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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科治療の所要時間とレセプト点数

みなさんの歯科医院では、レセプト点数を把握して日々の診療にあたっていますか?実はしっかり把握しないまま単に診療をするのでは、実際に1つの治療にかかる所要時間と診療報酬が割に合っていないというような問題が起こっている可能性があります。

今回は日本歯科医学会が調査した「各診療項目ごとに要する時間の計測」を参考に、レセプト点数の矛盾について問題提起したいと思います。

「レセプト」や「診療報酬」とは

「レセプト」や「診療報酬」とは
そもそも「レセプト」とは何か、というところからご説明しましょう。医療事務や業者任せで詳しく知らないという歯科医も結構多いのです。

■レセプトとは
歯科も含む医療機関では、治療を受けた際に「診療報酬明細書」や「調剤報酬明細書」を患者へ渡しています。医療費の請求金額だけでなく、初診・再診や入院料、検査、処置、画像診断、麻酔、手術など、そのほかにも細かく分類されて標記されているものです。これらの中でその日におこなったことを点数化し、その点数に応じた金額が診療報酬となります。

■診療報酬点数表による点数の統一
診療報酬の点数は、「診療報酬点数表」によって全国一律に決まっています。おこなわれる医療行為ひとつひとつで計上できる保険点数は1点につき10円で計算され、その日に請求分は合計点数から負担割合に応じて患者様にお支払いいただきます。
歯科医院は患者個々に1ヶ月の合計点数を1枚にまとめたレセプト用紙を作成し、保険機関に提出します。

■保険診療の費用に差が出ないためのシステム
このシステムがあることで、保険診療であればおおよそどの歯科医院を受診しても同じ治療であればさほど金額に差が出ないようになっています。ただし、インプラントや矯正など、自費診療のものに関しては自由診療であり、各歯科医院で費用設定しますので金額差につながることもあるのです。

レセプト点数と処置内容に矛盾はない?

「歯科の1カ月の報酬額は外科の1日分」だと言われることがあります。日々レセプトで計上してる点数が、「それぞれの処置に対して妥当な点数かどうか」ということを考えたことはあるでしょうか。多くの歯科医院が、当たり前のように、「おこなった処置の点数は何点」とカルテに記録することを繰り返していることでしょう。

■実は低い!?歯科の診療報酬制度
歯科で一番多い治療と言えば虫歯の治療です。まず虫歯になった部分を機械や手作業で取り除きますが、虫歯の大きさや場所によって難易度もかかる時間も違います。数十分で終わることもあれば、1時間くらいかかって取り除くほど深い場合もあります。この作業が16点ですから、1点10円で計算するとわずか160円にしか及びません。

他にも、根っこの治療もとても細かく大変な作業ですが、1回14点で140円と低価格です。本数をこなすという考え方もできますが、1本にかかる時間が大きいのですから、時間との兼ね合いを考えると妥当とはいえなくなってしまいます。

■1つの処置に対して大きな点数の処置
たとえば入れ歯を作成する場合、虫歯の治療に比べると点数が高いです。まず最初におこなう歯型採取は225点で2,250円です。1回で取れず2回に分けておこなうこともあり、1日で終わらないこともあるほど時間がかかります。また、総入れ歯を入れるとなると2280点で22,800円になりますが、そこまで制作や調整にかかる労力と時間、材料費を差し引くとさほど大きな金額ではなくなってしまいます。

また、保険内の入れ歯には材料の制限や、作り変えを半年間はできないなど制約も多く、なかなか調整しても合わないから作り変えたくても請求ができないとなることもあるのです。

■歯周病に関する手術を行った場合のレセプト点数の変化
歯周病の手術が先進医療(混合診療)であった時代、手術での報酬額は約6万円前後くらいであったものが、保険点数の範囲に導入されると900点で9,000円の報酬になりました。しかし手術にかかる材料費や器具などは変わらないわけですから、差し引くと赤字になるため施術できないということになってしまいます。

患者は保険診療で受けることができる治療が増えても、実際歯科医がおこなうにあたり採算のとれる点数であるのかどうかという選択肢によりおこなわれないのであれば本末転倒です。

■診療報酬制度での請求と経営の難しさ
歯科医院もマイナスばかりでは経営が成り立ちません。質の高い施術のためには、機械も材料も人材も必要不可欠です。しかしこのように割に合わない点数ばかりではプラスが出ない処置はやらない歯科医師が増え、患者にとってもマイナスの悪循環です。
また、求められる治療を全て真面目にやってもマイナスになるのであれば、厳しい歯科業界で生き抜くために診療報酬の請求をどう工夫するかということに神経をすり減らさなければならなくなります。

治療にかかる時間とレセプト点数に矛盾はない?

治療にかかる時間とレセプト点数に矛盾はない?
たとえば「治療」と一口に言っても、さまざまな治療があり、簡単なものやとても時間のかかるものもあります。これら治療にかかる時間の大きさと対価は妥当だと言えるでしょうか。

■歯科診療行為(外来)のタイムスタディ調査
日本歯科医学会では「歯科診療行為(外来)のタイムスタディ調査」とし、各診療行為ごとに要する時間について調査し発表しています。診療項目の技術度の関係や、社会保険歯科診療報酬点数評価との関連を表すものとして診療報酬点数表の体系見直しの側面も考えられての実施です。代表的な歯科診療行為を挙げ、各項目ごとにかかる時間を調査しており、1つの項目に対しても難易度A~Eの5段階に分けて細かく分析しています。

■処置にかかる時間と請求できる点数の割合
近年、歯科保健医療機関が1ヶ月に計上する保険点数の平均は、約30万点で300万円といわれています。これを時給で換算した場合、1日9時間の診療で1400点の14,000円です。

たとえば虫歯や根っこの治療、入れ歯の調整などをおこなうとした場合、1時間あたり計上できるのが約70点の700円という換算です。これでいくと平均の5%にしか満たないことになります。また、高めである抜歯などの外科手術、入れ歯などでも1時間あたり700点で7,000円ですから、平均を上回ることはありません。

■保険診療の矛盾
これまでご紹介したように、患者は保険診療できる治療でおこないたいと希望され、歯科医がその治療をおこなったとしても採算が合わない結果に。そうなれば自由診療などを取り入れるなどして足りない点数分を補わなければならなくなります。

もしくはせっかくの良い治療でもおこなうことができないということも考えられ、どうにか時間に見合った大きな点数の処置をおこなわなければと考える歯科医もいるかもしれません。

まとめ

レセプトによる点数制は、保険診療を受ける患者にとっては、どこで受けてもさほど変わらない金額で受けることができ、負担額も少なくて済むので良いシステムです。

しかし、この点数表に縛られることで、歯科医院側は経営とタイムスタディーに見合ったものかどうかを考えると、したくてもできない処置もあるかもしれません。この矛盾を解決するべく、処置にかかる時間や難易度に応じた点数改正が検討されるべきではないでしょうか。

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