歯科医師が学会から専門医の認定を受けるメリット
専門医認定を受けることで、現在の立場で患者からのより厚い信頼を得ることにつながりますし、将来の転職や開業においても強力な武器となり得ます。今回は専門医認定を受けることのメリットについてご紹介するとともに、そのメリットを最大限に生かす認定の受け方についても考察したいと思います。
専門医認定のための条件は?
加えて、学会によっては、一度専門医の資格を取ったとしても、5年ごとなどの更新を義務付けている場合があります。
以下に例として2つの学会の専門医資格取得に関する条件をあげておきます。
■日本口腔外科学会の場合
口腔外科専門医の資格取得のためには、歯科医師免許を取得し、初期臨床研修を修了して6年以上、学会認定の研修施設あるいは準研修施設に所属し、口腔外科分野の診療と学術的活動に携わる中で一定以上の実績を上げていることが必要です。
口腔外科専門医の認定にかかわる審査は次の通りです。まず、申請書類審査。そして、筆記試験と口頭試問。さらに、手術の実地審査があります。これは、試験管による口腔外科手術の見学という形で行われます。
口腔外科専門医の資格は5年ごとの更新が義務付けられています。期間内に一定の研修実績を上げることが求められており、資格取得後も、精力的なスキルアップを継続することが必要です。
■日本歯周病学会の場合
日本歯周病学会認定歯周病専門医となるには、まず日本歯周病学会の認定医あるいは本学会が認める関連学会の認定医であることが求められます。また、認定医となってから通算2年以上歯周病学会の会員である必要があります。
さらに、認定医となったのち、本学会の認めた研修施設で通算2年以上歯周病学に関する研修と臨床経験を積んでいることも必要です。
認定医になってから、日本歯周病学会の学術大会において、認定医・専門医教育講演を2回以上受講していること、定められた教育研修単位を取得していることに加え、日本歯科医師会に加入していることも原則として求められています。
また、歯周病学会らしい項目として、非喫煙者であることも要求されています。
専門医の認定を受けたなら、5年以内に日本歯周病学会の学術大会時に臨床ポスター発表をするか、米国歯周病学会(AAP)と合同で行う学術大会で症例発表を行う必要があります。
専門医に認定されるとどんなメリットが?
となると、一体それだけのメリットがあるのだろうか。というのが気になるところです。もちろん、研さんを積み資格を取るのは自分の成長のためだというのが優等生的回答なのですが、昨今の歯科医院事情を考えると、専門医資格取得のメリットは確実に存在します。
■安心感と信用
患者にとっては、歯科医師を信用できるかどうかは非常に重要な問題です。まじめに日々技術を磨いている歯科医師であることを知らせる専門医資格は、患者からの信用を得、スムーズに診療を進めるのに役立つことでしょう。
今はインターネットやテレビで情報があふれており、患者が「最新情報」を持って来院することもよくあります。しかし、そうした「最新の」技術や手法がまだ普遍的に実用化されていない場合や、個別のケースとして適応でない場合も多いものです。
そのような場合、患者の中にはそれらの大衆向けソースからの情報のほうを信じ、あなたを「勉強が足りず遅れている歯医者」と考える人もいます。あなたが最新の技術や手法に精通したその分野の「専門医」として認定されているという「印籠」で、あなたのほうを信用し、安心して治療を受けてもらえるかもしれません。
■歯科医院選びの指標
歯科医院がコンビニ並みに増えている今、歯科医院選びは患者にとっても頭の痛い問題です。なぜなら患者は、どのドクターがどれくらいの技術や知識、経験があるのか、どの分野が得意でどの分野はそうでもないのかといった重要なファクターを見極める術を持っていないからです。
そこで、多くのインターネットサイトや、いわゆる質問サイトなどで取り上げられる「歯科医院選びの○つのポイント」のような記事の中では、この学会認定医・専門医制度について触れられており、選び方の一つの指標として扱われています。中には「認定医と専門医、どちらを受診すべきでしょうか」といった記事も見られます。
たくさんある歯科医院の中から選ばれるとき、この専門医資格が決め手になっている可能性も大いにあるということが見て取れるのではないでしょうか。
歯科医院の方向性に合わせて資格取得を
そのため、どの分野の専門医認定を目指すか決めるにあたり、歯科医院のターゲット患者を考慮に入れて選択することをお勧めします。例えば、高齢者が多い地域の歯科医院なら有病者歯科医療学会の専門医資格を取得すると、メリットを最大に生かせることでしょう。
簡単にですが、歯科医師が各学会から専門医の認定を受ける条件とそのメリット、そしてメリットの活かし方について考えてきました。競争の時代、実質を伴ったブランディングは非常に価値があります。上手に活用してステップアップしていくのはいかがでしょうか。