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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科専門の病理を行う口腔病理専門医の業務内容

病理医や病理専門医とは、生検や切除した部位の病理解剖を行い、病気の原因やその過程を診断するエキスパートです。では歯科医における病理専門医である「口腔病理専門医」とは、どのようなことを行うのでしょうか。業務内容や研修、試験についてもお伝えします。

口腔病理学について

口腔病理学について
口腔病理学とは、口腔を領域とした病理を研究および解明する分野で、主に病院の口腔外科手術における術中病理診断、細胞診など、歯牙を含む口腔内の組織に関して診断を行う業務です。

口腔は歯だけでなく、歯周組織に関する歯科病理学や唾液腺、口腔軟組織、顎顔面などの組織を含む口腔病理学のことを言います。一般の歯科治療とは異なり、口腔内の様々な疾患に対し、病気の特定や病理診断を行います。口腔内の疾患の一部として、エナメル上皮腫や歯牙腫、口腔内の様々な悪性腫瘍などがあり、これら以外にも口腔領域における疾患に関する病理診断を行うことが、主な業務です。

口の中は、全身の疾患の初期症状として何らかの異変を示すことが多いため、口腔病理専門医による病理診断により、病気の診断を確定することから、口腔病理学は大変重要な分野と位置付けられています。

口腔病理専門医とは

口腔病理専門医は、歯科医師免許を取得した後に、日本病理学会が認定する研修施設にて5年以上、病理学研修を行い、所定の研修内容を終了したあと、日本病理学会が実施する口腔病理専門医の試験に合格し、日本病理学会口腔病理専門医制度運営委員会で認定された歯科医師のことです。口腔病医専門医試験は筆記試験と実技試験があります。

口腔病理専門医になるためには

歯科医師免許を取得した後、更なるステップアップを目指して口腔病理専門医を目指すためには、どのような研修が必要なのでしょうか。

歯科医師初期臨床研修終了後、口腔病理専門医研修が開始されます。研修後、大学院にて口腔病理を学んだ後、一般病院の病理部や大学病院病理部などで研修を受け、口腔病理専門医取得のための受験資格を得ることができます。口腔病理専門医を取得したあと、一般病院などの病理部で病理診断などの業務を行えるようになります。

なお、「日本病理学会認定口腔病理専門医」と「日本臨床細胞学会 細胞診専門歯科医」とでは研修プログラムが異なります。大学院との関連にも関わるため、研修プログラム内容をよく確認しておきましょう。

口腔病理専門医研修手帳および口腔病理研修登録について

口腔病理専門医研修手帳および口腔病理研修登録について
日本病理学会により、口腔病理専門医の研修カリキュラムのための研修手帳が作成されました。平成24年度以降に口腔病理研修を開始する人は、この口腔病理専門医研修手帳が必要です。各研修項目が履修された証明として、捺印が必要となります。

この手帳は、専門医試験受験のときに、全部のカリキュラムを履修した証明として口腔病理専門医研修手帳を提出しなければいけないため、必ず全てを履修し、紛失しないようにくれぐれも気をつけておきましょう。

また口腔病理専門医を目指して、4年間の病理研修の開始またはすでに開始している歯科医師たちに、その旨を学会に登録する必要があります。というのも、登録した歯科医師たちには「口腔病理研修番号」とともに「口腔病理専門医研修ファイル」が配布されるからです。研修ファイルは、口腔病理専門医受験申請書類となるため、登録を忘れないようにしなければいけません。

口腔病理医の実地試験について

口腔病理専門医の実地試験では、口腔疾患に関する問題をはじめ、剖検例を含む、病理診断医と共通した全身疾患に関する問題が出されたことが特徴です。

これは、口腔疾患を専門としている一方で、一般病理学および全身との関連性を理解することが出来る口腔病理専門医を育成するためと言われています。つまり口腔と全身疾患の関連性を理解するための試験内容と言ってよいでしょう。なお受験資格には、死体解剖資格(病理解剖)が必須です。

一般病理医の不足と口腔病理専門医との懸念すべき問題とは

特に、今や2人に1人がかかるがんにおいて、病理専門医が欠かせないにもかかわらず、病理専門医が絶対的に不足していると同時に、地域によりその数に偏りがあることが、まず大きな問題点として挙げられます。

日本がん治療認定機構という組織において「がん治療認定医」の中に「歯科口腔外科」が設置されています。口腔病理専門医が、こういう場において対応できることが望ましいでしょう。

それにも関わらず、口腔病理専門医は、その試験内容から一般病理医と半分は同じであるために、総合病院などでは口腔内だけでなく、口腔領域以外の病理診断を依頼されてしまうことがあります。医師免許を取得した人が行う医行為と、歯科医師免許を取得した人が行う歯科医行為と、本来ならば分けられています。

それにも関わらず、口腔領域内を専門とした口腔病理専門医が、他の部位の病理診断を行わなければならないケースがあることが、そもそもの問題ではないかと思われます。

もし万が一、一般病理医が誤診してしまった場合、民事責任のみ問われるでしょう。ところが口腔病理医が、口腔領域以外の病理診断を行い誤診してしまったら、これは誤診ではなく、むしろ医師法違反として問われる可能性が出てきます。

つまり口腔外科などの歯科診療を行う機関がない病院で、口腔病理専門医が「病理医」として働くことに、大きな矛盾とリスクが存在するのです。口腔領域以外の部位は、医師による一般病理医が行わなければならず、歯科医に行わせないようにしなければいけません。

一般病理医の不足を解消し、口腔病理専門医が、自信の専門の範囲外の病理診断を行うことがないよう改善されることが、今後の大きな課題と言えましょう。

病理専門医が絶対的に不足している現状

日本では、病理専門医が不足しているため、口腔病理専門医が専門外の病理診断を行わなければならないというリスクを抱えています。医師法違反に触れてしまう可能性も高いことも、懸念材料です。

これは口腔内の疾患は全身の疾患に大きく関わるため、試験内容の半分が一般病理医と同じというところが根本的な原因のひとつと考えられます。このような状況が改善されることが、今後の課題と言えるでしょう。

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