具体的に、患者は歯科医院のどの部分に期待をし、満足を求めるのでしょうか。
あるアンケート調査によると、総合満足度と最も関係がある項目は、「担当医の人間性の良さ」という結果が報告されています。次いで「担当医の適切な指導力、アドバイス力」「担当医との話しやすい雰囲気」という順番になっており、上位3位はいずれも患者と歯科医師との関係性にあるという、注目すべき結果が出ています。

患者は歯科医師との密なコミュニケーションを求めており、治療方針や費用に対する明確な説明を求めているのです。
しかし、先に述べたように、院長が全ての仕事を一人でこなす事は難しく、患者一人ひとりに長い時間を費やす事ができないのが現状です。治療時間を確保するのが精一杯で、患者とのコミュニケーションは必要最低限の説明に留まる事が多いのではないでしょうか。

これを改善する方法として、患者の主訴や要望をヒアリングする事や、治療費の説明を、受付やコーディネーターが担当するようにします。すると、患者にとって担当医に聞きづらい金銭面の話や、治療に対する要望を歯科医院側に伝えやすい環境を作ることができます。さらに、セルフケアの指導や相談を歯科衛生士が担当すると、歯科医師は治療に専念できるだけでなく、患者と会話を交わす時間の余裕も生まれます。そして、結果的に患者の満足度が高まる事に繋がります。

面接時には、応募者の些細な言動を見落すことのないよう、事前に質問項目を準備する必要があります。さらに、優秀な人材かどうかを判断する上で、どのような質問をするかも重要です。

■仕事に対する価値観を確認する質問
仕事をする上で大切にしている事や、職場を選ぶ際に重要と考える条件を問うのは、応募者の仕事に対する価値観を確認する事ができます。仕事を通した将来の目標が高く、仕事を通してどのような自分に成長したいのか、そしてその為に実際に行動しているのかを確認することが必要です。経験者であれば、テクニックを磨く為の講習会に参加した事があるかを質問するのも良いでしょう。休暇や給与等の条件面ばかり確認する人材は、目先の利益にとらわれ、自分が成長するために仕事をするタイプではないので注意が必要です。

■これまでに努力してきた経験を確認する質問
努力する才能というのは、後から身に付くものではありません。実際にその人がどのような経験をしてきたのか、具体的に話を聞く必要があります。新卒であれば、学生時代の部活やアルバイトの経験、経験者であれば、これまでの仕事の中でのエピソードを聞きます。
過去の経験を確認することで、ストレスへの耐性を確認することも重要なポイントです。前職の院長やスタッフのことを悪くいうようなタイプは、何かうまくいかない事があった時に、原因を自分以外に求めてしまう他者依存性が強い傾向があるといえます。採用しても同じことを繰り返す恐れがあるので、避けた方が良いでしょう。
面接時は、答えている時の「表情」「目つき」「声のトーン」なども確認し、受け答えに素直さが感じられないなどの違和感が無いかなど確認します。
そして、採用基準の中で一番大切なのは院長はじめスタッフとの相性です。毎日一緒に働き、密にコミュニケーションが取れそうな人材を採用する事が基本です。採用後は試用期間を設けて、本採用まで様子を見る事も大切です。

優秀な人材の確保に成功しても、すぐに退職されてしまっては意味がありません。
長く働いてもらうには、安心して働ける環境作りが大切です。
あるアンケート結果によると、転職者の退職理由として、一番多いのは「人間関係」でした。「職場の雰囲気を重視して仕事選びをするか」という問いには、90%が「重視する」と回答しました。また、どのような職場の雰囲気を「良い」と感じるかについては「挨拶がきちんと交わされている」、「互いに助けあっている」の2点が圧倒的に支持を集める結果となりました。
新たな人材を採用する際は、事前に歯科医院全体でその人材をサポートしていく姿勢が大切になります。仕事内容や技術的なものから指導するのではなく、「仕事を通じて自らをどのように成長させたいか」などの仕事観について皆で話し合う機会を作ります。

患者満足度が高い歯科医院とは、スタッフの満足度も高い歯科医院という事が分かりました。患者もスタッフも、関わる人とのコミュニケーションを最も必要としています。歯科医師や歯科衛生士、受付などが、それぞれのスキルを高めつつ、お互いの役割を理解して助け合う事が大切です。日々の診療に追われて、大切な部分を見失うことが無いよう、広い視野を持って患者満足度の高い歯科医院を目指していきましょう。