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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

海外の歯科医院での治療環境と保険事情

わたしたちは病気になったり怪我をしたりしても気軽に医療機関にかかることができ、それが当たり前のように感じています。それは日本の保険制度により一定の保険料を支払うことで誰もが等しく僅かな負担だけで治療が受けられることが定められているからです。

しかし、最近では保険制度の範囲内で行われる治療には限度があり、それにより十分な満足できる治療を受けられないことが患者の間で話題となっているようです。ところが海外からすれば、日本の医療は大変恵まれた環境であるといいます。というのも、当たり前のように医療保険に加入でき、当たり前のように少ない負担額ですぐに治療が受けられる日本のような環境は決して多くはないからです。

今回は海外の代表的な国における保険制度や歯科を含めた医療環境の詳しい事情について、日本と比較していきながらご紹介いたします。

海外の保険事情

海外の保険事情

海外の似たような健康保険制度については、それぞれ次のような特徴があります。

■アメリカの場合
アメリカの保険制度は日本のものと比較すると非常に複雑です。日本は市町村による健康保険組合か社会保険のどちらかに加入していれば、保険制度で認められているあらゆる医療機関でさまざまな診療が受けることができます。

しかし、アメリカの場合は健康保険をはじめ、歯科保険、眼科保険、重病保険、入院保険といった何種類もの専門保険があり、加入している保険により受けられる保障が異なります。そのため、歯の治療を受ける場合は、歯科保険に加入していなければ治療にかかった費用の全額を自身で負担しなくてはなりません。またアメリカの歯科治療の水準は日本よりも高く、歯の治療をすると非常に莫大な費用がかかってしまいます。

保険に定められている法律は、国が定めた法律を基にして各州によって決められており、住んでいる州により加入できる保険会社も受けられる保障も変わってきます。さらに社会保険の場合でも勤務している会社により受けられる保障が異なるため、加入している社会保険の保障外の治療を受ける際は別途保険の加入が必要になる場合もあります。このように非常に煩わしさを覚える医療環境であることから、国民のセルフケアの意識はとても高く、虫歯や歯周病にかからないよう積極的に予防をしています。

また、歯科を問わず、あらゆる専門の治療においても独自で保険に加入しなくてはいけないため、国民の多くは保険に加入することにあまり積極的ではありませんでした。しかし2010年、アメリカでは医療保険改革法が発効され、それにより2014年から保険制度が大きく変わりました。

今までは、保険に加入することは国民の自由であり、強制ではありませんでした。しかし、医療保険改革法により国が定めた基準を満たした保険に必ず加入しなくてはいけなくなり、それに従わずに保険に加入しない者には罰金が課せられることになったのです。これによりアメリカもまた国民皆保険制度の体制へと変わりました。しかし保険に加入するための手続きができる期間が限定されていたり、低所得者向けの公的保険制度の拡大が各州によって遅れているなどまだ問題は残っている状況です。

■イギリスの場合
イギリスの特徴は、独自の国営医療サービスであるNHS(国民保健サービス)というものがあることです。これは1948年に設立され、現在もなお続いている公的医療制度であり、これに加入している国民の治療費は無料もしくはほぼかからないというのがその魅力です。このNHSのほかにも、民間経営による社会保険が存在しており、どの保険機関に加入するかは国民の判断で決めることができます。

国民皆保険制度ではなく、保険に加入するかどうか自体も国民の判断で決めることができます。歯科の場合はNHSや社会保険などを除き、独自の歯科保険というものが存在します。というのも、NHSを利用しても歯の治療は無料で受けることはできず、治療にかかった費用の8割を自己負担しなくてはいけません。

イギリスの歯科医院は、NHSと提携しているところとそうでないところがあり、NHSと提携していない歯科医院で治療をした場合、費用は患者の全額自己負担になります。さらにNHSを利用した場合は必ず順番で治療を受けなくてはいけないため、どんなに痛みがあり緊急性を訴えても自身の治療が受けられる番になるまで治療は受けられません。

そのため急いで治療をしてもらいたい場合は、NHSと提携していない歯科医院にて全額自己負担による治療をしてもらう必要が出てくることもあります。しかしイギリスの歯科診療は世界基準においても高水準であり、保険に加入せずに治療を受けると非常に高い治療費がかかってしまいます。また保険に加入したとしても治療にかかった費用の払い戻しが行われるのは2ヶ月後であり、緊急性のある治療には非常に不向きです。そういった環境であることから、国民はなるべく虫歯や歯周病にならないようにセルフケアの努力をしなくてはなりません。

■スウェーデンの場合
では、国民の虫歯が少ない医療先進国のスウェーデンの場合はどうでしょう。スウェーデンは日本のような社会保険制度ではなく、税金により国民の医療機関にかかった際の治療費が賄われています。そのため多くの医療機関が国によって経営されていますが、一部においてプライベート(民間経営による)医療機関も存在しています。

治療を担当する地域と看護を担当する地域が決められており、治療を受けるためにはラスティングという地域に赴く必要があります。治療にかかる費用は19歳まで無料であり、それ以降は一部負担が義務付けられています。また負担額にも上限がつけられているため、負担額が一定の額を超えた場合は超過分だけ公費により負担されます。

しかし歯科医療に関してはこれに該当せず、治療を受けた際は高額の自己負担額が発生してしまいます。それでも前述のとおり19歳までは無料で歯科治療も受けることができ、また国からもある程度の補助金が支給されます。ただしラスティングと契約していないプライベート医療機関で治療を受けた場合は、保障は受けられず、全額が自己負担になります。

このように2つのタイプの医療機関があり、どちらで治療を受けるかは国民の判断によって決められます。またスウェーデンの国民はひとりひとりが歯の健康を自身で維持する意識が非常に高いため、歯科医院にかかる患者の多くが予防を目的とした定期検診であると言います。そのため歯科治療にたくさんの費用がかかることは少なく、万が一治療が必要な場合でも高水準による治療を受けることができます。

まとめ

まとめ

海外の保険事情と治療環境は国によって異なりますが、我々日本人がいかに少ない自己負担のみで多くの治療を受けることができているのかを理解することができます。また歯科医師に関しては、イギリスは不足している傾向であることに対し日本は非常に多くなっており、現在の歯科医院の数はコンビニよりも多いとされています。

現在の保険診療の限界に不満の声をあげている方も、海外の医療制度を見ることで考えを改められることがあるかもしれません。

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