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歯科コラム

デンタルケア大国スウェーデンを超える世界一子供の虫歯が少ない国とは

みなさんは『虫歯が世界一多い国』と『虫歯が世界一少ない国』について調べてみたことはありますか。そして日本が世界で何番目に虫歯が多い国なのかは考えたことがあるでしょうか。おそらくあまり関心が持たれたことがない外の国の虫歯事情と自分の国の虫歯の実状。しかし実際に詳しく調べてみると大変興味深いことがわかります。

虫歯がとても少ない国として広く知られているのは『フィンランド』と『スウェーデン』。そして『フィンランド』がひと昔前までは非常に虫歯が多い国であったことはご存知でしょうか。今回は虫歯が少ない国の特徴と、現在もあまり知られていない『フィンランド』や『スウェーデン』よりも虫歯の数が少ないことで評価をされている国についてご紹介したいと思います。

フィンランドの昔と今

フィンランドの昔と今

フィンランドが虫歯の少ない医療先進国と呼ばれるようになったのは日本が平成になって以降のことです。それまでのフィンランドでは、子供の虫歯が非常に多く、またその平均的な本数は日本よりも多いという大変意外な状況でした。しかしその後、国全体が虫歯予防に取り組み始め、虫歯は減少していき現在の状況に至ったと言われております。そして当時、フィンランドが虫歯対策において予防に効果が認められることにより取り入れていたのが『キシリトール』を配合した食品です。

今となっては日本でも当たり前のようにガムやタブレットなどで販売されている『キシリトール』ですが、なぜ日本でも『キシリトール』が導入されたのかはご存知でしょうか。

『キシリトール』はフィンランドの歯学者であるアリエ・シェイニン氏が1976年より始めた研究により、虫歯の予防に効果があることが証明されました。その後、フィンランドにおいて『キシリトール』の導入をはじめとした食生活の改善や徹底したセルフケアなどによる虫歯予防が活発に行われました。

その結果、国民の虫歯減少に成功したフィンランドは、実際に行われた虫歯予防の取り組みと『キシリトール』の予防効果によって世界中で話題となりました。それに影響を受けた日本でも1997年に『キシリトールガム』が商品化され、国内で販売されるようになったのです。『虫歯は治すものではなく予防するもの』という意識が深く根付いたフィンランドでは、現在も国民の多くが虫歯の予防に積極的に取り組んでいます。そのため今なお虫歯の少ない国として高い評価を受けているのです。

スウェーデンの予防診療の取り組み

スウェーデンの予防診療の取り組み

『キシリトール』の予防効果を証明し虫歯の減少に成功したフィンランドに対し、同じく虫歯の少ない国となったスウェーデンにはどのような背景があるのでしょうか。スウェーデンもまたその昔は医療先進国でありながら虫歯や歯周病を持つ国民が多い国でした。

当時その状況を危険視した政府は国全体で行う『予防』による虫歯対策の一大プロジェクトを考案しました。それを開始したのが1970年。その頃のフィンランドはまだ虫歯対策を始める前であり、もともと国全体が予防による虫歯対策を始めたのはスウェーデンが始まりと言われています。すなわちスウェーデンの動きを見たフィンランドもまたその数年後に国家による対策を始めたのです。

スウェーデンで行われた政府による具体的な対策プロジェクトとは、歯科医療の診療方針を『治療中心』から『予防中心』へと改変することでした。医療の場に対する『予防中心』の診療を義務化させ、さらに『予防』における治療費の負担をなくすことで国民に『予防』の重要性を訴えかけたのです。その結果、政府の働きかけにより多くの国民がセルフケアの指導を受けるようになり、虫歯は徐々に減少の一途を辿っていったのです。そのため現在もスウェーデンにおける『予防中心』の診療体制は続いており、国民のセルフケアに対するモチベーションは常に高い状況を維持できています。

世界一虫歯が少ない国

世界一虫歯が少ない国

虫歯の減少を成功させたフィンランドとスウェーデンに対し、この両国よりも国民の虫歯が少ない国があることはあまり知られていないことです。またその国における虫歯の平均的な本数も一人あたり0.1本。かのフィンランドとスウェーデンですら平均的な虫歯の本数は一人あたり1.1~1.2本であることから、それがいかに驚異的な数値であるのかが窺い知ることができます。

その国とはなんと『ガーナ』。それを聞いた方はさぞ『意外』のひと言が出てくるかと思われます。なぜなら『ガーナ』はチョコレートの原料となるカカオを生産している国として有名であり、実際にカカオの生産量は世界ランキングでも2位。(2013年時点の外務省データより)そんな国がなぜこれほどまで国民の虫歯が少ないのか。その理由は国民の食事に秘密がありました。

『ガーナ』ではカカオを多く生産しているにも関わらず、国内ではカカオやチョコレートを食べる習慣がないのだと言います。また普段の食生活における砂糖の消費量が極めて低く、一日の消費量はなんと20グラム以下。この数値は栄養学においても理想と言われている量なのだそうです。虫歯の原因菌であるミュータンス菌は砂糖を多く含んだ食品を摂取することで非常に増殖することがわかっています。このことから虫歯の予防は日頃のセルフケアだけでなく、普段食べている物も重要なのだということがよくわかります。

日本の変化

日本の変化

日本の虫歯の本数に変化があらわれはじめたのは1980年以降。すなわちフィンランドが虫歯対策を始めたタイミングとあまり変わりません。しかしフィンランドにおける虫歯の本数の変移は、対策を始めて10年後の1985年の時点で一人あたり3.8~4本。さらに10年後の1995年の時点では一人あたり1本弱です。

日本の場合は10年後の1990年の時点では一人あたり3.8~4本。さらに2000年後の時点では一人あたり2.4~2.5本。比較するとその差はまさに歴然としています。その差が生んだ理由はやはり国が行っている虫歯対策の姿勢にあります。フィンランドではキシリトールの導入をしただけでなく、歯科医師を増やすために大学を増設し、また国民に虫歯が防げる病気であることを教育しました。それにより国全体の虫歯に対する意識を『治すもの』から『予防するもの』へと変えたのです。病気の治療によって発展してきた日本の医療に『予防中心』の診療がなかなか浸透していかないのは、この違いにあるのだと思われます。

まとめ

『治療』によって医療の技術が進化してきた日本の歯科医療が『予防中心』に変わることは決して簡単なことではありません。しかし昔に比べると、虫歯を予防することで医療費削減ができるだけでなくさまざまなメリットがあることを積極的に訴えている自治体や歯科医院なども増えています。少しずつ変わりつつある虫歯に対する常識がごく一部のところから日本全体に広がっていくのは、あまり遠い未来のことではないかのもしれません。

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