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歯科コラム

8020運動に次ぐオーラルフレイル対策で歯の健康寿命を伸ばす!

2007年に日本は超高齢社会に入りました。こうした社会の高齢化は、実は日本だけに限られた話ではありません。高齢化は世界的な傾向でもあり、各国で介護予防についての研究が進められているのです。

その一つに、オーラルフレイルという考え方があり、歯医者による介護予防の一環として従来から行なわれている8020運動とともに歯科医師会が中心となり、啓発活動を行っています。

フレイルってなに?

フレイルってなに?

オーラルフレイルは、オーラルとフレイルという2つの言葉が組み合わされて成り立っています。

オーラルとは、お口を意味しており、歯医者にはなじみ深い言葉ですが、一方のフレイルはあまり聞き慣れません。

フレイルという言葉は、身体機能の衰えにより日常生活が障害されたり、要介護状態や死亡に陥りやすくなったりしたことで、2014年に日本老年医学会により提唱された新しい概念です。

フレイル状態に陥っても、適切な介入を行うことで、フレイル状態からの回復が可能となります。フレイルから回復することで、要介護状態になることを未然に防ぐことが出来るようになるのです。

フレイルの早期発見と初期対応は、介護予防の点からも大切といえます。


オーラルフレイルってなに?

このフレイルとお口の機能の低下に大きな関係性があることが、千葉県で行なわれた大規模研究により明らかになり、歯科医師会によってオーラルフレイルという概念が2015年に提唱されるに至ります。

オーラルフレイルとは、お口の機能の衰えのことです。

オーラルフレイルになると、高齢者が楽しみとしていることの上位にある食事に影響が出ます。たとえば、歯の本数が低下することで、噛む力が低下すると硬い食べ物や繊維質の食べ物が食べにくくなります。舌や頬の力が低下したり、舌を上手に動かせなくなったりすると、食べ物が飲み込みにくくなったり、むせたりしやすくなります。唇の動きや力が低下すると、食べこぼしをおこします。

これが食事の制限をもたらし、日々の楽しみが失われることになり、食欲の低下、外出する意欲の低下につながっていくのです。

つまり、オーラルフレイルは、単にお口の機能が低下するというだけに留まらず、その先には身体的フレイルや寝たきりが控えているとも考えられ、フレイルをオーラルフレイルでとどめ、そこから回復させることがとても大切になってくるのです。


オーラルフレイルと8020運動との関連性

日本歯科医師会では、平成元年から8020運動を展開しています。8020運動とは、80歳になっても20本の歯を残すことを目標にした、お口の健康を増進するための啓発活動のことです。当初数%しかなかった8020達成数も、現在では順調に増加し、50%弱にまでなっています。

オーラルフレイル、つまりお口の機能低下は、虫歯や歯周病などによる歯の喪失が大きく影響しています。歯がなくなることで、食べたり話したりするというお口の機能が低下してしまうのです。

歯をたくさん残そうとする8020運動は、オーラルフレイルを防ぐための運動でもあるのです。


オーラルフレイルの初期症状とは?

オーラルフレイルの初期症状とは?

オーラルフレイルに気づけば、その先のフレイルを防ぐことが出来ます。

そんな位置にいるオーラルフレイルの初期症状は、どのようなものがあるのでしょうか。

●体重が減少し、食欲も低下した

●疲れやすくなってきた

●お口が乾く、お口の中がネバネバする

●ペットボトルや水筒、アメを持ち歩いている

●硬い物が噛みにくくなった

●あわてて食べるとむせたり、こぼしたりしやすくなった

●味がわかりにくくなった

●滑舌が悪くなり、会話がしにくくなった

●虫歯や揺れている歯が多くなった

もちろん、オーラルフレイルでなくても、生じうる症状ですが、高齢者の方で、これらに1つでも当てはまる項目があれば、オーラルフレイルの初期症状であると疑うべきです。

一度、歯科医院で相談しておいた方がいいでしょう。


オーラルフレイルへの対応

では、オーラルフレイルにどのように対応すればいいのでしょうか。

まずは、高齢者の方自身にお口の機能の衰えを理解し、認識してもらうことが大切です。

食べにくくなったり、飲み込みにくくなったりといった、軽いお口の機能の衰えに対して、無意識のうちに食品や食事の形態を、軟らかい物や飲み込みやすい物に変えたりしていることが多いです。

そこで、これらがお口の機能の衰えによるものであることを理解してもらわなければなりません。

噛みにくい原因が歯の本数の減少や、虫歯や歯周病にあるのなら、適切な歯の治療を受けてもらわなければなりません。舌や頬、唇の動きの衰えに原因があるのなら、筋力を回復させるためにタンパク質の多い食事に変えたり、舌や頬、唇を動かさないと食べにくい食事に変えて、意識的に動かすように促したりすることも大切です。

こうして食べたり飲み込んだりする機能を回復できると、全身の筋力や身体の機能も回復し、食事・外出・会話が楽しめるようになるため、社会参加の機会も増えるようになるでしょう。


まとめ

わずかなお口の機能の衰えを早期に見つけ出すことで、全身のフレイルを予防し、介護状態になることを防ぐことが出来ます。

オーラルフレイルを、歯科治療や食事を通して改善、予防を行い、健康寿命を延ばしていきましょう。


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