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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

女性歯科医の働き方|現状の課題とよりよい環境づくりのためにできること

年々女性歯科医師は増加傾向にあり、患者様からのニーズも多いながら、結婚・出産・育児・介護といったさまざまなライフイベントのなかで、どのようにキャリア形成をめざしていくかという課題があります。女性歯科医師が継続して働くための環境づくりを考えていきます。

歯科医療における女性歯科医師の重要性

歯科医療における女性歯科医師の重要性

平成22年度医師・歯科医師・薬剤師調査によると、全国の女性歯科医師は、全体の約20%を占めており、この10年間で女性歯科医師の増加率は約4%。29歳以下の年齢層での女性比率は約40%と半数近くを占めており、今後の歯科医療を支える重要な担い手です。また、組織における多様性の観点や女性歯科医師を希望する患者様も多いことからも、女性歯科医師が継続的に勤務できる体系を整えることは、より充実した歯科医療を提供していく上でも重要です。

ダイバーシティ・マネジメント

ダイバーシティ・マネジメント

社会全体における働く女性の活躍において、近年ダイバーシティがキーワードとして取り上げられています。一般的に、ダイバーシティ(Diversity)は「多様性」と訳されていますが、「Diversity & Inclusion」を省略したもので、本来は「多様性の受容」を意味しています。

言うまでもなく、人間は人種や性別、年齢、身体障害の有無などの外見的な違いだけでなく、宗教や価値観、社会的背景、生き方、考え方、性格、態度、嗜好など、内面などすべてが異なります。

ダイバーシティとは、個々の「違い」を受け入れ、認め、活かしていくことです。各自の個性を活かした能力を発揮できる風土を醸成していくことが求められるのです。個人のみならず、組織にとっても多様性の受容は大きなプラスになる、という考え方がベースにあります。社会全体の流れを受けても、女性歯科医師が活躍できる場を整えていくことは必須であることが分かります。

女性歯科医師の現状

女性歯科医師の現状

女性歯科医師の総数は、約2万2千人であり、その約半数以上が診療所で雇用されています。平成14年から平成24年にかけて、診療所で雇用されている女性歯科医師は、約1.5倍になっています。女性歯科医師は診療所の勤務者が全体の57%を占めています。

教育・研究・治療経験を生かし、働き続けるには、出産、育児など家庭と仕事を両立できるような勤務環境の整備が重要な課題です。女性歯科医師の活躍には大きく3つの壁があります。

能力・スキルの壁、意志・意欲の壁、周囲・環境の壁です。未婚・結婚・出産・育児・介護など取り巻く環境やライフステージが変化する中で、女性歯科医師自身のスキルアップ、働く意欲だけでなく、周囲のサポートも視野にいれなくてはなりません。様々な角度から女性活躍推進を捉え、包括的、相互補完的に施策を展開していく必要があります。

女性歯科医師の働き方やキャリアパス

女性歯科医師の働き方やキャリアパス

女性歯科医師が継続して働いていくためには、ライフイベントに合わせた様々な働き方、働く場所など、柔軟に勤務形態を認めるという業界全体の考え方が必要です。また、育休などに対する配慮に関しては、医科の場合、専門医の更新、職員のノルマの設定などの際みられるのに対し、歯科の学会や大学ではまだみられず、適切な配慮が望まれます。近年は、高齢化にともない、離職するケースの中に介護の負担によるものも報告されています。介護との両立支援を促すよう、業務量を減らすなどの環境整備が期待されます。

介護の他、妊娠・出産などによる離職するケースが想定される女性歯科医師は、キャリアアップのために最適な時期に継続して就労が行えるような両立支援が重要です。女性歯科医師が活躍するためには、歯科診療所においても、産休・育休などの取得促進がかかせません。

女性歯科医師の働き方としては、歯科医院の院長になる、あるいは歯科医院に勤務するという選択肢がほとんどです。大学などでは、若年歯科医師の有給常勤ポストが少ない現状があります。女性歯科医師がより多くの将来像を描けるよう、大学教育や臨床研修では、歯科医学教育に加え、企業、研究機関、行政などの見学研修や外部講師による講演などが積極的に実施されることが期待されます。

女性歯科医師が活躍するための支援の在り方

女性歯科医師が活躍するための支援の在り方

小規模事業所である歯科診療所において、女性が働きやすい環境・仕組みを作るのは難しいとの意見もあります。ですが、インターネット、新聞などを通じて良い事例などの情報を発信し、共有することは各医療機関での取組のきっかけになると考えられます。また、歯科医師会、学会などと関わりを持ち続けることにより、歯科医療に対するモチベーションアップだけでなく、歯科医師としての働き方の情報を得ることができます。歯科医師の就職活動は、同窓や知人の紹介などが多い現状ですが、今後は行政や企業の職業あっせん所などを活用して開かれた求人情報の充実をはかることも視野にいれていく必要があります。

子育てが一段落し、いざ復職しようにも経験が浅いことから働く自信や意欲をもてない女性歯科医師は少なくありません。臨床経験の浅い女性歯科医師の復職には、技術研修が重要であり、スキルアップラボなどを活用し、そうした支援の充実が望まれます。復職の際には、歯科保健医療などの情報を得る手段としてe-ラーニングを活用し、研修などの促進が期待されます。

女性歯科医師に期待される活躍の場については、行政などで行われている歯科保健教育、歯科健診、親子教室などで育児中の女性歯科医師などを活用するなど、新たな取組も期待されます。他にも、歯科麻酔などの非常勤勤務に対するニーズの高い領域、小児歯科や歯科訪問診療などの女性歯科医師へのニーズの高い領域での復帰が期待されています。社会的なニーズや勤務形態などを考えると、臨床経験を積んだ女性歯科医師にとって歯科訪問診療における活躍が期待されますが、歯科訪問診療にかかる研修の充実が今後の課題になるでしょう。

2007年4月から改正された男女雇用機会均等法では性別による差別禁止の拡大・妊娠・出産を理由とする不利益扱いの禁止・妊婦の時差出勤・休息回数の増加・勤務時間の短縮などの措置を講ずることが義務化されました。しかし、現実の勤務歯科医師はシフトの関係から休暇取得不足を余儀なくされている現状があるのも事実です。女性歯科医師の増加・勤務歯科医師の過重労働という実態に対し、男性女性かかわりなく個性と能力を発揮できる環境を整えていくよう、歯科医療界全体の挑戦が求められています。

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