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歯科コラム

資料として残る!口腔内写真の撮影方法

あなたの歯科医院では、口腔内写真を撮影しておられますか?口腔内写真は、診療を行なうにあたり、患者さんの大切な資料のひとつです。口腔内写真の撮影方法によっては、経過観察だけでなく、患者さんのモチベーションを高める効果や、治療の評価の資料することもできます。
口腔内写真を活用すれば、患者さんから「あそこの歯医者で治療を受けたら、写真を使ってわかりやすく説明してくれた」などと評判を上げることも夢ではありません。

口腔内写真を撮影する主な5つの目的

口腔内写真を撮影する主な5つの目的

1.説明用資料
鏡で見せてもわかりにくいところを含め、患者さんにわかりやすく説明する資料になります。

2.治療計画の立案
レントゲン写真やその他の検査と総合して、治療計画を立案するための資料になります。

3.モチベーションの向上
例えば、プラークの染色写真を患者さんに提示すると、実際に磨けていないところが目の当たりに出来ます。また、歯周病治療によって、臼歯部など普段目にしにくいところの状態が良くなっていることがはっきりとわかります。
口腔内写真には、局所の状態をわかりやすく示せるので、モチベーションの向上に効果があります。

4.治療の前後の比較資料
口腔内写真を撮影しておけば、治療を開始する前と、その後を比較することができます。患者さんにとって、とかく忘れがちな以前のお口の中の状態を記録しておくと、治療の結果も説明しやすくなります。

5.スタッフの技術のチェック
意外と忘れがちなのがこれです。以前の口腔内写真を比較することで、スタッフの技術のチェックが出来ます。


口腔内写真に必要な規格性

口腔内写真は、医学的な記録資料としてとても大切です。
治療の前後の比較や、数年前と現在など経過観察を行なうためには、誰が撮影しても同じように撮影できる規格性が必要です。撮影する人によって撮影された写真の条件が変わるようでは、比較することが出来なくなります。
口腔内写真の規格性とは、「一定の倍率で、いつも同じ範囲の歯を、同じ方向から撮影する」ということです。その他の撮影条件として、奥行きや明るさなどを統一しておくこともポイントです。


フォーカスはオートか、マニュアルか

フォーカスはオートか、マニュアルか

一般的にはオートフォーカスの方が撮影しやすいのですが、口腔内写真ではマニュアルフォーカスの方がおすすめです。
口腔内写真の特徴として、ミラーを使った撮影や異なる方向からの撮影があげられますが、これらはオートフォーカスには不得意な条件です。
また、オートフォーカスの場合、カメラの合わせたピントが、撮影者が思う理想的なピントと異なることがあります。
マニュアルフォーカスの場合、普通の写真ではピントを調節して撮影しますが、口腔内写真では規格倍率を採用しているためピントは決まっており、撮影者がカメラの位置そのものを動かして撮影します。


口腔内写真の準備

■患者さんの位置と頭位
撮影は、水平な仰臥位を基本としますので、ユニットの背もたれは倒してください。
撮影者の位置は、患者さんの右下、8時の位置とし、患者さんに顔を少し右に向けてもらいましょう。

■口角鉤とミラー
口角鉤は大きいサイズと小さいサイズを準備します。乾いていると動かしにくいので、少し水で湿らせて滑らせるように位置づけするのがポイントです。
ミラーは咬合面観用と側面観用の2種類を使います。冷えていると呼気で曇ってしまうので、撮影前に体温程度にまで温めておくほうがいいでしょう。


口腔内写真の撮影法

口腔内写真の撮影法

■正面観
撮影倍率:1/1.5~1/2倍
口角鉤:口角鉤(大)を両側の口角に装着し、歯列から離すようにやや前方に持ち上げながら側方に引っ張ります。

ミラー:使いません。

ポイント:上顎中切歯の切縁部にピントを合わせます。ファインダーの中央垂線が正中に、切縁が水平になるようにカメラの位置を補正します。

■上顎咬合面観
撮影倍率:1/2倍
口角鉤:口角鉤(小)を両側の口角に装着し、やや前上方に引き上げるように保持します。
ミラー:咬合面観用ミラーを挿入し、ミラーの背面を下顎の前歯の切縁にあてて、反対に臼歯部からは浮かせるようにします。
ポイント:できるだけ大きく開口してもらいましょう。鼻の穴が写り込まないよう、カメラを位置づけしてください。

■下顎咬合面観
撮影倍率:1/2倍
口角鉤:口角鉤(小)を両側の口角部に装着し、下口唇の正中方向に向けて少し動かします。
ミラー:咬合面観用のミラーを上顎の歯列に当てます。舌にあたらないように注意してください。
ポイント:舌の位置は、自然な状態にするか、後方に巻いてもらうか、どちらかに統一しましょう。ミラーの先端で舌を軽く押さえるといいでしょう。

■側方面観
撮影倍率:1/1.2倍
口角鉤:口角鉤(大)は、撮影する側の反対側に少し力を抜いて装着しましょう。
ミラー:側面観用ミラーを舌にあたらないように口腔内に挿入します。ミラーの位置は、臼歯部の頬粘膜を外方向に広げるようにし、頬側面と平行にします。
ポイント:咬合平面がファインダーの中央水平線に重なるようにしましょう。   ピント位置は、上顎小臼歯の咬頭頂部に合わせます。先に撮影するのは、右側です。    撮影に時間がかかると、唾液が出て右側にたまってきますので、適時吸引してください。
 
■上顎口蓋側面観
撮影倍率:1/1.2倍
口角鉤:口角鉤(大)を使います。あまり強く引っ張らないようにしましょう。
ミラー:側面観用ミラーを使い、湾曲を口蓋に合わせるようにしてください。
ポイント:ファインダーの中央水平線に歯列が平行になるようにカメラの位置を決めます。カメラは右手で操作しますから、右側上顎の口蓋側面観を撮影するときは、逆手でミラーを持つといいですよ。

■下顎舌側面観
撮影倍率:1/1.2倍
口角鉤:口角鉤(大)を使い、あまり強く引っ張らないようにしてください。
ミラー:側面観用ミラーを使います。下顎前歯部を乗り越えるような感じに、ミラーの湾曲を利用してください。舌根部をミラーの先で排除して、臼歯部から離すようにしましょう。
ポイント:ファインダー中央水平線に歯列に平行になるように位置を合わせてください。


おすすめの撮影の順序

1.まず口角鉤(小)を装着し、上顎咬合面観を撮影します。
2.続いて、下顎咬合面観を撮影します。
3.口角鉤(小)を外し、口角鉤(大)に持ち替えて、正面観を撮影します。
4.右側の上顎口蓋側面を撮影し、左側の上顎口蓋側面を撮影します。
5.下顎舌側面観を右側から撮影します。
6.右側の口角鉤のみ外して、右側方面観を撮影します。
7.口角鉤を右側に動かして、左側方面観を撮影します。


まとめ

口腔内写真は、説明用の資料や治療の前後の比較として用いるだけでなく、患者さんのモチベーションをあげたり、スタッフの技術の確認など、いろいろな面で有用です。
口腔内写真には規格性が求められる点など、普通の写真撮影とは異なる技術が必要です。
ここで紹介した撮影のポイントを参考にして、口腔内の状態を記録することで、日常の診療に役立ててくださればと思います。


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