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歯科コラム

顔面に赤みが出る「酒さ」を治すための歯周病ケア

難治性の皮膚疾患に酒さという病気があります。顔面と頭部にのみ発症し、慢性に進行していくのが特徴の病気です。
原因もよくわかっていないのですが、口腔内細菌をコントロールすることで、酒さを改善させることが出来た症例が認められるようになってきました。
酒さとは、一体どのような病気なのでしょうか?そして、歯周病ケア、口腔ケアを通じてどうして改善できたのでしょうか?
わかりやすく解説します。

酒さとは

酒さとは

酒さは、「しゅさ」と読みます。お酒に関係あるような名称ですが、実はお酒には関係なく、慢性的に進行する皮膚疾患のひとつです。お酒を飲んだときのように、顔が赤くなるのでこのように命名されたといわれています。


酒さの原因と症状について

酒さの原因については、現在のところはよくわかっていませんが、免疫が関係している可能性が考えられています。
また、酒さの好発年齢は30代から50代で、発症部位は限られており、中顔面部を中心とした顔面部と頭皮にのみ生じます。
発症部位の皮膚が、発赤してチクチクとした違和感が生じたり、皮下の微小血管が浮き上がって見えたりします。吹き出物を形成することもあり、膿瘍を作って膿を伴ったりすることもあります。
軽症では、顔面部に生じる消えにくい赤みを認めます。中等症になると、赤みに加えて、発疹が出現します。重症例では、皮脂腺が拡張して、それまではポツポツとしていた赤みが、皮膚が全体的に赤みを帯びるようになります。


酒さの治療法は?

酒さの赤みは、皮膚の微小血管が拡張することによって生じています。
まず、皮膚の血管の拡張を引き起こす香辛料の使用やアルコールの摂取を制限する食事療法が行なわれます。
抗菌薬の軟膏を処方することもありますし、症状によっては抗菌薬の内服薬が用いられます。
皮膚疾患ではしばしばステロイド軟膏が使われますが、酒さの場合は悪化させる可能性があるので、あまり用いられません。


酒さと口腔内細菌の関係とは

酒さと口腔内細菌の関係とは

酒さの原因は、いまだ特定されてはいませんが、免疫系の異常ではないかとする向きもあります。
その視点で、歯周病の原因菌など、口腔内細菌が関連している可能性が指摘されています。
もともと口腔内には、細菌がたくさん存在しています。その細菌数たるや、トイレの水の中の細菌数よりも多いと言われるくらいです。
つまり、口腔内では、日々免疫系が口腔内細菌と戦っているわけです。
ところが、口腔内をきれいに保っていないと、たちまち不衛生になり、口腔内細菌が増えてきます。免疫系は直ちに反応してくれるのですが、日常的に口腔内が不潔な状態が継続するようになってくると、免疫系細胞が常に活動している状態になり、免疫系のシステムが過剰な反応をきたすようになります。
その結果、白血球などの免疫細胞を過剰に活性化させ、炎症反応を引き起こすようになります。
免疫系の働きが過剰になって起こる炎症反応は、口腔内に現れるだけではありません。全身のどの部位に起こってもおかしくありません。その症状が現れた部位が顔面や頭部のときに、酒さとして発症していると考える臨床家もいます。
酒さを引き起こしている誘因のひとつが口腔内細菌ではないかと考えられている背景には、このような考え方があるのです。


歯周病ケアや口腔ケアと酒さ

歯周病はむし歯と並ぶ2大歯科疾患のひとつです。歯科医師にとっては、歯周病はとても身近な病気ですので、日常の歯科臨床において、よく遭遇します。
歯周病ケアを行ない、歯周組織の状態が改善されると、口腔内の細菌数が減少することは、歯科医師にはよく知られたことです。
無歯顎者は、歯がないので歯周組織はありませんので、歯周病にはなりませんが、口腔内には有歯顎者と同じように細菌がいます。
歯がないからといって、口腔内をきれいな状態に保っていなければ、口腔内で細菌が増殖し、口臭の原因となるばかりでなく、誤嚥性肺炎を起こすなどいろいろな病気の原因となります。
そこで、無歯顎者に口腔ケアを実施すると、口腔内の細菌が減少し、口臭も消失、肺炎を起こすリスクも減少することが知られています。
つまり、歯周病ケアや口腔ケアを行なうことは、口腔内細菌を減少させる効果があるわけです。
そのため、歯周病ケアや口腔ケアをしっかり行なうことで、口腔内細菌が減少し、難治性だった酒さが改善できた症例が報告されています。


まとめ

酒さは、顔面や頭部にだけ発症する慢性の皮膚疾患です。特に顔面に発症した場合、鼻や頬、すなわち中顔面部を中心とする発赤や吹き出物を形成するので、審美的な影響がとても大きいです。
現在のところ、原因がよく分かっていないこともあり、治療が難しい病気のひとつに数えられています。
ところが、近年、歯周病ケアや口腔ケアを通じて、口腔内細菌を減らすと、それに伴って酒さが改善してきた症例が認められるようになってきました。
現在は難治性の疾患ですが、歯科的なアプローチで改善できる可能性が示されたわけです。酒さは皮膚疾患であり、歯科疾患ではないのですが、歯周病治療という歯科医師にとってはごくありふれた歯科治療をすることによって、歯科医師が、難治性の疾患の治療に貢献できるかもしれないのです。
そう遠くない将来、酒さの患者さんに対して、皮膚科の医師から「歯医者に行って、お口のケアをうけたらどうですか?歯周病治療はきちんと受けていますか?」と、歯科受診を勧められるようになるかもしれませんね。


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