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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

患者と歯科医師は対等に|歯科医師のプロフェッショナリズム

歯医者は怖くて行きたくない場所というのが一般的なイメージだった時代は終わり、現在の歯科医院は患者様の満足度向上を謳って日々進化しています。歯科医師と患者の関係も、昔とは異なり対等であるべきというのが常識となっています。しかし、いまだに上から目線で患者に指示を出してしまう歯科医師がいるのも事実です。また、歯科医師に無理難題を押し付けるモンスターペイシェントという新たな問題も出てきています。

近年の歯科医師に求められているプロフェッショナリズムとは、具体的にどのような考えのことを指すのでしょうか。

「上から目線」の歯科医師とは

「上から目線」の歯科医師とは

最近はだいぶ減っているようですが、歯科医師よりも患者の立場を下と考えている歯科医師の話を耳にする事があります。歯科医師は、社会に出て間もない新人の頃から「先生」と呼ばれます。患者の方も、「先生」という呼び名から無意識に指導を受けているような気分になり、お互いが無意識の内に上下関係を作ってしまう場合があります。

患者に「上から目線」と感じさせてしまう歯科医師の態度とは、具体的にどのような態度を指すのでしょうか。

■治療に関する説明をしっかりと行わない
インフォームドコンセントを疎かにしていると、治療方針が明確にされず、患者は不安になり不信感につながります。

■患者の意見や要望を聞かず、質問をすると嫌な顔をする
自分の治療技術に自信を持っている分、患者は自分の治療を黙って受け入れるべきだという考えが態度に表れて、患者に不快感を与えます。

■患者やスタッフに対する態度が横柄
患者に対して横柄な態度をとるのはもちろん、治療中に周りのスタッフに対してあからさまに怒りをぶつけるような態度も注意が必要です。院内の雰囲気が悪いと、患者も居心地が悪いと感じてしまいます。

■治療中の声掛けなどの気遣いが無い
患者は治療に対して不安を感じている事が多く、治療の際には痛みなどの苦痛を伴う場合もあります。治療中の痛みや不快感に対するフォローが無いと、患者の不安を増大させてしまいます。


患者の顧客化

最近は、「歯医者はサービス業」という考えが普及し、患者の満足度向上が求められています。スタッフは高級ホテル並みの接遇マナーを学び、待合室も高級ホテルや美容院のような歯科医院が増えています。患者もまた、歯科医院の増加で選択肢が増えた事で、消費者のような感覚で歯科医院を選ぶようになってきました。

多額の費用を支払って保険適応外の治療を受ける患者も増え、自分はお客様であるという意識があるため、歯科医師との立場が逆転してしまう現象も起きています。中には、悪質なクレームや理不尽な要求などを繰り返す、モンスターペイシェントとなってしまう事例も発生しています。患者がモンスターペイシェントとなってしまうと、歯科医師はもちろん周りのスタッフにも被害が及び、他の患者の治療にも影響が出てきてしまいます。


歯科医師と患者の対等な関係とは

歯科医師と患者の対等な関係とは

歯科医師と患者は何をもって対等な関係と言えるのでしょうか。医療倫理4原則から考えてみましょう。

■自律尊重原則
患者自身が治療に対して意思決定できるように、医療従事者に対して重要な情報を提供する必要があります。

■善行原則
医療従事者は、患者に対して患者自身が考える善を行う必要があります。

■無危害原則
医療従事者は、患者はもちろん人に対して危害を加えない事を求めます。

■正義原則
患者を対等に扱い、医療資源の配分を正しく行うことを求めます。

歯科医師と患者との関係性と重要な関わりがあるのは、「自立尊重原則」と「善行原則」になります。仮に、歯科医師の立場が上だと仮定すると、歯科医師が患者の意思に反して治療を行う場合が出てきます。それは、患者自身が治療に対して意思決定をし、歯科医師は患者が望む最善の治療をするという原則に反する事になります。

反対に、患者の立場が上だと仮定すると、自身の情報を歯科医師に開示しなかったり、治療に非協力的になったりする場合があります。それでは、結果的に患者自身が考える最善の治療を受ける事が難しくなります。

歯科医師は自身が推奨する治療方法を患者に押し付ける事なく、患者にとって最善の治療を行い、患者は歯科医師が自分にとって最善の治療を行えるように協力する必要があります。すなわち両者は協力関係にあり、どちらの立場が上という事がなく、互いの信頼関係があってこそ、両者が満足できる最善の治療を行えるという事になります。


患者との対等な関係を作るプロフェッショナリズムとは

患者との関係が上手くいかない原因としては、歯科医師としてのプロフェッショナリズムの方向性に問題がある事が考えられます。

例えば、最新の設備や優秀なスタッフを揃え、治療に絶対の自信を持って治療に臨む事こそがプロフェッショナリズムだという考えを持っている場合はどうでしょう。もしも、患者にとってその治療が最善でなければ、残念ながらその歯科医師が考えるプロフェッショナリズムはただの自己満足になってしまいます。

患者との対等な関係を作るプロフェッショナリズムとは、徹底的な患者目線の意識であり、まずは基本に立ち返り、「人との関わり」を大切にする事であると言えます。人との関わりを大切にするという考えを持って患者と接すると、自然に何をすべきかが見えて来ます。

患者を安心させたいという思いがあれば、自然と物腰はやわらかくなり、専門用語を多用せず、患者とって分かりやすい言葉で話すようになります。患者の思いを理解したいと思うので、患者の話を良く聞き共感します。そして、治療計画や費用について適格な説明と提案をして、患者が納得するまで話し合う事ができます。治療中も、何か苦痛な事は無いか自然と気遣う事ができ、治療において苦痛を伴う可能性があれば、事前にしっかり説明する事ができます。そして、治療後も適切な声掛けをして、次回の治療内容の説明や、何か不安な点や気づいた点が無いか確認する事ができます。

患者に対して以上のような対応をしていけば、何か特別な事をしなくても自然な信頼関係が生まれ、結果的に両者にとって最善の治療に繋がることでしょう。限られた時間でそこまでのコミュニケーションが取れない場合もありますが、少しの気遣いが心に残る場合もあります。時間をかければいいというものでもないのです。また、担当の歯科医師一人が全てを賄うのではなく、周りのスタッフとも意識を共有し、同じように対応していく事が大切になります。

歯科医師と患者の関係がアンバランスだと、結果的に患者の歯科医院離れが起き、最悪の場合モンスターペイシェントを作ってしまう事もあります。それを防ぐには、人と人とのつながりを大切にし、思いやりがあるコミュニケーションを取る事が必要不可欠です。徹底的な患者目線のプロフェッショナリズムを持つ事で、患者、スタッフ、そして歯科医師自身にも、多くの喜びが生まれる治療を行う事が出来るのではないでしょうか。


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