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歯科コラム

大人の喫煙が子どもの虫歯リスクを高める

タバコのけむりに含まれる非常に多くの有害物質は、肺がんをはじめとした重篤な病気の原因となります。さらに受動喫煙により日常的にタバコのけむりを吸ってしまっている子供や女性なども、喫煙者と同様に肺がんなどのリスクが高まることがわかっています。

そういったことが判明したためにタバコの危険性が広く知れ渡ることになりましたが、ここ近年のあいだに受動喫煙は「虫歯のリスク」も高めてしまうことが判明しました。

そこで今回は、喫煙をされている方がいるご家庭に注意を促すために、受動喫煙によるお子様の虫歯のリスクについてご紹介したいと思います。

なぜ受動喫煙で虫歯のリスクが高くなるのか?

なぜ受動喫煙で虫歯のリスクが高くなるのか?

まず「受動喫煙」とは、喫煙をしていない子供や女性をはじめとした非喫煙者が、喫煙者のタバコのけむりを意図せず吸ってしまうことを指します。

この「受動喫煙」により非喫煙者の健康に悪影響が及ぶことが大きな社会問題となり、今の喫煙マナーが生まれるきっかけと言っても過言ではありません。

それにより外出先でタバコを吸っていると白い目で見られる喫煙者も非常に多くなったように思われます。

そのため喫煙者の多くは、自宅で隠れるようにして誰に指摘されることもなく思い思いにタバコを吸うようになったのではないでしょうか。またタバコの有害性を理解した上で、非喫煙者が肺がんなどを患わない程度に喫煙をすれば何も問題はないだろうと思われている方も多いかもしれません。しかしそれに警鐘を鳴らすのが、「受動喫煙による虫歯のリスクの上昇」です。

このことは、2004から2010年のあいだに行われた「受動喫煙と虫歯のリスクの関係性」の調査によって判明しました。それによれば、家族に喫煙者がいる家庭と喫煙者がいない家庭とを比べ、喫煙者がいる家庭の子供が虫歯にかかる割合は約1.5倍にものぼることがわかったのです。さらに子供の目の前で喫煙をしているという家庭の場合は、前述のさらに約2倍にもなるということもわかりました。

そのため「受動喫煙と虫歯のリスク」は切っても切り離せない関係性があるということがわかり、さらに受動喫煙の危険性が提唱されたのです。また受動喫煙と虫歯の因果関係については、受動喫煙によりけむりに触れた唾液が生化学的変化を起こし、その結果、歯に歯垢がたまりやすくなり虫歯になると言われています。

乳歯は虫歯にかかりやすい

ここで、そもそも受動喫煙により虫歯のリスクが高くなるのは子供だけなのかという疑問が持ち上がるかもしれません。

無論、子供だけでなく成人済みの社会人なども受動喫煙の影響で虫歯のリスクが高くなっている傾向にあると思われますが、決定的な違いは「乳歯」と「永久歯」にあります。

「乳歯」は「永久歯」と比べ、その歯質はとてもやわらかく、虫歯菌が排出する酸の影響を非常に受けやすいものです。また「乳歯」は再石灰化において唾液に含まれるミネラルに依存せざるを得ません。フッ化物の塗布をすることで、ある程度の虫歯菌の酸から歯を守ることはできますが、それでもその予防効果はあまり高いとは言えません。

そのため「乳歯」にとって唾液の質は非常に重要であり、受動喫煙の影響で唾液の質が変化してしまうことは虫歯を作る大きな要因となりかねないのです。

虫歯だけではない受動喫煙の影響

虫歯だけではない受動喫煙の影響

ここでは虫歯のリスクを高めてしまう以外の受動喫煙の影響について、簡単にご紹介させていただきます。

■メラニン色素の沈着
日常的に受動喫煙をしてしまっている非喫煙者の方は、歯肉に「メラニン色素」が沈着している特徴が見られます。

これは喫煙者にも見られることですが、タバコのけむりに含まれるメラニンを吸収してしまうことで歯肉が黒く、あるいは茶色く変色してしまう現象です。

もし歯肉にメラニン色素が沈着していても、歯肉炎になりやすくなったり歯周病が進行しやすくなったりするわけではなく、特に自覚症状もありません。

しかし色素の影響で歯肉の色があまり健康的に見えないため、コンプレックスに感じてしまう方は多いと言えます。また一度ついたメラニン色素は、なかなか自然に消えることはありません。そのため、歯肉を健康的な色に戻すためには治療を受ける必要があります。

その治療法としては、レーザーによる治療と薬剤による治療などがあります。

■胎児への影響
妊娠中の女性が受動喫煙の影響を受けた場合、胎児に大きな悪影響が出るケースがあります。

まず受動喫煙の影響により、母親の体内の血管が収縮してしまい、それにより胎児に必要な栄養が行き渡りにくくなってしまいます。

それにより発達遅延や低体重の子供が生まれてきてしまうリスクが高くなります。また唇や口蓋が生まれつき裂けている状態の「口唇口蓋裂」という先天性異常の発生リスクも高めてしまうと言われています。

そのほかに、生まれてきた子供がけむりに対してアレルギー反応を示したり、ぜんそくの症状が出たりするケースもあります。特に深刻なのは「乳児突然死症候群(SIDS)」の原因のひとつに受動喫煙の影響が含まれていることです。

このように妊娠中の女性の受動喫煙はお腹のなかにいる胎児に大きな悪影響を及ぼしてしまうために、強く注意喚起が行われているのです。

歯のクリーニングと虫歯のチェックの併用

ご家族に喫煙者がいるご家庭は、親子で定期的な歯のクリーニングと虫歯のチェックを行うことが非常に重要です。

というのも、喫煙者はタバコに含まれるヤニが歯についていることが多いため、一部の人は定期的に歯のクリーニングを行ってヤニ取りをしているものと思われます。

その際に子供も歯のクリーニングにつれていくことにより、それと併せて虫歯のチェックをすることで虫歯の予防や早期発見につながるためです。

また緑茶や麦茶を常飲しているご家庭では歯に茶しぶが付着していることが多いため、そういったご家庭でも定期的なクリーニングと虫歯のチェックを行うと良いでしょう。

百害あって一利なし

百害あって一利なし

喫煙は喫煙者本人の健康を害するだけでなく、喫煙者が出した副流煙を吸ってしまうことで無関係の非喫煙者の健康まで害してしまう厄介なものです。しかも簡単に予防することのできる虫歯のリスクまで高めてしまうとあっては、尚更その影響は無視することはできません。

ストレス社会の日本において喫煙によりストレス発散をされている方も多いかと思われますが、禁煙が進む現在の日本では喫煙以外のストレス発散法もあみだされています。

また近年では病院による治療で禁煙を行う禁煙外来も推奨されていますので、喫煙をやめられずに悩んでいる方はぜひご参考にしてみて下さい。

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