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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

治療内容を指定されたらどうする?歯科医師が考えるべき患者の権利と責任について

患者が医師の治療に応じない、患者から治療内容を指定されるといったケースは、歯科の現場でもしばしば見られます。例えば、むし歯は治してもらいたいけれど、麻酔は使いたくない等、内容はさまざまです。
歯科医師として、患者の希望を理解し、希望に沿った治療を行う事は大切ですが、治療が患者にとって不利益な結果をもたらすのは本末転倒と言えます。
患者からの協力を得られない場合の対応や、患者の権利と責任について考えてみましょう。

患者からの協力が得られない原因について

患者からの協力が得られない原因について

協力とは、ある目的に向かって力を合わせる事柄を指します。しかし、患者から治療内容等について拒否されると、患者が「非協力的」であると感じることがあります。このような場合、まずはその原因を探り、その上で解決策を考える必要があります。

■患者が正しい情報を理解していない
インターネットの普及により、患者は歯科医院を訪れる前に、治療に関する様々な情報を得て来院していることがあります。しかし、その中には信憑性に欠けるものや、誤った情報も多々あります。

■患者が歯科の治療に対して誤解や不信を抱いている
患者が過去の治療で嫌な経験をしている等、歯科医院に対してマイナスのイメージを持っている場合があります。

■患者が個人的に問題や緊張を抱えている
患者が仕事や経済的問題など個人的な問題を抱え、対処できずに苦しんでいる場合、治療に対して非協力的に見える事があります。

■患者のパーソナリティによるもの
ルールを無視するなどの言動が目立ち、他の患者に迷惑をかけるような行動を繰り返すなど、患者のパーソナリティが原因で、治療に非協力的に見える事があります。

■歯科従事者自身の価値観
歯科従事者の行動や考え方から、患者の協力を得られない場合があります。治療の遂行に重きを置くことで、患者の気持ちに上手く寄り添えず、患者の価値観が理解できないことで、患者の言動に疑念をもって関わってしまう事があります。


協力が得られない患者への対応

患者が治療に非協力的である原因を把握した後、具体的にどのような対応をしたらよいのでしょうか。

■しっかりとしたインフォームドコンセントを行う
現在の状況、原因、考えられる治療法と、それぞれのメリットとデメリット、そし治療後の予想はどうなのかということを詳しく説明します。さらに、患者が歯科医療や歯科医院の仕組みを理解しているかなど、治療を受ける準備を整えてあげる事も大切です。
その上で、患者が最良の判断を下せるように導きます。

■できる範囲で患者の希望に寄り添う努力をする 
患者の治療拒否の原因が、歯科医院に対する不信感によるものならば、まずは患者の緊張を緩和する必要があります。
治療前に十分なカウンセリングを行い、治療中もなるべくリラックスして治療が受けられるように、歯科医院全体の環境を整える事も大切です。

■場合によっては家族の協力を求める
本人との話し合いだけでは難しい場合、患者の家族にも説明し、説得にあたってもらう方法もあります。治療の中止等、大切な事柄を決める場合には、本人だけでなく家族の同意も得ておくことがベストです。

■患者に対応する者が一人で抱え込まない
担当する歯科医師や、歯科衛生士等が一人で抱え込まないよう、スタッフ全員の協力が必要不可欠となります。歯科医院全体の問題として対応を考える事が、患者との関係改善の近道となります。


患者の権利とは

患者の権利とは

患者の権利宣言とは、1981年にポルトガルのリスボンで行われた、世界医師会総会にて採択された「患者の権利に関する世界医師会リスボン宣言」(その後1995年・2005年に修正)のことを指します。
この宣言は、臨床の現場で起こる倫理的問題について検討する際の指針のひとつとなっており、医療従事者が守るべき「患者の権利」について具体的に明記されています。

■良質な治療を受ける権利
全ての人は差別されることなく、優れた医師から良質な治療を受ける権利があります。

■選択の自由の権利
病院や医師等を患者は自由に選択・変更できる権利があります。また、他の医師に相談することも、意見を求めることもできる権利があります。

■自己決定の権利
病状についての十分な説明を受けられる権利、自分で治療方針を決める権利があります。また、自己決定が出来ない患者については、代理人と相談して治療方針を決めることができます。

■健康教育を受ける権利
疾病の早期発見や、予防方法など口腔内の健康について、丁寧な説明と情報提供を受ける権利があります。

■プライバシーが守られる権利
患者は自分の医療情報を知りうる人を選択でき、全ての診療記録情報について開示を受ける権利があります。そして、全ての個人情報は適正に取り扱われ、それを保護、管理される権利があります。

■人間としての尊厳を得る権利
宗教的、文化的な価値観が尊重され、苦痛の除去を受けられる権利があります。

■患者の意思に反する治療
法が許容し倫理原則に合致する場合で、かつ患者にとって有益となる場合は、例外的に患者の意思に反する医療を行うことができます。

上記した通り、患者の意志に反する治療は例外的に認められていますが、基本的に、患者は希望しない治療を拒否する権利を持っています。そして、歯科医療従事者は全ての患者に与えられた権利を十分に理解し、それを守っていく責任があります。


患者の責任とは

歯科医院側は患者の権利を守る責任がありますが、その責任を全うするには、患者からの協力が必須であり、それは患者の責任となります。
患者の責任とは、具体的にどのような事なのでしょうか。

 
■治療内容、院内システムへの理解
歯科医院独自のシステムや治療内容を理解する責任があります。

■院内秩序維持への協力
全ての患者が快適な環境で適切な診療を受けられるように、他の患者への迷惑にならないように努める責任があります。

■正確な情報提供
適切な治療が行われるために、自己の健康に関する情報を正確に提供する責任があります。

■自己判断と明確な意思表示
治療開始前やその過程において、治療内容等への変更を希望する場合は、速やかに歯科医院側にその意向を伝え、最終的な治療内容は自己決定する責任があります。

■治療や指導に協力する
適切な治療が行われ、良好な状態が継続するように、治療への協力とホームケア等の情報提供を受け、それを実践する責任があります。

歯科医院は、患者の権利を守り、患者の口腔内の健康を改善し持続させる責任を担っています。そして患者は、自己の権利を守る為に果たさなければならない責任があります。最高の治療とは、歯科医院と患者の相互理解の上に成り立っているという事が言えるでしょう。
その為には、丁寧なインフォームドコンセントを行い、治療の前には承諾書や同意書などを交わし、相互理解を形として残しておく事も重要です。
お互いが良きパートナーとして治療に臨める様に、歯科医院全体が一丸となって一人ひとりの患者に向き合う努力をしていきましょう。


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