認知症の患者を助ける「訪問歯科医」の役割とは
家族であることを忘れてしまい、ご飯を食べたことも忘れてしまい、お金を盗まれたと被害妄想をするというのをドラマなどで見たことありませんか?認知症患者さんは認知機能の低下もあり排泄障害が出ることも少なくはありません。
そんな認知症患者さんの口腔ケアをするときに強い味方になるのが訪問歯科医です。皆さんの生活にはまだ馴染みの少ない訪問歯科医という仕事について説明していきます。
認知症患者さんの口腔ケアは難しい
認知症患者さんは日常生活に障害が出る症状が主だと思われがちです。例えば排尿・排便障害、妄想癖、物忘れが増える、徘徊などです。
しかし、口腔ケアをするにしても難しい一面がたくさんあるのです。
■徘徊
認知症患者さんで足腰に問題がない場合は徘徊をすることが多いです。診療中でも外へ出ようとする患者さんがいます。
■暴言
認知機能の低下によって歯医者でさえ敵だと認識してしまいます。敵には強く当たるのが認知症の特徴で、家族が耳を覆いたくなるような言葉でも平気で歯医者へぶつけてきます。
■暴力
敵だと認識してしまうと物を使って殴りかかることや、身体に触れようとすると殴りかかってくることがあります。
■拒絶
口を開けて欲しいのに口を開けない。入れ歯を出して欲しいのに入れ歯などないと言い張る。などの行為がみられます。
このように認知症の患者さんは一般の患者さんと少し違ってきます。そんな時は訪問歯科を利用する方が良いのですが、上記のような行為をされると患者さんの口の中を傷つけてしまうリスクがあり、歯医者にも怪我のリスクが高くなってしまいますよね。
そんな時は診療時間の30分前くらいに事前に精神安定剤を服用してもらうという方法があります。精神安定剤の服用になれば副作用の発現や他科治療疾患との関係もあるので認知症で通院している病院の担当医師へ意見書をもらう必要も出てきます。
訪問歯科の治療とは…
訪問歯科とは患者さんの自宅や入居している施設へ行き患者さんのベットやリビングなどで診療を行うことです。通常の歯医者で使っている治療用ユニットを持ち運ぶのは厳しいので、持ち運びに便利なポータブルの歯科用ユニットを用意して患者さんのところへ向かいます。
必要に応じてになりますがポータブルのエックス線撮影機会もあり一通りの治療であれば自宅でできます。
しかし、訪問歯科というのは認知症や寝たきりになっている患者さんの口腔ケアを行うのが大きな役割です。治療をするというよりかは口の中の汚れや入れ歯の汚れを落としてあげて、高齢者がなりやすい誤嚥性肺炎の発症リスクを下げることの方が重要です。
訪問歯科医と歯医者の違い
訪問歯科医は主に訪問診療をしている歯医者のことです。ワゴン車や軽自動しゃなど小回りのきく内容量が多い車に乗り診療している方が殆どです。
ここでいう歯医者とは歯科医院の中で診療している方のことです。
この2で大きく異なるのは「歯医者がいくか」「患者が来るか」ですね。
他にも違いがあるので列挙していきます。
■患者負担額
歯医者の方では患者さんの窓口負担が3割で固定されていますが、訪問歯科では3割か1割です。適用できるか否か患者さんの状態にもよるので詳しくはケアマネージャーさんに聞いて欲しいですが、訪問歯科では「健康保険」と「介護保険」のどちらが適用されるかで患者さんの負担額が変わってきます。
■治療内容
訪問歯科はできる治療までしかやりません。その場で出来る治療が全てなのです。それなので主な診療内容としては患者さんの口腔清掃になります。歯医者では診療器具が揃っているので訪問歯科ではできないレーザー治療やインプラント治療なども行えます。
■患者数の違い
歯医者の先生に向けた話になりますが、一般歯科医院ではおおよそ1日の予約患者数が決まっています。30人~40人くらいでしょうか。しかし、訪問歯科で施設へ行けばそうはいきません。1施設20人程度の診療を3か所回ることも珍しくないです。
逆に戸建てやアパート・マンションなど患者さん個人の自宅へ訪問する場合は1日10人前後の時もあります。
患者数に大きな違いが出るのが訪問歯科ですね。
訪問歯科を使う
今後、訪問歯科を利用する患者さんは増え続けると予想されます。いざ、自分の家族が介護が必要になり施設が空いていないとなった時もそうです。訪問歯科を利用する場合にはまず患者さんのかかりつけ歯医者へ連絡をしてみましょう。もし、その歯医者で訪問診療を行っていないのであれば地域の歯科医師会や訪問歯科協会へ連絡をすると最寄りで訪問診療をしている歯医者を見つけることができます。
いつの日かくるのであれば早めに調べておくことも有効です。