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歯科コラム

歯科医院の個別指導対策について|適切な保険診療を提供するために

厚生労働省の地方支分部局(略して厚生局)が行う「個別指導」や適時調査によって、平成27年度においては医療機関からの返還金が124億円にも上りました。患者様との信頼関係の上でも医療機関は、日頃から適正な診療報酬の請求を心掛け、「個別指導」の対象とならないよう努力することが求められています。

行政指導の種類

行政指導の種類
厚生局による保険医療機関を対象とした指導は3つに分類され、目的に応じて対象や内容が異なります。
「集団指導」や「集団的個別指導」を経ても尚、診療報酬の点数が基準より高く、診療報酬の自主返還の措置がとられる可能性があるものが「個別指導」です。それぞれ、次のような特徴があります。

■集団指導
すべての保険医療機関が対象で、新規開業や指定更新、診療報酬改定時に集団で指導を受けるものです。

■集団的個別指導
都道府県ごとに1件あたりの診療報酬点数が高い上位8%程度の医療機関を選定し、集団指導の後に個別面接方式により指導をします。教育的指導を目的としていることから、この場合は自主返還を求められることはありません。しかし、正当な理由のないまま拒否した場合は、個別指導が行われます。

近年は、集団的個人指導を行わずに個別指導をする都道府県が、増加傾向にあるようです。

■個別指導
集団指導や集団的個別指導を経ても尚、診療報酬の実績が都道府県平均点数の約1.2倍を超える医療機関を、選定委員会で選定され個別指導の対象となります。

選定対象となるケースは、支払基金や保険者、被保険者など周囲の情報提供によって発覚した場合です。また、集団的個別指導の翌年度も高点数医療機関の上位4%に位置する場合も、選定対象と認識されます。

約2時間で30人分の診療報酬明細書について指導があり、自主返還が求められる場合は過去1年分の全診療について自主点検が求められ、自主返還の措置がとられる可能性があります。

■新規個別指導
新規指定保険医療機関を対象に行われる指導です。新規指定から6~12ヶ月以内に実施されます。新規開業した全ての保険医療機関を対象として行われ、10人分の診療報酬明細書を対象とし、約1時間の指導があります。

新規個別指導の結果、自主返還が求められる場合は自主点検が求められます。目安としては、指導対象の10人分の診療報酬の点検が必要となります。

個別指導の主なスケジュール

個別指導は以下のような順序で進められていきます。

・1ヶ月前、実施通知の送付
・「保険医療機関の現況」などの提出
・1週間前、患者20人分指定のファックス送信
・前日の正午までに、患者10人分指定のファックス送信
・指導当日、出席者の確認、持参資料の確認、指導、まとめ、講評
・1ヶ月後、指導結果の通知(概ね妥当、経過観察、再指導、要監査のどれか)
・改善報告書の提出(要請があったとき)
・自主点検、自主返還(要請があったとき)

監査について

個別指導において不正または著しい不当が行われている場合に、事実関係を的確に把握するために行われます。監査の後に確認された事実に応じて、保険医療機関の指定取り消しまたは保険医登録取り消しなどの処分や注意など、行政上の措置が執られます。

■取消処分
故意に不正または不当な診療や請求を行った場合や、重大な過失により不正または不当な診療をしばしば行った場合。取消処分を受けると公表され、原則5年間は保険医療機関としての再指定や保険医としての再登録は受けられません。

■取消相当処分
取消処分を行うべき事案について保険医療機関などが既に廃止されている、あるいは保険医が既にその登録を抹消しているなどの理由で、 これらの行政処分を行えない場合に行われる取扱いです。取消処分の場合と同様、取消相当であることが公表され、原則として5年間、再指定(再登録)を受けることができません。

不正請求の凡例

不正請求の凡例
不正請求には、付増請求、振替請求、二重請求、架空請求などがあります。実際にあった不正請求の例をご紹介します。

■S県E歯科(平成27年3月31日廃止)
<主な事故内容> 架空請求、付増請求、振替請求
<返還額> 4,768,000円
<保険医療機関指定取消相当> 平成27年5月26日
<保険医登録取消> 平成27年5月26日
<概要>
個別指導を実施したところ、保険医は歯科医師1人であるにも関わらず異なる施設の複数の患者に対して同じ時刻に歯科訪問診療を行ったとする架空の請求が見られた。これについて説明を求めると、明確な回答が得られず個別指導を中断し、改めて個別指導を再開した。

しかし歯科訪問診療についての疑い事項がさらに強まったため個別指導を中止し、監査に移行。監査結果、さらに実際行っていない保険診療を付増し診療報酬を不正に請求するほか、実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて診療報酬を不正に請求していたことも露見した。

■S県M歯科医院(平成27年3月31日廃止)
<主な事故内容> 付増請求、振替請求、二重請求
<返還額> 1,816,000円
<保険医療機関指定取消相当> 平成28年2月8日
<保険医登録取消> 平成28年1月22日

■K県 医療法人社団 F歯科医院(平成27年9月30日廃止)
<主な事故内容> 付増請求、振替請求
<返還額> 1,122,000円
<保険医療機関指定取消相当> 平成27年10月22日
<保険医登録取消> 平成27年10月22日

対策

保険診療は複雑なルールでできており、保険診療報酬の算定については、日常的に注意を払う必要があります。自身では不正をしていないつもりであっても、算定のルールに従っていなければ不当請求とみなされる恐れがありますので、対策が必要です。

各歯科医院でできる対策は、以下のようなものがあげられます。

■厚生局に問い合わせる
厚生局では電話やファックスでの問い合わせを随時受け付けており、診療や保険請求、カルテ記載などについての質問に対応しています。厚生局からの回答がないまま個別指導になった場合は、事前に質問していたことを主張することが可能です。

また、厚生局によってはホームページ上で、「個別指導において保険医療機関などに改善を求めた指南事項」として公表していますので、参考にすることをお勧めします。

■個別指導がある場合の持参物
個別指導では、カルテのほか診療に関する記録の持参が任意で求められます。個別指導を受けないための予防として、以下の記録を日常的に確実に作成しておくことが重要です。

・患者ごとの来院日及び窓口負担金
・保険医療機関の現況
・カルテの準備
・コメントの記載(主訴、画像診断、医学管理、治療方針、歯科衛生実地指導など)

まとめ

個別指導は、健全な医院経営を意識して行うことで予防できます。保険診療や診療報酬請求について、日常的に情報収集や対策を行い、適正な診療や請求を行いましょう。
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