新たに保険内診療が可能になったCAD/CAMシステム/メタリフリーの治療の意義
平成26年度の診療報酬の改定の時、これまで認められていなかった全く新しい補綴物による治療が導入されました。それがCAD/CAM冠です。CAD/CAM冠についてまとめてみました。
CAD/CAMってなに?

歯科医療の分野では、1980年代にヨーロッパでCAD/CAMを使った補綴物が開発されました。近年まであまり普及してこなかったオールセラミッククラウンが、最近になり普及してくるようになったのはジルコニアの利用が広がったからです。
実は、オールセラミッククラウンは内面をジルコニアのフレームを使うことで強化しています。ジルコニアはCAD/CAMの技術の発展がなければ精度良く加工することが出来ませんでした。こうしたところにも、CAD/CAMの歯科への応用が認められます。
そしてこの度、新しくCAD/CAM冠が保険診療に適応されるようになりました。CAD/CAM冠とは、CAD/CAM技術を使ってレジンのブロックを加工して作り上げた補綴物です。CAD/CAM冠の保健診療への適応により、今後ますますCAD/CAMの技術は歯科に広がっていくことでしょう。
保険の適応となったCAD/CAM冠について
なお、従来の合着材料では接着力が不十分なので、装着したのち外れやすい可能性があります。接着する前にはプライマーを塗布しておくほうがいいでしょう。
また、以下のような特徴や使用に関する注意もあります。
■部位
適応となる部位は、基本的に上顎、下顎ともに第一小臼歯と第二小臼歯になります。
前歯部や大臼歯部には原則的に認められていません。
■施設基準
どの歯科医院でもCAD/CAM冠を取り扱うことが出来るわけではありません。一定の施設基準を満たしておかなければなりません。
①補綴治療の専門知識を持ち、経験年数が3年以上に及ぶ歯科医師が1名以上いること
②歯科医院内に歯科技工士がいること、もしいなければ歯科技工所と提携していること
③歯科医院内にCAD/CAM冠を作成する装置を備えていること、もしなければ備えている歯科技工所と提携をしていること
すなわち、それほど高いハードルではありません。しかし、申請を忘れると取り扱うことが出来ないので忘れないようにしましょう。
■金属アレルギー
CAD/CAM冠の適応となる部位は小臼歯に限られていましたが、平成28年度の診療報酬の改定により、歯科用金属に金属アレルギーがある場合に限り、大臼歯部に適応することが認められるようになりました。
ただし、条件があるので注意が必要です。まず、金属アレルギーがあることについて、医師から診療情報提供書による金属アレルギーの情報提供がなされていることが必要となります。たとえ金属アレルギーがあっても適応があるのは大臼歯部だけです。前歯部には適応はありませんので、注意が必要です。
■算定時の注意点
臼歯部の形成ですが、レジン前装冠のケースに準じる生Pzと失Pzを算定する点に注意してください。装着時、CAD/CAM冠の内面処理を行なった場合には、加算が算定出来るので忘れないようにしてください。
メタルフリー治療ってなに?

FMCは、金銀パラジウム合金で作られていますので、銀色に輝き、目立ってしまいます。しかも、経年的に合金の成分である銀が酸化することで、色がくすんできます。部分床義歯のクラスプも同じように目立ってしまいます。
メタルフリー治療では金属を使わないので、審美性に優れた治療を行なうことが出来るようになります。そして、金属を使わないので、金属アレルギーがある場合でも安心して治療をすることが出来るようになります。
CAD/CAM冠以外の保険の適応のあるメタルフリー治療
■コンポジットレジン充填
光重合のコンポジットレジンを使った充填治療では、金属を使うことはありません。
■ファイバーポストコア
平成28年度の診療報酬の改定により支台築造にファイバーポストコアが新しく採用されました。ファイバーポストコアを使えば、従来のメタルコアと異なりメタルフリーな支台築造が可能となります。 ファイバーポストコアには、メタルフリーだけでなく、強度が歯に近いのでメタルコアの様な歯根破折の原因になりにくいというメリットもあります。
ファイバーポストコアは、間接法でも直接法でも可能です。ファイバーポストコアの点数は、間接法か直接法か、そして大臼歯部か前歯・小臼歯部かによって異なります。
ファイバーポストコアを使った治療の流れは、支台築造印象→ファイバーポストコアセット(間接法または直接法)→失Pz→連合印象及び咬合採得となります。メタルコアではないのでメタルコア加算は算定出来ませんので注意してください。
■硬質レジンジャケット冠
小臼歯部までなら、硬質レジンジャケット冠を適応することが可能です。硬質レジンジャケット冠は、強度の点で不安な要素があることが否定出来ません。咬耗により次第に厚みが薄くなっていきます。それに伴い歯も挺出していきます。そのため、長期的にみた場合、歯列に何らかの影響が現れる可能性があります。
まとめ
しかし、CAD/CAM冠にファイバーポストコアを組み合わせれば、保険診療の補綴治療でも完全なメタルフリーな歯科治療が出来るようになります。これはいままでなかったことなので、画期的なことといえます。
メタルフリーにできれば、審美面だけでなく金属アレルギーのリスクもなくなるというメリットもあります。もちろん、従来型のFMCにも費用が安い、実績があるなどの利点もあります。審美性の良さや金属アレルギーのリスクがないことなど、CAD/CAM冠のメリットを考慮して、治療を受ける側にとって最適の治療法を選ぶようにしてください。