Quick Search
気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科医師が注意すべきうつ病患者への対応

現代はストレス過多の時代と言われています。症状の重さには差があれど、うつ病を患う人が非常に多くなっています。あなたの歯科医院にうつ病を持つ患者さんが来院し、治療を望まれたなら、どのように接すればいいのか考えてみたことがありますか?

うつ病を持つ患者さんへの歯科医師サイドの対応の仕方、うつ病と歯科疾患の関連など、知らなかったでは済まされない必須の知識をご紹介します。

こんな言葉はかけないで!要注意の言葉とは

こんな言葉はかけないで!要注意の言葉とは

うつ病になると気持ちが不安定になり、ちょっとした言葉に対して過敏に反応してしまいがち。健康な状態であればカチンと来てもすぐにバランスを取り戻せるようなことでも、傷ついたり追い込まれたりしてしまうことがあります。特に、以下のような種類の言葉が要注意です。

■うつ病を軽くあしらうような発言
自分のことを理解してもらいたいと思う気持ちはだれでも持っていますが、うつ病を患っている人はその思いが人一倍強いことが多いようです。また、他人の言葉をネガティブに受け取ってしまいがちで、その結果「わかってくれていない」と強く感じてしまいがちです。

「怠けている、たいした問題ではない」「気の持ちようで治る」「もっとつらい状況にいる人はいくらでもいる」「落ち込むことくらい誰にでもある、上手に気分転換をするように」といった無理解・無頓着・無責任な言葉には十分に注意しましょう。

■応援や励ましの言葉
「頑張って」「元気を出して」「笑顔をみせて」といった励ましの言葉は、良い動機から出たものであっても、うつ病の人を追い詰めることがあります。元気がない、頑張れないのは、本人にその気がないからではなく、脳のトラブルで頑張れなくなっているからなのです。

うつ病を患う人は責任感の強いまじめな人が多く、期待に応えられないことが非常につらく感じられます。できるものなら頑張りたいと、一番思っているのは本人であることを銘記し、励ましのメッセージは控えるのがよいでしょう。

■感情的な言葉・言い方
うつ病を患う人は、何に対しても無気力になったり、イライラや不安をコントロールできなくなったりすることが多々あります。このような態度に対し、こちらもイライラしてしまうことがあるかもしれませんが、そのような感情をぶつけるような言葉や言い方は避けましょう。

例えば「いい加減にして!」「あっちへ行って!」などのきつい言い方や「せっかく○○してあげたのに…」など自責の念を助長するような発言は不適当です。また「だらだらしている」「役に立っていない」といった、病状を怠慢と混同して非難するような言い方もやめましょう。


歯科疾患とうつ病の意外な関係とは?

身体と心の健康は密接に関係しています。口腔の健康がうつ病に及ぼす影響、逆にうつ病が原因と考えられる口腔の疾患について考えてみましょう。

■歯科疾患からくる、知られざるストレス
うつ病の原因となるストレスには、一般に知られている精神的ストレスのほか、化学的ストレス、温度・湿度のストレス、そして構造的ストレスがあります。

このうち、化学的ストレスとは栄養の過不足やカフェインなどの影響のことを指します。また、温度・湿度のストレスは見てわかる通り天候や温度、気圧などの変化がうつ病に影響を与えるということです。

そして、構造的ストレスとは、身体のゆがみのことを指します。筋肉や骨、膜組織などのゆがみは脳に伝わり、知らず知らずのうちに脳がストレスを感じてしまいます。歯科関係者ならだれでも思い至る通り、歯牙や咬合の問題と、全身のゆがみには密接な関係があります。

■うつ病と関連のある歯科の疾患や症状
歯科的な症状に、精神的な要素が大きくかかわっていると思われる疾患には、舌痛症や自臭症、歯科治療恐怖症などがあります。そのほかにも、原因不明の慢性的な痛みや違和感、唾液過多または過少、唾液が変な味がする、治療を繰り返しても歯がしみるなどの症状が見られることもあります。

ただこれらは、さまざまな検査による除外診断により、身体的な原因が否定されて初めて、精神的な原因による症状であることが確定できるため、うつ病とかかわりがあると簡単に判断してしまうことはできません。

■うつ病の治療で服薬している場合
不眠や不安に対処しやすくするため処方される薬の多くには、唾液の量を減らすという副作用があります。唾液量が減少すると、口腔内細菌が繁殖しやすい環境になり、齲蝕や歯周炎の進行、口臭、口の中がねばねばするといった症状につながります。

また、一部の薬は麻酔薬の使用に注意が必要です。主治医から処方薬の内容などの情報を記載した紹介状をもらっておくと安心です。

■ブラッシング指導における注意点
うつ病を患う人はもともとまじめな性格の人が多いのですが、病気により気力や集中力が失われてしまうため、口腔清掃への意欲が低下します。加えて、不眠や過眠などの問題が生活リズムの乱れを引き起こし、抵抗力が低下するため歯や歯肉の疾患にかかりやすくなります。

上述のように、服薬のため唾液が減少することなどから、歯ブラシの滑りが悪くなり、歯肉を傷つけやすくなります。柔らかめの歯ブラシを使用する、ブラッシング前にまずぬるま湯などでうがいをし、口腔内を十分湿らせてから開始する、などの工夫について指導するとよいでしょう。


うつ病を持つ患者さんのために歯科医師ができること

うつ病を持つ患者さんのために歯科医師ができること

うつ病を持つ患者さんが増え続けている今、関係する問題を十分に理解することが歯科医師にも求められています。とくにうつ病は、重篤になると命の危険も伴う病です。歯科医師サイドに知識がなく、歯科医療の観点からは正しいことを行ったものの、患者さんが自殺するきっかけとなってしまったという悲しいケースもあるようです。

うつ病を持つ患者さんへの対応として行える最も重要なことは、きちんと話を聞くということ。否定したり話をさえぎったりせず、じっくりと聞くようにしましょう。気持ちが理解されたと感じることで、患者さんは落ち着きを取り戻します。

また、歯科疾患の症状に精神的な要因が大きくかかわっていると思われ、歯科治療だけでは治癒の見込みがない場合は、精神科・心療内科との連携を取りながら治療を進めることも必要になってきます。また万が一、自殺願望を表現する言動があった場合は軽視せず、主治医に報告する、受診を勧めるなどの迅速な対応が求められます。

いかがだったでしょうか。歯科医師はもちろんすべてのスタッフが、うつ病を持つ患者さんへの正しい接し方に関する知識を共有することが大切です。事前にスタッフ同士での情報交換や対応の練習など、準備できることをしておきましょう。


お問い合わせ
当サイトに掲載されているコラムの内容や求人情報に関するご質問は左のボタンからお問い合わせください。

^