Quick Search
気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科医師免許で美容注射は可能?歯科医の治療範囲とは

口元の審美志向が高まりを見せる中、最近では美容目的で注射を行う歯科医院も増えてきました。この歯科医師が行える注射とは、歯科医療的にどこまでが可能な範囲でしょうか。また審美面を目的とした口腔内の治療に関して、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。

高まる口元への美意識

高まる口元への美意識
機能回復のみを目的とした治療が主流であった時代に比べ、インプラントやホワイトニングに代表されるように、最近では口元の美しさを求める審美志向が高まりを見せています。インターネットで少し検索するだけで、白くて美しい歯の画像が目に飛び込み、患者の深層心理をよく考えた作りのホームページがいくつも出てきます。また診療内容も一般歯科に加え、美しい口元への憧れが強くなるよう、インプラントやセラミック治療などの審美歯科、ホワイトニングなどの自費治療項目にも工夫が凝らしてあり、自然と歯や口腔内に対する美意識が高まります。特にインプラントにおいては、昔は一部のお金持ちのみが行える「高嶺の花」的な治療でしたが、最近では技術の向上とともに、低価格でインプラントを提供できる歯科医院も増え、身近な治療と変貌を遂げています。このような背景により、入れ歯の不自由さや見た目のコンプレックスを感じ、少々高額でも口元が綺麗に見える自費治療を選択する患者が増えてきました。また若い年代は白い歯に対する意識が高く、ファッション感覚でホワイトニングの施術を受けることや、ホワイトニング効果の高い歯みがき粉を使うなど、歯の美しさを求める傾向が急上昇しています。このように、歯の美意識が高まる中で、更に口元を美しく若々しくするための「美容としての歯科医療」が見受けられ始めています。

歯科医師が行う「口元の美容」としての歯科医療とは

ここで言う「口元の美容」とは、セラミックの被せ物やホワイトニングではありません。例えばほうれい線を改善して若々しい口元を作ることや、唇のシワを減らしてふっくらとさせるなどシワの改善などもあります。また、皮膚のハリ、若々しい唇といった、歯だけでなく口周りの美しさを求めることを「口元の美容」と定義付けて良いでしょう。その代表とも言えるのが、「ヒアルロン注射」です。歯科医院で行うヒアルロン注射は、治療を終えたはいいが、「歯の治療を終えたあとも、美しい口元でこれからの生活をより充実したものであってほしい」という理念を掲げているところが多いようです。ところでヒアルロン酸注入と聞くと、美容目的で行われる施術であり、エステティックサロンや美容外科の領域で行われるのが一般的な概念です。それが口周りに関する審美的目的として、これからは歯科医院でこのように美容に関する施術が受けられるようになったのだと患者は捉えると考えられます。
患者側とすれば、歯の治療だけでなく、より美しい口元をつくるための施術が歯科医院で行えることは非常に有難く、魅力的な提案であることは間違いないでしょう。先も述べたように、ヒアルロン注射と言えば、まず誰もが美容クリニックで行う施術であると思います。口元のシワやたるみを改善し、若々しい口元を作るために緊張しながら美容外科へ足を運ぶことを考えると少し億劫に感じ、なかなか足が向かないでしょう。また美容クリニック=整形、プチ整形といったイメージも強いです。かかりつけの歯科医院で「当院ではヒアルロン酸注射も行っております」と言われると、通い慣れている歯科医院でそのような施術を受けることができるなら、受けてみようと思うのが自然の心理です。と同時に「歯科医師が美容外科みたいな処置を行うことが出来るのか」と疑問を抱く方も当然いるでしょう。歯科医院は悪くなった歯を治すところであるのにも関わらず、美容クリニックのような施術を行ってもいいのか、と考えるのも、またごく自然で当たり前の感想だと言えます。

口元の審美的治療と、歯科医師が行って良い領域について

では実際、歯科医師として行っていい治療範囲は一体どの範囲までなのでしょうか。元々、ヒアルロン酸やプラセンタ注射は美容クリニックにおける美容医療であり、口元のみならず目元、頬、鼻など顔面全般にわたります。当然、歯科口腔外科を治療の専門としている歯科医師が治療できる診療範囲は限りがあります。厚労省が定めた指針として、歯科医師や口腔外科の医師が携われる治療は、唾液腺や頬粘膜のみなどと部位が詳しく決まっています。
この指針に沿った歯科治療領域内であれば、ヒアルロン注射などを行うことは可能ということになります。

つまり口の中の血管や神経の通り方を熟知しており、確かな技術を持っている歯科医師が「口唇の範囲内」で注射を行う分には、法的にも問題はないということになります。
もっと簡潔に表現すると、歯科治療は口角や口腔粘膜から、美容クリニックは皮膚から注射を行うことが相違点となるのではないかと思われます。

歯科疾患、歯科治療における口元の審美回復が基本

歯科疾患、歯科治療における口元の審美回復が基本
口唇の範囲内であれば、美容注射を行っても法的には問題がないとはいえ、美容だけを目的とした注射などの美容医療となると、やはりグレーゾーンの扱いとなるでしょう。例えば、歯科医師の治療領域である口角や頬粘膜から頬へヒアルロン酸注射をするといった施術は問題がないかと聞かれると、そこは何とも言えないところです。
口元の審美回復というのは、歯科および口腔内の疾患により変化した形態を回復させることを目的としています。「噛み合わせが悪いために法令線が目立つ」「歯を失ってシワやたるみができた」などといった、歯および口腔疾患により口周りの見た目が悪くなったことに起因する審美回復目的としたヒアルロン注射などが、審美治療の対象となります。しかし、歯科医師が眉間のシワや鼻への美容注射を行うことはやはり違和感があります。「歯科=歯や口腔内の治療を行う医療機関」であり、「歯科=顔のシワ取り」ではないからです。

表現にも注意が必要

ホームページなどの宣伝広告に、ヒアルロン注射を記載する際にも注意が必要です。あくまでも歯科疾患から起因する「口元の審美回復」が目的であるため、「目元のシワをなくす」「頬をふっくらとさせる」「鼻筋が通る」などといった表現は避けるべきです。「口元のシワを改善させる」「口元をふっくらさせて、口角を持ち上げる」など、口唇範囲の審美回復を目的とした宣伝であるよう、配慮すべきでしょう。

患者の要望を叶えつつ、適正な範囲での施術が原則

冒頭に記したとおり、患者の口元への美意識が飛躍的に伸びている中、歯科医師による美容に付随する施術が普及しているのも時代の流れであります。

ヒアルロン注射などの施術は、患者の口腔内に対する意識を高めるひとつのきっかけでもあります。患者の要望を叶えつつ法令を厳守し、あくまでも歯科治療における審美治療であることを原則に、安全に施術できる体制を整えることが大切です。

お問い合わせ
当サイトに掲載されているコラムの内容や求人情報に関するご質問は左のボタンからお問い合わせください。

^