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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯周病患者へのプラークコントロールを正しく行うには

プラークコントロールという言葉が広告や宣伝などでもよく使用されることとなった近年、世間でも身近になってきました。現代社会で歯周病患者が増加していることも一因と考えられます。
しかし一方で、言葉自体は知っていてもその重要性を正しく理解している患者はまだ少ないのが現状です。

今回は、このプラークコントロールについて患者にいかに重要性を認識してもらうかについて考えてみたいと思います。歯周病対策や予防歯科に積極的に取り組む歯科医院ほど、患者の理解に対するアプローチも考えなくてはなりません。

プラークコントロールのポイント

プラークコントロールのポイント

歯科医師を中心に歯科医療に携わる側としては、来院した患者に対してふさわしいプラークコントロールの方法を伝え、指導する責任があります。しかし歯周病改善のためにはただ指導するだけでなく、指導した後のフォローアップもしていかなければいけません。

■プラーク質の改善
プラークは時間が経つにつれて徐々に粘着性が高まり、歯面にべっとりとこびりついていきます。時間の経過と共にプラーク自体も成熟していき、徐々に病原質が高くなっていきます。口腔内のプラークをなるべく成熟させないようにするためには、少しでも早くプラークを除去することが大切です。

一日に何回ブラッシングするのか、また一回のブラッシングにかける時間は何分程度なのか等のカウンセリングにより、患者のブラッシングの習慣を見直すよう勧めることができます。こまめな歯科医師や歯科衛生士によるブラッシング指導が重要になってくるでしょう。

さらにプラークの質の改善には糖分摂取量など、食事の仕方や内容にも関係していきます。一回の食事における糖分の摂取量を制限したり、ながら食べ等の長時間にわたる食事をしないようにも指導できるでしょう。

■プラーク量を減らす
食事をした後に分泌される唾液の緩衝能によって、口腔内のpH値は食事前の正常な値に回復し、虫歯になりにくい状態に戻ります。しかしもし歯面に大量にプラークが付着していればせっかくの唾液の効用も期待できなくなってしまいます。ここでもやはりブラッシング指導が鍵になってきます。またブラッシング習慣の向上だけではなく、口腔内のプラークが残存しやすい部位がどこなのか、ポイントを絞って患者に理解させるようにしましょう。

さらに患者自身がそのリスク部位をどのようにブラッシングしていかなければならないのか方法を学び、自分でブラッシングできるように習得させていきます。しかし、歯科医師がただプラークコントロールを指導するだけでは、患者のプラークコントロールをきちんと管理するという点でまだ不十分と言えるでしょう。


プラークコントロールレコードを取り入れる

歯科医師も歯科衛生士もみな学校で習った経験があるプラークコントロールレコード(PCR)は、患者には歯の赤染めと言う方が分かりやすいかもしれません。歯面に付着しているプラークの部位の確認をするために歯垢染色剤を使用して染色し、プラークが付着していた部位の数を全体の数で割って個人のPCRを出していきます。PCRは歯周病に関する検査の結果として、患者にとってもそれほど大きな抵抗なく理解しやすい指数です。

■プラークコントロールレコードの説明
PCRは歯周病の進行そのものを表す指数ではなく、あくまで口腔内清掃状態の確認をする指数であることを説明しておきましょう。歯科医師には簡単に見つけられてもプラークは歯と同じような同じような色をしていて、ぱっと見ただけではどこに残っているのか患者自身では見つけにくいものです。

ブラッシング時の磨き残しが無いかどうか確認するための簡単な検査、という風に伝えるなら患者も比較的受け入れやすいでしょう。染色後は強く口をすすぎ過ぎないように、せっかく赤く染めた染色剤が落ちてしまわないようにあらかじめ声掛けもしておきましょう。検査結果を伝える際、患者にはPCRが20%以下になればそれは正常の範囲内、歯周病は進行しにくいと説明できます。またPCRが0%になることは事実上不可能であることも伝えます。

ただ単に、プラークコントロールが「良い」もしくは「不良」とだけ言われても、患者にはピンと来にくいかもしれません。検査の際に明確な数字を伝えることは、患者に歯周病改善に向けた目標を持たせることに繋がるでしょう。

■歯頚部のプラークに注目させる
多くの患者は赤く染まった部分がどこなのか、すべて見ようとします。赤くなった舌や歯肉など、歯科従事者にとっては見当違いな所に注目してしまう患者もいます。初めて歯垢染色剤を使用する患者なら配慮が必要です。

しかしPCRを出すために歯科医師や歯科衛生士が見るのは歯頚部のプラークです。一本の歯を近心、遠心、頬側、舌側(口蓋側)に四分割したうちのどこにプラークが残っているのかをよく観察し、PCRを割り出していきます。そして患者のプラークコントロールに対するモチベーションを向上させるために、鏡でよく口腔内を見せながらブラッシング指導していきます。
歯冠部や咬合面よりも歯頚部を中心としたブラッシングを行うように丁寧に指導を行います。最後に再び染色剤を使用して、さっきまで付着していたプラークがブラッシングによりどれほど落とすことができたのか比べて見せるのも良い方法です。

■定期的にプラークコントロールレコードをつける
ブラッシング指導後も、歯科医師や歯科衛生士は患者のプラークコントロールの経過を長期にわたり管理していく必要があります。数か月後に定期健診で来院した際にはPCRをつけることを忘れないようにしましょう。前回と比べてPCRに変化があるかどうか必ずチェックし、PCRの推移に伴って歯周病の進行状況もどのように変化しているか定期的に患者に説明していきましょう。


まとめ

まとめ

プラークコントロールは主にブラッシング指導にかかっていると言っても過言ではありませんが、プラークコントロールレコードの重要性も無視しないようにしましょう。歯科医師が各患者の歯周病罹患リスクの高い部位を知り、今後の治療を考えていく上でこの記録は欠かせません。また患者にプラークコントロールを継続的に行っていくようモチベーションアップさせる上でもとても重要なのです。


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