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歯科コラム

歯科医院は医療法人化するべき?様々な働き方をご紹介

歯科医院の開業や経営について真剣に考えるにあたり、歯科医院の医療法人化という問題について一度は耳にしたことがおありでしょう。個人経営の歯科医院と医療法人にはどんな違いがあるのでしょうか。増加する一人医療法人とは。また、節税や医院継承との関わりやそれぞれのメリット・デメリット、医療法人化のタイミングについてもご紹介していきます。

医療法人とは?

医療法人とは?

医療法人とは、医療法39条1項に規定されています。定義されているのは「病院及び、医師や歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設を開設、または開設しようとする、社団または財団」です。

ですから、個人経営の歯科医院は院長個人が経営しているのに対し、医療法人の歯科医院は医療法人という団体が経営しているという形になり、院長のものではありません。

そのため、医院経営にかかわる契約のたぐいはすべて、院長ではなく医療法人と締結されることになります。また、社会保険の診療報酬も医療法人へ振り込まれる形になります。院長の報酬も経費も、医療法人から院長へ支払われます。


一人医療法人とは?

もともと医療法人の設立には、医師か歯科医師が3人以上勤務している必要がありました。のちに、昭和60年12月に医療法人制度が改正され(施行は61年10月)、医師か歯科医師が「常時勤務する」ことが要件となりました。つまり、1人であっても常勤の医師か歯科医師がいれば、医療法人を設立できるようになったのです。

一人医療法人の設立は広く行われており、増加を続けています。医療法人全体における一人医療法人の割合は83%を超え、全国で39,102件となっています(平成23年3月1日現在)

人数以外の面においては、医師か歯科医師が3人以上いる従来の医療法人と、一人医療法人との間に特に違いはありません。法律的にも、会計や雇用においても、同様の要件が適用されます。


医療法人化にはどんなメリットがある?

医療法人化にはどんなメリットがある?

歯科医院を医療法人化することには、個人経営とくらべてのメリットとデメリットがあります。比較考量の参考に、まずメリットの部分から見てみましょう。

■経営が安定する
一般的な医療法人であっても一人医療法人であっても、院長個人の財布と法人の財布がはっきり分けられ、決算状況を正確に把握できるというメリットがあります。

これにより健全な経営ができるというのみならず、対外的な信用を高めることになり、高額な医療機器のリースや銀行からの借り入れが容易になります。また、患者からの信用や業界内での信用も高めることができるでしょう。

歯科衛生士などのスタッフも、経営が安定しており信用できる歯科医院で働きたいと思っていますので、有能な人材を獲得する点でも有利になる可能性があります。

■事業展開の幅が広がる
個人開業では診療所は1カ所のみですが、医療法人化することで分院を開設することができます。この場合、他の歯科医師を管理者として置く必要があります。

■税金対策になる
個人経営の歯科医院では、超過累進税率が適用され、最高50%の課税となります。一方、医療法人では一律税率が適用されるため、税金が節約できます。

また、院長も医療法人から給与をもらう形になるため、給与所得控除を適用することが可能になります。将来的には、出資の分散による相続税節約の効果も期待できます。

■院長も福利厚生の恩恵にあずかれる
医療法人では、院長・職員ともに社会保険への加入が義務付けられているため、院長自身も厚生年金に加入することが可能です。また、院長も退職金を受け取ることができ、法人の損金として計上することができるのも大きなメリットです。

■事業に永続性がある
個人経営の歯科医院の場合、院長の死亡や高齢、体調不良により廃業となるケースが少なくありません。特に院長が死亡した場合は、歯科医院経営にかかわるものも含め、院長個人の預金通帳がすべて凍結されてしまいます。子どもへの経営継承ができていない場合、日々の経営も困難な事態となり得ます。

預金通帳の凍結が解けるのは、相続人全員の合意の下、遺産分割協議書が作成されてからになります。その際、医療機器など金銭的価値のあるものはすべて遺産として遺産分割協議の対象になるため、事業の継続の見通しも遺産分割協議しだい、ということになってしまいます。

その点、医療法人の場合は、理事長の死亡と医療法人の存続には関係がなく、医療法人の預金通帳が凍結される心配もありません。雇用契約や取引先との契約も、理事長とではなく医療法人と締結されているため、理事長の死亡による影響を受けることなく継続されます。

医療法人の相続税について上でも少し触れましたが、相続の対象となるのは、出資金のうち理事長の持分です。基金拠出型の医療法人の場合、最初に出資した金額に相続税がかかるのですが、持分の定めのない医療法人の場合、相続税がかかりません。

相続人の中に医師や歯科医師がいない場合、医療法人に勤務している他の医師に継承してもらうという形になり、理事長には死亡退職金が出ます(死亡退職金には相続税がかかります)。相続人には医療法人を継承する資格がなかったとしても、実際には死亡退職金という形で金銭を受け取れることになります。


医療法人化のデメリットとは?

医療法人化には様々なメリットがありますが、デメリットをあげるとすれば「めんどうなことが増える」という点に尽きます。

個人経営なら開業時に届け出だけでよい一方、医療法人では認可が必要となります。また、医療法人化すれば、決算書を届け出る必要があります。資金用途を明確にしなければならず、交際費の損金算入にも限界があり、移転などの際も事前の認可が必要になるなど、様々な面で制約があります。加えて、定期的な立ち入り検査を受ける必要があります。社会保険への加入も、院長・職員ともに強制となります。

このように、経営上の安定と引き換えに莫大な手間がかかるようになるため、個人経営のままで気楽にやっていくという選択肢もありますね。


医療法人化のタイミングは?

初めから医療法人として開業するケースはまれで、一般的には個人経営の歯科医院が医療法人を設立する(医療法人に成る)ケースがほとんどです。

また、若い院長の場合は税金対策や信用性の向上を念頭に医療法人化を検討することが多いのですが、50代以降の院長は歯科医院の相続・継承を視野に医療法人化を進めるケースが多いといわれています。

歯科医院を開業する場合、個人経営のほか医療法人や一人医療法人などの選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがあることをご理解いただけたでしょうか。歯科医院経営の現実的な設計に、参考になりましたら幸いです。


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