スリッパと土足どちらを選ぶべき?歯科医院内の履物事情に関する患者の声
歯科医院を開業される先生が一度は迷うであろう事として、「院内はスリッパと土足どちらにするべきか」について考えてみましょう。どちらにもメリット・デメリットがあり正解のない事柄だと思われます。最近の生活事情による兆候と、実際の患者の声を参考に考察してみました。現在開業をお考えで、今まさに迷っている方はぜひ参考にご覧ください。
昨今の歯科医院は院内土足が増えている
■なぜ「院内土足」にする歯科医院が増えているのか
最近開業する歯科医院の兆候としては、圧倒的に院内を「土足」にする歯科医院が多いようです。この背景には、「脱ぎ履きが面倒」「日常生活の中で、土足で過ごす場所の増加」「人の履いたスリッパは不快感から履きたくない」などと考える患者がいるのではないかということからのようです。
■高齢化社会にともなったバリアフリーな環境のため
また高齢化に伴い、歯科業界も高齢者の患者が増加しています。「バリアフリー」が主流になってきている現代、高齢者や身体的な障害者が玄関先でスリッパに脱ぎ履きするのはとても負担になります。時間もかかりますし、転倒などの危険も伴う動作です。土足のまま入室できる方がスムーズであるということから、土足で良い歯科医院が好まれるのではと考えられます。
アンケート調査からわかる 患者さんは「土足」?「スリッパ」?
■院内ではスリッパに履き替える歯科医院で見られるトラブル
では本当に患者側の心理や時代背景をふまえ、歯科医院では「土足」の歯科医院が好まれる時代なのか考えてみましょう。スリッパは玄関先で脱ぎ履きの動作が必要となります。確かに玄関付近での混雑の原因になっています。また、高齢者や子供に関しては靴の履き間違いなどトラブルの原因にもなりがちです。
■スリッパから土足へと移行を考える歯科医院が行ったアンケート
現在、院内ではスリッパに履き替えている歯科医院や、これから開業しようとお考えの方は「それなら土足のほうがスムーズでは?」とお思いでしょう。そこで、某歯科医院にて「土足へ変更するべきか」のアンケート調査が行われました。歯科医院が考える患者への思いと、実際の患者の意見はリンクするのでしょうか?
■「土足にしてほしい」という意見
土足希望の理由として、「靴を脱ぐ手間が省けて良い」という意見がありました。確かに脱ぎ履きの動作に時間がかかる高齢者などは来院時にスムーズでしょう。他には「夏は靴下を履かないことが多いのでスリッパを履くとき気になる」「ブーツだと脱ぎ履きしにくい」など、靴が多様化した現代らしい意見や、「靴の履き間違いがあったから」などの理由もありました。
■以外に多かった「スリッパのままで良い」という意見
もともと、スリッパから土足へ移行しようかと考えながらのアンケートだったこの歯科医院。結果を見て驚いたのが、スリッパ推奨派が意外に多かったということです。理由として、「靴を脱ぐ方が、室内では靴を脱ぐ文化の日本人としてはリラックスできる」というような生活習慣からの理由もありましたが、一番多かったのは「靴の汚れが診療室に持ち込まれて不衛生ではないか」という意見でした。
診療室に土足のまま入るのは「不衛生」なのか
■昔の医療機関が院内で「スリッパ」に履き替える理由
昔の歯科医院は、ほぼスリッパに履き替えていたと思います。道路が今のようにきちんと舗装されていなかった時代、土の中に生息する微生物や破傷風菌、カビ菌などを診療室に持ち込ませないための対策であったということです。特に歯科医院はお口を開けたまま診察や治療を行いますので、院内感染のリスクが高いと考えられていたのです。
■「スリッパ」が院内感染予防になる時代ではなくなった?
しかし、現代は一般の病院も歯科医院も「土足」のままの医院が多くなっています。いまや道路もほぼ舗装され、泥を靴底に着けて歩くような場所も減りました。また、医院に施される床材なども、汚れにくい素材のものや滑りにくいタイルなどが開発され導入されています。昔のように「土足」にすることでの院内感染対策の意味でスリッパを使用するということ自体があまり意味をきたさなくなっているのではないでしょうか。
■「土足」よりも「スリッパ」が不衛生だという意見も
逆に、衛生面のためだと考えられて使用されているスリッパを媒介して、院内感染を起こすかもしれないというリスクが指摘されています。歯科医院では歯の切削が行われたりすることで、床に歯牙や修復するための材料の削りくずが飛散します。また目に見えなくても、血液等が混じった飛散物が床に飛び散っています。それらをスリッパに付着させて歩き、そのまま他の患者が履くということで媒介するのではとも考えられます。
院内感染に関して患者への配慮は?
■「スリッパ」「土足」に関わらず院内感染対策の配慮を
医療スタッフ側から考える院内の履物事情と、患者の考える履物事情は、イメージや知識の差から食い違いがあるようです。本当は治療を受けたいのに、院内の履物事情を苦手として来院してもらえないとすれば悲しいですね。現代はさまざまな院内感染対策グッズも豊富です。また、そのような対策を施しているということを知らせるツールも充実しています。患者への通知をうまく行えば理解を得られるのではないでしょうか?
「土足」であることでの対策として、玄関に抗菌マットを設置したり、院内に空気清浄機などを設置する対策を施すことができます。「スリッパ」に関しては、抗菌ボックスを利用するなどして、使用後のスリッパをそのまま履かないようにすれば衛生的です。また見た目にも「除菌している」というイメージがわかりやすく患者も安心感が得られます。このように院内感染対策をしているかということは、昨今の患者の医院選びの選択肢の一つとなっています。どんな対策をしているかなどをホームページ等で紹介したり、院内に掲示するのも効果的です。
まとめ
ほとんどがアスファルトで舗装された道を歩く便利な日常生活によって、雨の日でも靴に泥が付くということも無くなっています。また、バリアフリー化が進み土足の医療機関が増えてきています。しかしながら、靴を脱いで治療を受ける姿勢のほうがリラックスできますし、まだまだ靴を履いたままの入室は不衛生だというイメージも根深いようです。どちらが正しいという正解のあることではありませんので、時代背景や患者の声もふまえて検討されるとよいでしょう。