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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

キャンセルを減らすためにできる歯科従事者ができる声かけとは

歯科医院を開業している歯科医にとって、患者が次の予約を守って来院することは経営上、もとより患者の口腔内の健康状態を保つ上でも重要です。そうした医師の意向があるにも関わらず、予約をキャンセル、もしくは治療を中断してしまう患者は一体どれくらいいるのでしょうか?歯科従事者としてはそれを防ぐために何ができるでしょうか?

患者のキャンセル率とキャンセルが及ぼす影響

患者のキャンセル率とキャンセルが及ぼす影響

一般的な歯科医院のキャンセル率は、連絡有無の双方を含めて13~15%、その内の約半分は無断キャンセルです。しかし歯科医院の中には、キャンセル率が5%未満のところもあります。歯科医院のキャンセル率は歯科医院によって差があるのです。1日3件キャンセルや予約変更が発生すると、歯科医院には月に約33万円、年間にすると396万円の損害が及ぶとも言われています。もちろん歯科医師として行いたい治療も進められません。例えば印象から次回セットの間に患者が来なくなってしまうことがその例です。セット予約と補綴物の出来上がり日を合わせても、患者が来院してこなければ未セットの補綴物は損失になります。補綴物が入らないまま放置すれば歯牙の状態がさらに悪化することも、さらにキャビトン仮封や仮歯の耐久性は低く脱離してしまうことも、歯科医師なら周知のとおりです。


キャンセルの理由は患者よりもむしろ歯科医院にある

もちろん予約を守らない、マナーの無い患者もいますし、患者サイドのやむを得ない状況により予約がキャンセルされてしまうこともあります。病気、仕事、悪天候などの事前に予期できなかった事柄により来院できなくなってしまうのです。しかしこれらの他に、主に歯科医院全体に起因している理由により予約をキャンセルする患者の方が実は多いです。キャンセルや治療中断する患者を、実際は歯科医院の方が集めてしまっているので、本来の意図にそぐわないのです。

キャンセルを減らすための具体的な対策

キャンセルを減らすための具体的な対策

患者と歯科医師、さらに歯科医院との間に信頼できる関係を構築していくことが、キャンセル率の低下につながっていきます。直接患者に触れる歯科医師や歯科衛生士はもちろんのこと、助手や受付などすべてのスタッフがどう患者に接するか、あらかじめ対策を練っておく必要があります。患者は新規初診から歯科医院を観察し、今後も来院するにふさわしいかどうかを見定めていきます。

■治療の動機を説明する
これは主に歯科医師がカウンセリング時に注意すべき対策です。説明する前にまず患者の主訴を含め、よく話を聞いて治療に対する希望などを理解するようにします。そうしてから治療の動機を患者に伝えていきます。治療の動機づけがしっかりされている事は、患者のモチベーションアップにつながります。患者にとっては痛みや腫れなどの症状がなくなってしまえば、もしくは脱離が治ればもう治療する必要はありません。
ですがそれでは歯科従事者としてのこちらが困ります。このさき治療対象歯をどう治療していくのか、対象歯の予後、また口腔内に及ぼす影響など、広い範囲に至るまで説明するべきです。さらに、歯科治療を提供する歯科医院が、一人の患者の治療を準備するためにどんなことを行っているのかも説明することができます。説明のしかたは患者にとって押しつけがましいと感じないような、こちらの真摯な態度が伝わるような方法ですべきです。患者が次の予約を取る時、歯科医院がこの日のこの時間は自分のために時間配分し、手間暇かけて準備して待ってくれている、と感じるなら必ず来院してくるでしょう。

■治療中の声掛けも忘れない
幼い子どもだけに限らず、すべての患者にとって自分の歯を治療されることは緊張するものです。歯科従事者にとっては毎日のように見慣れている治療内容でも、その都度のこまめな患者への声掛けが求められます。「何かあったら手をあげてください」「痛くないですか?」など問いかけることによって、治療中にも意思表示できるのだと患者に分かってもらうと、患者は安心します。
新しい歯科医師はよく、治療が始まり口腔内を見ることに夢中になってしまうと、患者の異変に気付くことに遅くなりがちです。ですが決して先生が怖い、またやり方が雑だと患者に思われてはいけません。診療補助にあたるスタッフも含め、よく声掛けをして、スタッフが患者を大切に扱っていることが伝わるなら、治療に対する信頼、スタッフに対する信頼も向上していくことでしょう。

■気遣いの言葉をかける
5分程度の少しの遅刻をした時でも、こちらが患者の身を心配していたことを示せます。遅れてしまってまずいと思っているかもしれない患者に、入ってきた時に「何かあったのかと思いました!」とひと言かけるだけでも、患者は安心します。また天気の話をしてみて、「今日は雨が降っていますけど、来る途中は大丈夫でしたか?」と声をかけることもできます。雨や雪が降っていたら外に出たくないだろうに、今日も予約どおりに来てくれてうれしいと思っていることが伝えられるでしょう。この歯科医院は患者に親切に接してくれると思うと、患者の歯科医院に対する信頼度も向上します。

■予約のポリシーを伝える
予約は他の患者もみんなすることなのだ、と次回の予約を取る時にひと言伝えることができます。「きちんと時間を守って来ていただくようお願いしています。」「他の患者様にもお願いしていることですので、ご協力ください。」と言ってこちらのポリシーを表せます。歯科医療はホスピタリティを提供する一種のサービス業でもあります。提供する歯科医院側と、受ける患者側という立場をはっきりさせた上で歯科に対する同等の意識を持ってもらうなら、患者の予約を守ろうとする意識を高めていくことができます。

キャンセルを減らすためにはこれらの対策を総合的に取り入れていき、長期的に患者の一人一人に向き合うことが大切になっていきます。治療のレベルを上げても患者のリピート率が増加するとは限りません。積極的にコミュニケーションを取り、患者に寄り添った形で歯科従事者として接することができるなら、患者の意識を少しずつ変化させて、信頼を得ることにつながります。いちど信頼関係が築かれた歯科医院となら、患者は今後もずっと治療してもらいたいと思うはずです。


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