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歯科コラム

口腔障害をお持ちの方に歯科医がアドバイスできる食事の工夫術

歯科によっては、過去に大病を患ったことによる後遺症や高齢などが理由で嚥下障害を抱える方に、誤嚥性肺炎を防ぐための口腔ケアを行っているところがあります。
高齢化社会である現代では高齢者の誤嚥による肺炎が増加しているため、誤嚥性肺炎を防ぐためのさまざまなアドバイスをしている歯科医院は増加してきているのではないでしょうか。

しかしそれ以外にも、患者のなかにはさまざまな理由により咀嚼や嚥下が難しい口腔障害を持つ方もいます。健常者に比べて食べられる物に限りがある彼らは、栄養失調や脱水のリスクを抱えています。
さらに高齢の方で病気はしていないものの、唾液の減少などにより嚥下が難しくなってきた高齢者は、嚥下障害の自覚がないままに通常の食事をすることで、誤嚥性肺炎につながるリスクがあります。
そんな方のために、食事のアドバイスもできないかと考える歯科医院は多いのではないでしょうか。

今回は歯科医院にもできる嚥下食のアドバイスについて紹介します。

口腔期障害の方のための嚥下食

口腔期障害の方のための嚥下食

口腔期は食べ物を舌の動きにより咽頭へと送る作業をします。口腔期での障害は、食べ物が口からこぼれる、食べ物が口の中に残留する、飲み込む準備をする前に食べ物が咽頭へ流れるなどの症状があげられます。

また、咀嚼や食塊形成の困難を併発している場合もあります。この障害を持つ方は、何度も噛まなくてはいけない硬さや弾性のある固形の食べ物、パサパサと乾燥した食べ物、粘度が高い餅などの食べ物などが不向きです。
そのため嚥下食としては、あまり噛まなくてもいい軟らかな(半固形)煮物などの食べ物、液状もしくはペースト状の食べ物、粘度の低いさらさらとした食べ物などが相応。

また、人によっては水分や油分を適度に含んだ、ある程度滑らかな食べ物を良しとする場合もあります。さらに咽頭へ送ったあとに噎せることがある場合は、液体状の食べ物は片栗粉や増粘剤などでとろみをつけると良いでしょう。

ひとつ注意が必要なのは、咀嚼が困難であるからといって食材を細かくしてしまうことです。そうすると却って咀嚼をしづらくなることから、ある程度の大きさを残した食べ物の方が適切となります。以上のことから口腔期障害がある患者には、あまり咀嚼が必要ではなく咽頭へ送り込みやすいタイプの食べ物が向いていると言えます。

咽頭期障害の方のための嚥下食

咽頭期は口腔より送り込まれた食べ物を嚥下反射により食道へ送る作業をします。咽頭期での障害は、嚥下反射が遅い、食べ物がうまく食道へ流れない、気道への誤嚥などの症状があげられます。

この障害を持つ方は、嚥下の際に鼻に漏れる可能性があり、また誤嚥の可能性もあるバラつく固形物の食べ物やサラサラとした液状の食べ物が不向きです。さらに咳の誘因となる酢の物などもあまり良くありません。
そのため嚥下食としては、ゼリーもしくはピューレ状の食べ物、ヨーグルトなどの高粘度のペースト状の食べ物、片栗粉や増粘剤でとろみをつけた液状の食べ物などが相応。

咽頭期障害が軽度で口腔期障害を併発している場合は、すぐ飲み込める形成不要の煮物なども良いでしょう。さらに食材にある程度のマヨネーズ、もしくは生クリームを含めるとなめらかな状態となり、嚥下がしやすくなります。
野菜の和え物にごまは使用せず、豆腐の白和えにすると良いでしょう。

咽頭期障害がある方は水分の摂取が困難になるため、脱水に注意が必要です。水分を摂取する際は誤嚥のリスクを下げるために、増粘剤でとろみをつけた飲み物やゼラチンもしくは寒天でゼリー状にした飲み物を摂取すると良いでしょう。

以上のことから咽頭期障害がある患者には、嚥下の際に安全性の高いゼリーのように固まっている食べ物、ペースト状の食べ物、食道へ送りやすいなめらかな食べ物が向いていると言えます。

食欲を高めることも重要

食欲を高めることも重要

さまざまな障害で食事が困難になると、食欲だけでなく気分も低下してしまいます。食べる意欲がなくては食べ物に気を遣っても意味がありません。そんな時は食欲を高められる工夫をしましょう。

食欲を高める方法は、味付け、食べ物の香り付け、食べ物の盛り付け、食べ物の温度などがあります。好みの味付けや香り、見た目のいい盛り方をした食べ物は食欲を高める効果があります。食べ物の温度は温かいものは温かく、冷たいものは冷たくすることによって美味しく感じられます。

さらに好物である食べ物は一番食欲や気分を高められるものと言え、障害があったとしても難なく食べられてしまうこともあったりします。そういったことから食べる意欲を高めることも大切なことになります。

誤嚥性肺炎を予防するための食事

高齢者の方は、そのほとんどが誤嚥性肺炎のリスクを抱えていると言っていいでしょう。そのおもな原因が唾液の減少、咀嚼と嚥下機能の低下などです。

唾液が減少すると口腔内が乾燥状態になり、水分がなくパサパサとしたパン類、乾物などの食べ物は。咀嚼はできても嚥下をするのが難しくなります。
また、咀嚼機能が低下すると硬い食べ物を食塊形成できなくなり、嚥下機能が低下すると粘着性のある餅や団子などを詰まらせたり、食べ物を誤嚥するリスクが出てきます。

そういったリスクがあることから、あまり咀嚼する必要がなく、水分を多く含んだ誤嚥の危険性がない安全な食べ物が好ましくなります。
具体例としては、野菜の煮物(ごぼうなどの硬い物は除く)、煮魚、豆腐、ヨーグルトなどがいいでしょう。
果物は酸味がなく柔らかく熟した物が食べやすく、麺類はよく煮込んだものが良く、米は水分を多めにし、軟らかくなるように炊くといいでしょう。

こういった工夫によって食事による誤嚥のリスクを下げることができますので、参考にしてみて下さい。


食事のアドバイスも求められる歯科

食事のアドバイスも求められる歯科

歯科は歯を診ることから食事との関連性も高いと言えます。

歯に異常はなくても何らかの障害により、食事が困難になり苦しんでいる患者は少なくないはずです。そういった方の気持ちを理解し、症状によって食べられる物をアドバイスし、患者に寄り添うことで、さらに患者との信頼関係を築いていけるのではないでしょうか。

また、高齢化社会により、患者の誤嚥のトラブルは増加する可能性もあります。この機会にぜひ患者の食事についても考えられる歯科医院を目指されてみてはいかがでしょうか。


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