通常の歯科医師とは違う!警察歯科医・学校歯科医の業務内容と特徴
歯科医師は、歯科医院や大学病院での歯科医療行為にとどまらず多方面で活躍しています。今回、身近にあるようで実は詳細はわからない「警察歯科医」や「学校歯科医」についてご紹介します。
警察歯科医の特徴
■警察歯科医とは?
警察歯科医は、警察署より依頼を受け、歯や口の状態から身元不明遺体の確認。生前の歯科治療跡をカルテやレントゲンなどと照らし合わせ、本人特定の際「検視」の補助を行います。
■災害時のエキスパート!
警察歯科医が知られるようになったきっかけともいえるのが、昭和60年の日航機墜落事故。遺体の損傷が激しく見た目で確認できない場合、歯科所見で本人確認をする仕事としてテレビや新聞で紹介されました。その後、阪神淡路大震災、東日本大震災など大きな災害時も、その活躍が報道されています。
■警察歯科医の調査の有効性
体の中で「歯」は最も硬く、高温でも変化なく残存する組織。歯の状態や治療痕が全く同じだという人は皆無であることから、警察歯科医の死後歯科データはかなり高い確率で本人かどうかの絞り込み材料になります。
■組織化し活躍する警察歯科医
各都道府県に歯科医師会を中心として警察歯科医の組織化がなされ、「警察歯科医会」が全国に増えていきました。現在、全国で年間2,000件以上の歯牙鑑定があるといわれています。今後も警察歯科医の役割が注目されることでしょう。
警察歯科医の業務
■警察歯科医への業務依頼
警察歯科医の業務は、主に「検視・検案」に関わる身元確認作業。警察署から協力要請があった場合に行います。身元不明の死体が、犯罪に起因するかどうか判断するために行われる「検視」の一環として、身元確認に役立てることが主な目的として行われます。
■警察歯科医の業務の流れ
・ご遺体のデンタルチャートを取り、レントゲン撮影や口腔写真撮影などのデータを収集します。
・まとめた資料をもとに、警察が地域の歯科医師会や歯科医療機関に照会をかけます。該当すると思われる人物が見つかった場合はカルテやレントゲン等提供してもらいます。
・提供された資料と、ご遺体の歯科所見をまとめた資料を照らし合わせ、警察歯科医が照合を行います。
・最終的には指紋やDNA鑑定などに歯科所見も加え、警察が総合的判断から本人かどうか特定します。
■警察歯科医が調査から推測すること
・歯や顎の大きさから、年代、男女などを推測できる。
・歯のすり減り具合や劣化状況から、年齢が推測できる。
・治療痕跡(被せもの、義歯、差し歯など)から治療した年代や施術した歯科医師の特性などが推測できる。
学校歯科医の特徴
■学校歯科医とは?
歯科医師である知識と技術をもち、教育者として学校の中で活動を行います。大学以外の学校(小・中・高)において、歯科健康診断や保健指導、歯科保健教育などの職務を非常勤で行う歯科医師のことです。
■歯科検診で学校にやってくる歯医者さん
6月頃になると行われる「歯科検診」。誰もが、集団で順番に並んで学校で歯科検診を受けたことがあるでしょう。子どもたちの口腔状況を記録し、歯科医院を受診する必要のある生徒へお知らせします。歯科受診の動機づけにも役立ちます。また、歯科衛生士とともに、歯科に関する意識向上のための保健指導を行ったりする医師もいます。
■学校歯科医の法的な立場
学校歯科医は「歯科医師法」においての歯科医師と、「学校保険安全法第23条」の学校歯科医の身分を併せ持ちます。学校の所属別で、文部科学省、都道府県教育委員会、市町村教育委員会のいずれかに委嘱する公務員です。
■学校歯科医に求められること
主な職務は学校歯科検診を受け持つこと。昨今では、学校保健安全法第1条「児童、生徒、学生及び幼児ならびに職員の健康増進を図り、もって学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資すること」にしたがって、子どもの健康づくりのための啓蒙活動も取り入れていくことも求められています。
学校歯科医の業務
■学校歯科医の仕事は毎日ある?
毎日学校歯科医としての業務があるという訳ではありません。そこで、通常は一般的な歯科業務に携わっていることがほとんど。担当する学校での活動日にのみ訪問して業務にあたります。
■学校歯科医の業務内容
業務としては、『学校保健の3つの領域である「保健教育」「保健管理」「組織活動」において、学校関係者、生徒、保護者や地域住民と連携を図りつつ「子どもの健康づくり」のために活動する』とされています。
■「保健教育」としての業務
歯科に関する事柄について、保健指導を行うための教材や資料の提供、助言などを行ったりすることによる啓蒙活動を行います。
■「保健管理」としての業務
歯科検診(毎年定期的なもの、就学時検診など)を行い、処置を要するもの、指導を要するものなどをスクリーニングします。また、健康相談や保健指導を行う場合もあります。健診後は事後措置として、治療措置が必要・不要の記載された用紙を提示します。
■「組織活動」での業務
・「学校保健安全計画」立案に際し、歯科保健の部分にて意見を述べる。
・学校保健委員会、地域学校保健委員会へ参加し、学校と地域の人々の健康づくり推進についてや健康に関する課題を提言。
・学校保健関係者(教員、学校医、学校薬剤師など)とコミュニケーションを図り、協力体制を築きます。
・入学式、運動会、卒業式などの学校行事や地域の行事に積極的に来賓として参加することが望ましいとされています。
■これから期待される学校歯科医の活動
昨今、生きる力を育むために「歯科保健教育」が重要視されてきました。また「健康日本21」「健康増進法」の制定により、学齢期は健康に過ごすための体づくりとして重要な時期とされています。さらなる健康保持・増進のため、学校歯科医は専門家として積極的に学校教育の中に参加することが求められるでしょう。
まとめ
ひとつの見解を導き出すうえで、同じ角度からだけでなく、さまざまな角度から多彩な特性を取り入れることで、解決までの道が広がることがあります。警察歯科医や学校歯科医の関わりは、「歯科」という角度からの特性を投じ、その特性を活かして活躍することができると思われます。