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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科治療時に使う麻酔の種類と麻酔効果がきれるまでの患者へのアドバイス

患者は治療が終わればもう終わりだと思ってしまいます。が、実際は治療時に使用した麻酔の影響が残っていたりと、治療直後から日常生活に戻れるわけではありません。

特に臼歯部の浸潤麻酔の場合、麻痺しているという感覚がわかりにくいことがあります。麻痺している間は唇や頬を噛んでも痛くないのですが、麻酔がさめるとともにだんだん痛くなってきます。

麻酔が効いているうちにうっかり口内粘膜を傷つけることもあるため、治療時は麻酔について歯科医師から患者へきちんとした説明が必要です。こちらには、歯科の麻酔はどんな方法でどのように効き、どう説明すればいいのかをまとめています。

麻酔の方法の説明

麻酔の方法の説明

治療時に麻酔などを用いる場合は、歯科医師は治療のみならず患者にわかりやすく、すぐに伝えられるように対応をしなければなりません。専門用語を使わず説明してみましょう。

日本の歯科で使われている主な麻酔液はリドカインやプロピトカインなどのアミド型の局所麻酔液が主で、同じ液体を用いつつ、打つ場所を変えることで効き目をかえます。

■表面麻酔
麻酔の注射を打つ前に使う麻酔薬です。
よく使われるものでは、ビーゾカイン歯科用ゼリー・ハリケインゲル・キシロカインスプレーなどアミノ安息香酸エチルを主成分とするものが多いです。

これらを、針を刺す場所に塗って2分程置き、歯ぐきの表面に麻酔が効いてきてからその場所に麻酔の針を刺します。表面が痺れているので針が刺さる時の痛みがほとんど無くなります。

■浸潤麻酔(しんじゅんますい)
一番良く使われる麻酔の方法で、麻酔液を歯の周りに打ち麻酔を効かせる方法です。表面麻酔が済んだら外側の歯の根の先端あたりを目がけて針を入れます。上の奥歯の場合は、歯の根が口の内側に開いている場合もあるので内側の歯ぐきに針を入れる場合もあります。
この麻酔方法ではゆっくりと麻酔液を入れる方が、痛みが少ないといわれています。麻酔液を一度にたくさん入れてしまうと歯ぐきの中の圧力が痛みに変わるのです。

一秒間に二滴位のスピードで入れる位のペースが望ましく、このペースでうまく行うように電動の麻酔器もあります。この麻酔器を使えばボタンを押すだけでゆっくりと麻酔液を入れることができるため、歯科医師ごとの技術差が出ません。電動の麻酔器でなくてもゆっくりと回数を分けて麻酔液を入れていけば、同じように痛みは少なくなります。
浸潤麻酔は、歯のそばに麻酔液が入るため効き目は早く、2〜3分で麻痺が始まります。

■伝達麻酔(でんたつますい)
下顎の骨は緻密で、浸潤麻酔法ではうまく麻酔液が浸透してくれない場合があります。親知らずを抜いたり下の奥歯の治療をする場合には、この伝達麻酔を使うことがあります。

伝達麻酔の方法は下顎の一番奥歯の後ろ側の歯ぐきの中、見えない場所にある下顎孔という下顎の神経の付け根に麻酔液を入れ、下顎の半分の広範囲に渡って麻酔をする方法です。パノラマ方法で撮影したレントゲン画像をみて下顎孔の位置を予測し、その場所に針を入れ麻酔をします。その場所に麻酔をすることで下歯槽神経と呼ばれる下顎の半分の神経を麻痺させることができます。

この方法だと骨の密度に関係なく麻酔を効かせることができますが、針を入れる場所をしっかりと見極めなければいけないので熟練が必要です。

場合によって伝達麻酔をした後に浸潤麻酔もすることがあります。これは伝達麻酔と浸潤麻酔の効く範囲の違いがあるためです。伝達麻酔での対応だけでカバーできない場所の治療時には伝達麻酔が効いてから浸潤麻酔を行います。

