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歯科コラム

歯科の診療報酬の算定方法が40円ルールから15円ルールに引き下げ

厚生労働省は、平成29年12月の中医協の総会において、診療報酬の見直しにおいて、医科と歯科で取り扱いに差があった「特定薬剤」と「麻酔の薬剤料」について、歯科も医科と同じ控除額とする改定を行う方針であることが明らかになりました。
いわゆる「40円ルール」の改定です。
診療報酬における「40円ルール」の改定は、歯科医師にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

中医協とは

中医協とは

中医協とは、中央社会保険医療協議会の略称です。健康保険や国民健康保険などの医療保険の診療報酬点数についての厚生労働大臣の諮問機関です。
診療報酬の改定に際して、厚生労働大臣が諮問し、その答申に基づいて、2年ごとの診療報酬の改定が行われています。歯科で用いられる特定薬剤や麻酔薬剤についても、中医協が薬価の算定に関わっています。


薬剤料の算定方法について

歯科医療を行うに際して用いられる「特定薬剤」等や第10部に記載されている「麻酔の薬剤料」を算定するにあたって、歯科の診療報酬点数表には、控除額が定められています。
控除額とは、点数を算定するにあたって薬価から差し引かれる金額のことです。この場合も、他の診療報酬と同じく金額ではなく点数で表されます。
現在の歯科の診療報酬点数表に記載されている控除額は4点(40円)です。すなわち、40円以上の特定薬剤や麻酔薬の薬価から40円が差し引かれ、残りの額について診療報酬点数が算定されるシステムになっているのです。
また、医科では、医科点数表に薬剤料の算定方法が記載されており、薬価の算定に際しては、これに基づいて計算されています。
ここでは一般的な内服薬などの薬剤料は、15円を超える薬価の薬剤について、15円のみを控除するにとどめ、残りの点数について算定するように決められています。
つまり、我が国において、同じ国内で医療行為をするにあたって、同じ薬剤を使っても医科では15円控除、歯科では40円控除、算定上取り扱いに格差があったわけです。
ですから、同じ薬剤を使っていても、医科の方が歯科よりも診療報酬の点数が高く算定されていました。要するに歯医者が使うという理由だけで、点数が低かったわけです。これでは法律の下の平等という近代国家の大前提が成り立ちませんね。


特定薬剤

特定薬剤とは、平成20年3月の厚生労働省告示の「特掲診療科の施設基準等」の第11条と第12条に規定されている薬剤のことです。
別表の歯科用薬剤の外用薬に記載されている薬剤に加えて、”ケナログ口腔用軟膏0.1%”、”アクリノール”、”アフタゾロン口腔用軟膏0.1%”、”テトラ・コーチゾン軟膏”、”テラ・コートリル軟膏”、”デルゾン口腔用”、”生理食塩液”が該当します。このうち、”アクリノール”と”生理食塩液”については歯科点数表第2章第9部(手術)にのみ規定されており、その他は、歯科点数表第2章第8部(処置)にも規定されています。
特定薬剤の算定には、除外項目が設けられています。う蝕処置、歯髄の覆髄、知覚過敏処置、乳幼児う蝕薬剤塗布処置、歯内療法、歯周基本治療、120点以上の処置や手術で、これらの際には算定することはできません。
ただし、例外処置も規定されており、簡単な処置や手術に際しては、特定薬剤を使用した時は特定薬剤料のみ算定できます。また、歯周病の処置に際して、歯周ポケットに薬剤を注入した時や、入院が必要な手術を実施した時に使った生理食塩液やアクリノールの算定も認められています。


麻酔薬(歯科用局所麻酔薬)

特定薬剤

歯科用局所麻酔薬は、表面麻酔薬と浸潤・伝達麻酔薬と種類に分けて歯科関係薬剤点数表に規定されています。
表面麻酔薬は、”キシロカインポンプスプレー””ネオザロカインパスタ””コーパロン””ポロネスパスタアロマ””ハリケインリキッド歯科用20%””ハリケインゲル歯科用20%””ビーゾカイン・ゼリー”の6種類で、薬価はすべて異なりますが、点数は同じです。浸潤・伝達麻酔薬は、リドカイン製剤の”オーラ注カートリッジ””キシレステシンA注射液””リグノスパンSカートリッジ””歯科用キシロカインカートリッジ””デンタカインカートリッジ”、プロピトカイン製剤の”歯科用シタネストーオクタプレシン”、メピバカイン製剤の”スキャンドネストカートリッジ3%”です。点数は、6.0点から9.7点です。


もし、40円ルールが見直されると

現在は、特定薬剤も麻酔薬剤も算定に際しては、使った薬剤の薬価が40円を超過している場合に、薬価から40円を控除した残りの金額を10円で割った点数について、1点未満を切り上げて得た点数とされています。
使用する薬剤の薬価が40円を下回る場合は、麻酔の所用点数に含まれるとされ、算定が認められていません。
もし、表面麻酔と浸潤麻酔など2種類以上の麻酔薬剤を使用した場合は、使用した麻酔薬剤の合計金額から40円を控除した残りの金額を10円で割った点数について1点未満の端数を切り上げて得られた麻酔薬剤料を算定します。
例えば、歯科用軟膏剤であるペリオクリン歯科用軟膏は、現在薬価が10mg0.5g1シリンジが655.20円です。点数では、65.5点になりますが、4点控除され、61.5点になり、1点以下が切り上げられることで62点になっています。
1.5点控除になりますと、65.5点-1.5点で64点となり、2点高くなります。
パスタのヒノポロンは、1g170.80円です。1歯0.5点、1/3顎1.1点、2/3顎2.3点、1顎3.4点と4点控除であれば、請求点数はいずれも0点になります。1.5点控除となりますと、2/3顎以上で算定が可能になります。
キシロカインポンプスプレーOAは2gで5.1点です。これを使った場合、現行では5.1点から4点控除され、残る1.1点が切り上げに伴い2点になります。1.5点控除になると、3.6点になり、4点になりますから2倍になる計算です。
40円ルールが医科と同じく15円控除に見直された場合、特定薬剤、麻酔薬剤ともに点数が高くなることが理解していただけるとおもいます。


まとめ

同じ薬剤であっても今まで医科と歯科という括りだけで薬価に違いがあったわけで、非常に不平等でした。
今後、こうした点が改められるということになり、40円ルールが医科と同じ15円控除に改められると、控除幅が縮小した分、薬価の点数が上がることになります。
厳しい歯科業界としては一筋の光明と言えるでしょう。


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