歯周病の場合は一般歯科医が行うこともありますが、重度の場合は一般歯科医が診ることはほとんどありません。歯周病科にてSRP(歯肉内部の歯石除去)や、歯肉を切開して行なう歯石除去(Fオペ)などが行なわれます。

また、歯肉や歯を支える歯槽骨など歯の組織に関する治療も行なうことから、インプラント治療も口腔外科医だけではなく、歯周病科の医師が行なうようになってきました。顎の骨の移植も、歯周病科医が行なっているようです。

最近では、インプラント周囲炎への対応が重要視されているため、歯周病科が治療にあたることが増えてきました。インプラント治療を行った後に起きる代表的なトラブルであるインプラント周囲炎は歯周病の症状に似ており、インプラントと歯肉の関係は歯と歯肉の関係に似ています。そのために歯肉に対する専門的な治療が不可欠となり、歯肉のエキスパートである歯周病科が治療にあたります。また糖尿病などの全身疾患を持つ患者の歯周病治療は、医科との連携プレーが必要不可欠です。

このように、歯周病科医ひとつを見ても、医科と同じように他の専門医と連携を取りながら、ひとりの患者にしっかりと向き合い、チーム医療として質の高い歯科医療を実現しているのです。

■根管治療のエキスパート、歯内療法科医
歯を失う原因は歯周病だけではなく、根管治療の失敗や予後不良も考えられます。根の先端に膿が溜まり腫れる、痛みが続く、歯が割れてしまうなどの症状は、ほぼ根管治療の失敗から保存が不可能となり、抜歯に至ってしまいます。

日本の保険治療では一般的な流れとして「①虫歯が見つかる ②保険を使った虫歯治療 ③虫歯の再発 ④抜髄から銀歯 ⑤二次カリエスから抜歯」のケースがほとんどです。今世界の常識は、いかに歯を残すかということですが、そんな中で現在の日本の保険治療はかなりレベルが低いとされています。アメリカの歯内療法の成功率は90%以上ですが、日本では約60%と言われています。この背景には、日本の歯科治療は保険適用のものが圧倒的に多いことが関係していると思われます。日本の保険治療は安価で患者にとってはありがたいですが、使う素材やコストの面で問題があるため、最終的に抜歯になってしまうことが多くなります。これは治療内容から考えると、世界水準とは言い難い現状です。

アメリカをはじめとする海外は、日本では抜歯と診断された歯でもできる限り保存をする考えであり、そのための技術と知識をもった歯髄を専門的に治療する歯内療法科が存在します。歯を残すことは、根の治療が成功するかどうかにかかっているといっても過言ではありません。そのためのエキスパートが揃ったのが、歯内療法科です。


専門同士で連携しあう

専門同士で連携しあう

口腔外科では、日本のように親知らずの抜歯から顎骨の治療、先天性疾患、顔面の病気などを専門に治療します。また補綴歯科医では、入れ歯や被せものなど失った歯の修復だけでなく、噛む機能や審美的な治療などを専門的に行います。口腔内だけでなく、全身の健康まで考慮し、総合的に治療します。

患者の欠損した部分を口腔外科医と補綴歯科医が連携し、共同で治療を行なうケースも珍しくありません。各専門分野が協力することで、ひとりの患者をトータルサポートすることも特徴と言えるでしょう。

アメリカに焦点をあてて説明してきましたが、タイやシンガポール、北欧などといった国も、専門医制度が確立されています。シンガポールにおいては、高齢者歯科といった専門も存在するくらい、細やかな専門分野にわかれています。タイやシンガポールの歯科業界では、口の中の疾患という領域に対し、トータルでサポートするのがかかりつけ医であり、歯周病など特定の疾患に対し、高度な技術を用いて難症例を治療するのが専門医というスタンスで治療に臨んでいます。ひとりの患者をかかりつけ医と専門医が協力し、サポートするのです。

まとめ

このように、日本の歯科医療と海外とでは治療スタンスから大きな違いがあります。日本の歯科医療水準はアメリカなどの医療先進国と比べると、どうしても保険治療の利点に傾斜しがちとなり、世界レベルに届かない結果が出てしまっています。これは治療技術が劣っているわけではなく、保険制度とそれまでの風潮から成っているものと思われます。海外は「良い臨床医を育てる」というスタンスから専門医を育てる制度が、日本と大きな差となって現れています。

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