Quick Search
気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

虫歯や噛み合わせ悪化にも?口呼吸はお口の万病の元!

ヒトに限らず、地球上の生物にとって、呼吸は生きていく上で欠かせません。ヒトも他の動物と同じように、外から酸素を取り込み、二酸化炭素を排出しています。
通常、呼吸は鼻を通して行ないます。ところが、なかには口で呼吸するのが常態化している人がいます。ヒトはほ乳類の一種ですが、口で呼吸をするのはヒトだけといわれています。
口呼吸をすると、身体にどのような影響が及ぶのでしょうか。

鼻呼吸と口呼吸の違い

鼻呼吸と口呼吸の違い

空気中には、目に見えないくらい小さなホコリやゴミ、花粉、細菌やウイルスなどがたくさん浮かんでいます。呼吸をすればこれらを吸い込むことになります。
しかし、鼻呼吸をしていれば、毛や粘液が空気中に漂っている異物を取り除き、鼻水として排出してくれます。ここでとりきれなかった物があったとしても、鼻の奥には扁桃リンパ組織という更なる関門が待ち構えています。
このように、鼻呼吸であれば、二重のトラップが空気中の異物をとらえ、肺に入り込まないように防いでくれるのです。
また、乾燥した空気を加湿する働きもあります。言うなれば、加湿空気清浄機といったイメージですね。
一方、口呼吸の場合は、空気中の異物を取り除いたり、乾燥した空気を加湿したりすることはできません。異物を含んだ乾燥した空気が直接気管や肺に吸い込むことになります。
そのため、呼吸器系の臓器を傷めたり、病気の原因になったりするのです。


口呼吸の原因

赤ちゃんは、母乳を飲んで成長します。母乳を飲んでいる時、口で呼吸することは出来ません。鼻呼吸をしていないと飲めないのです。
つまり、ヒトは生まれたときは皆鼻呼吸をしているということです。
ところが、幼少児に鼻炎や風邪になり鼻が詰まり、口呼吸をしてしまうと、それが習慣化されてしまうことがあります。
たまに口をぽか~んと開けたままにしている子どもがいますが、もし鼻づまりがないのに口を開けているとしたら、口呼吸が習慣化していることが考えられます。
小さいうちに治しておけば、すぐ治りますが、そのまま放置して成長してしまうと、大人になっても口呼吸をしてしまうようになるのです。
成人では、肥満も原因のひとつです。肥満になりのどの気道がせまくなると、息苦しくなるので口呼吸になりがちです。過度な飲酒も鼻の粘膜の血管がふくれ、鼻づまりを引き起こし、口呼吸の原因となります。


口呼吸によるお口の乾燥化のもつ危険性

口呼吸をすると、唾液が蒸発してお口の中が乾燥してしまいます。
唾液には実に多くの働きがあることが明らかになっています。たとえば、洗浄作用や抗菌作用です。
唾液は液体ですので、お口の中の汚れを洗い流す働きがあります。唾液の中には、細菌が繁殖して増えるのを抑える抗菌成分が含まれています。お口は身体の中へとつながる入口ですが、洗浄作用と抗菌作用で細菌が身体の中に入り込むのを防いでくれています。
口呼吸をすると、唾液が蒸発してしまいますので、唾液の持つ防御力が低下します。その結果、お口の中で細菌が増えやすくなり、のどが炎症を起こしやすくなるのです。
そして、のどが炎症を起こすと、扁桃リンパ組織が機能しなくなり、免疫系に異常をきたしてしまいます。
口呼吸が万病のもとと呼ばれるのはこのためです。


口呼吸による虫歯の増加

口呼吸による虫歯の増加

唾液には、洗浄作用と抗菌作用以外にも、pHを中性化する緩衝作用や、再石灰化作用もあります。
虫歯が起こる原因は、ストレプトコッカス・ミュータンス等のいわゆる虫歯菌が作り出す乳酸にあります。この乳酸が歯を溶かして歯のエナメル質の結晶構造を破壊してしまうのです。
唾液の緩衝作用は、乳酸によるお口の中の酸性化を中和してくい止め、歯が溶かされにくくしてくれます。再石灰化作用には、ストレプトコッカス・ミュータンス等の出す乳酸によって生じたエナメル質の欠損部分を修復して治す働きがあります。
ところが、口呼吸をすると唾液が乾燥して失われるため、緩衝作用や再石灰化作用が期待できなくなり、虫歯になりやすくなるのです。


口呼吸と噛み合わせへの影響

口呼吸は、歯の咬合関係も悪化させます。
歯列は、舌が内側から歯を外へ押し出す押す圧力と、唇や頬が内側へ押す圧力のバランスの上に成り立っています。
口呼吸をしていると、口が常に開口状態になりますので、歯に唇が外側から内側に向かって押す圧力が加わらなくなります。しかし、舌は常に内側から外側に向かって歯に圧力を加え続けていますので、歯が前に押し出されるようになります。
このとき、歯は唇側に平行移動するのではなく、切端から唇側へ押し出されていきます。そのため、上下の前歯が接触しなくなり、前歯が唇側傾斜するようになるです。
前歯の歯並びは、外見に大きく影響します。しかも、口呼吸をしていると、上下の口唇が離れるように反り返り、そのような形になってしまいます。口呼吸は、前歯や唇を通して顔の表情にも影響してくるのです。


口呼吸への対応

口呼吸への対応

では、口呼吸はどのようにして治せばいいのでしょうか。
簡単なトレーニング法に、「あいうべ体操」があります。
これは、みらいクリニックの今井一彰氏が開発したトレーニング法です。

1.「あ~~~っ」と、お口を大きく開きます。
2.「い~~~っ」と、横方向にお口を伸ばします。
3.「う~~~っ」と、前方へお口を突き出します。
4.「べ~~~っ」と、舌を前方に突出させてから下方向に反らせます。

これだけの動きを、1セットとして、1日30セットほど繰り返すだけです。
これによって、口呼吸を鼻呼吸に治すことができます。
また、睡眠中の口呼吸に対しては、口閉じテープを使ってみるといいでしょう。
小林製薬などから、幾つかの製品が発売されています。ドラッグストアで購入可能です。
鼻呼吸に改善するには、こうした方法があります。口呼吸の患者さんを認めたら、一度試してみるのもいいでしょう。


まとめ

呼吸は鼻でするものです。口呼吸は、ヒトの本来の姿ではありません。
口には、鼻が備えている加湿空気清浄機のような働きがなく、乾燥した空気中に漂う異物を直接吸い込む原因になります。この結果、口呼吸は免疫系に異常をきたし、いろいろな病気を引き起こしかねないリスクがあります。
また、お口の乾燥化は、唾液の働きを低下させ虫歯を増やします。口呼吸による唇の力のバランスの悪化は、かみあわせも悪くします。
患者さんは、虫歯が出来たり、歯並びが気になったりすると、歯医者で治療を受ければすぐに治ると思われがちです。
確かに、虫歯は治りますし、歯並びもきれいになります。しかし、口呼吸に原因がある場合は、口呼吸を治さない限り、再び虫歯になり、歯並びが悪くなってしまいます。
もし、口呼吸をしている患者さんを見つけたら、口呼吸の危険性を指摘して、鼻呼吸に改善する方法を試してみてください。


お問い合わせ
当サイトに掲載されているコラムの内容や求人情報に関するご質問は左のボタンからお問い合わせください。

^