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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

働く女性歯科医の妊娠・出産|復職までの道のり

女性にとって妊娠、出産は人生最大のイベントです。幸せを感じる反面で、女性歯科医師の仕事との両立が可能なのかと不安になる方も多いのではないでしょうか。

妊娠、出産、そして子育ての時期は、様々な場面で周りのサポートが必要不可欠となります。女性歯科医師が妊娠し、出産後も安心して働く事ができるように、知っておきたい制度や復職支援などについてまとめました。

妊娠した事が分かったら

妊娠した事が分かったら

妊娠が分かって出産予定日が確定したら、早めに職場へ報告しましょう。その際に、出産後は退職するのか、育児休暇の後に復職を希望するのかを伝え、しっかりとした話し合いの場を持つ必要があります。

男女雇用機会均等法では、「母性健康管理の措置」として、また、労働基準法では「母性保護規定」として、働く女性を守るため様々な制度が定められています。これらは、就業規則に記載されていない場合でも申し出る事ができます。

■妊婦検診を受ける時間を確保する
妊娠すると胎児の成長と母体の健康を守る為に、定期的な妊婦検診を受ける必要があります。休日を利用して検診を受ける場合もありますが、産婦人科の診療日と休日が合わない等の理由により、勤務時間中に検診を受けなければならない事もあります。男女雇用均等法(法第12条)において、妊婦検診を受ける時間を確保する事が事業主に義務付けられているので、申請の上で勤務時間中に妊婦検診を受ける事ができます。

■通勤の緩和を指導された場合
妊娠すると個人差はありますが、体調の急激な変化が見られます。人によっては悪阻がひどく、普通の生活を送る事も難しくなる場合もあります。妊婦にとって通勤の混雑は大きな負担になる事が多く、勤務時間なども個々の体調に合わせて調整する必要が出てきます。
男女雇用機会均等法(法第13条)において、事業主が妊婦検診により指導された内容を守るための措置をとる事が義務づけられています。妊婦検診の際に、主治医より指導を受けた場合は、時差通勤や勤務時間の短縮、休憩の時間や回数などを事業主に申し出て、必要な対応をとってもらう事ができます。

■負担の大きい業務を担当している場合
労働基準法(第65条第3項関係)において、妊婦中に負担となる業務は負担の少ない他の業務に転換することができます。具体的に負担が大きい作業としては、常に全身運動を伴う作業や、10㎏以上の重量物を取り扱う作業、腹部を圧迫する姿勢を必要とする作業、連続的な歩行を必要とする作業などが挙げられています。

■母性健康管理指導事項連絡カードとは
妊婦検診にて指導を受けた内容を職場に正しく伝える為に、「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用する事が効果的です。主治医からの指導事項が記入されているこのカードを職場に提出すると、事業主はカードの指導内容に必要な対応をとる必要が出てきます。自分では伝えにくい内容や、状況を正しく伝える事ができるので、仕事をする妊婦にとって強い味方となります。


無事に出産を終えたら

産後の体は自分で思っている以上にダメージを受けており、この時期に無理をすると後々の体調に影響が出てくるとも言われています。復職後、健康に仕事と子育ての両立ができるように、体調を戻す為の休息と、育児に慣れる期間が必要になります。

■出産前後の休業
労働基準法(第65条第1項、第2項)によると、出産前は申請の上で6週間、多胎妊娠の場合は14週間休業する事ができます。出産後は8週間休業する事が義務付けられていますが、産後6週間後であれば本人が請求し、医師の許可があれば復職する事ができます。
出産予定日が延びて、出産前の休業期間が6週間を超えた場合でも、その期間は産前休業期間として認められます。そして、出産後の8週間の休業も実際に出産した日より確保されるので心配はいりません。

■育児休業を希望する場合
育児・介護休業法(第5条~第9条)によると、1歳に満たない子どもを養育している場合は、男女を問わず子どもを養育するために休業する事ができます。また、育児休業は正社員だけでなく一定の条件を満たしていれば取得する事ができます。

手続きとしては、職場の規定を確認の上、余裕をもって1か月以上前までに申請書を提出する必要がありますが、職場で規定が無い場合でも、育児・介護休業法により請求をする事ができます。
休業の回数と期間は、原則として子ども1人につき1回、子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの間で、希望した期間休業する事ができます。

なお、保育所等の入所が困難な場合や、子どもの養育を行う配偶者が死亡等によって養育する事が困難となった場合は、1歳6か月になるまで育児休業を延長する事ができます。

■妊娠・出産等が理由で不利益な扱いを受けてしまったら
男女雇用機会均等法(第9条)において、事業主は母性健康管理措置や、母性保護措置を受けたこと等を理由に、対象の女性に解雇や不利益な扱いをしてはならないと定められています。不利益な取り扱いとしては、降格や減給、自宅待機を命ずる、労働契約内容を一方的に変更する等が具体例として挙げられます。

また、男女雇用機会均等法(第15条~第27条)において、母性健康管理の措置が取られず、事業主との間にトラブルとなってしまった場合は、紛争解決援助を申し出る事ができます。


復職を迎えたら

復職を迎えたら

出産後の体調も完全に回復し、子育てのリズムも整った頃、いよいよ復職の時を迎えます。けして無理をせず、自分のペースで仕事と子育ての両立を考えていきましょう。

■復職支援について
厚生労働省では、復職を支援する為の様々な情報を発信している「仕事と育児カムバック支援サイト」を開設しています。

また、子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)として、子育て中の母親などが会員となり、子どもを預かる人、預けたい人がお互いに援助できるシステムを利用する事ができます。

新たな職場を探す場合は、無料の紹介、仲介業務を行うドクターバンクを設置している歯科医師会もあります。また、訪問歯科への復職支援として、医療法人グループによるブランクのある歯科医師を対象とした研修プログラムが開催されています。

■子育てしながら働くために
育児・介護休業法において、働きながら3歳に満たない子どもを育てている場合に、短時間勤務(第23条)や、残業の免除(第16条の8)が認められます。さらに、小学校入学前の子どもを育てている場合、時間外労働の制限(第17条)や、深夜業の制限(第19条)、子どもの看病や予防注射、健康診断に同行する為の看護休暇の取得(第16条の2、第16条の3)が認められています。


まとめ

妊娠し、出産、子育てをしながら、女性歯科医師として働くのは簡単な事ではありませんが、働く女性を守り、助ける為の様々な制度が定められています。

これらの制度を上手に利用するには、職場とのコミュニケーションを密にとり、お互いに制度についての認識と理解を深める必要があります。自分らしい働き方ができるように、そして、周りも気持ちよく働くことができるように、女性歯科医師としてのキャリアを築いていきたいですね。


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