上記の麻酔が済んでも、治療時に痛みがある場合は歯と歯ぐきの境目から針を入れる“歯根膜麻酔”をする場合もあります。さらに神経を取ったりする治療時にまだ痛みがある場合は“髄腔内麻酔”をすることもあります。

この髄腔と言うのは歯の中の神経と一般的に呼ばれている“歯髄”が通っている歯の芯の部分です。この髄腔内に針を入れるのですが、これはかなり痛みを伴います。しかし確実に早く効きます。

歯科医師が麻酔の説明をする時は、上記のように説明、対応をすると患者にもわかりやすく、しっかりと説明をすることで安心感と信頼が生まれます。


患者への注意

患者への注意

麻酔の効き目や種類の説明も必要ではありますが、きちんと患者へ注意事項を知らせる必要もあります。では、具体的にどのように注意事項を伝えればいいのでしょうか。ポイントをおさえてうまく伝えられるようにしましょう。

■なぜ注意をしなければいけないかを理解してもらう
「麻酔が効いてる間は食べなりしないでくださいね」の一言だけでは、本当はまだ麻痺が残っているのに「もういいかな」となってしまいます。理由を理解してもらうことで自制しやすくなります。

『今日は右上の奥歯に麻酔をしました。麻酔が効いている間はわかりにくいかもしれませんが、周りの歯ぐきやほっぺたの感覚が麻痺しています。冷たいや熱いなどの温度も分からないと思います。熱いコーヒーなどを飲むとやけどをしてしまいます。頬もまだ痺れているので、何か召し上がるとうまく動かない頬を巻き込んで噛んでしまい、傷になることもあります。やけども傷も麻痺している間はわかりませんが麻酔がさめてくるとだんだんと痛くなってきます。ですから麻酔がさめるまでは飲食は避けるようにしてくださいね。』

このように、「なるほど」と理解してもらえるように対応しましょう。

■時間を伝える
「しばらく」など曖昧な説明では、混乱やトラブルを招きます。目安となる時間を伝えましょう。
麻酔がさめる時間は以下を参考にしてください。

●浸潤麻酔
大人で治療後2〜3時間程度、子供は治療後1〜2時間程度(子供の場合は組織が薄いので麻酔液の量も少なくて効きやすいため)

●伝達麻酔
治療後3〜5時間程度

上記は個人差がありますが、目安になるでしょう。
『今13時ですから麻酔がさめるのはだいたい15時から16時ごろです。』
このように、具体的な時間を伝えることで意識しやすくなります。

■子供の場合
子供の場合は自分で麻酔がさめたか気づきにくく注意が必要です。麻痺している感覚が不思議で、指で触ったりわざと噛んでみたりしてしまいます。痛くないので強く触ったり噛んだりしやすく、深い傷を作りやすいです。

『むずむずしたり気になっちゃうけど、○時まで頑張れるかな?触らないようにしといてね。』と本人にも伝えましょう。保護者の方にも『麻酔をしていますのでどうしても気になって触ってしまったり、わざと噛んでしまったりしやすいです。○時までは少し気をつけてみておいていただけますか?』と麻酔がさめるまでは注意してみてもらうようにします。

『その時間までは飲食はしないようにしておいてください。冷たい飲み物は大丈夫ですがこぼしやすいのでストローで飲ませてあげるといいと思います。』とさらに具体的なアドバイスをすると、保護者の方からの信頼感も増します。

まとめ

患者様は皆治療が終わるとホッとしてしまいます。つい気が緩んで注意されたことも忘れてしまうことがあるので、あらかじめ文書にして治療後に渡すのもいいでしょう。

麻酔のトラブルを避けるために、歯科医師は説明と注意事項をしっかり伝えるようにしましょう。
説明は分かりやすく、具体的にするのを心がけるのがコツです。

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