ラバーダム導入だけじゃない!根管治療で歯科医が求められる最低限のこと
根管治療における成功率は、使用する器具や道具、機材によって大きく異なることが分かっています。歯根破折や根尖病変など、処置後のトラブルは患者様の信頼や信用を失うきっかけにも繋がりかねません。
今回は、根管治療後に起こり得るトラブルを回避するために歯科医院でおこなうべきことをまとめました。是非参考にして頂ければと思います。
日本の歯科治療レベル
アメリカやイギリス、フランス、カナダなどの先進国に比べ、日本の歯科治療レベルは大変低いとされています。
その原因は、健康保険制度の存在が強く関係しており、限られた保険内では、高度な技術や質の高い治療を実践するのが難しくなります。
また、健康保険制度があることで患者様の歯に対する意識が低い傾向にあり、再治療を繰り返しおこなう日本は虫歯の多い国として常に上位です。それを改善するには、質の高い治療の価値を患者様自身に理解してもらう他ありません。
■質の高い治療をおこなうためには
処置後のトラブルが多いとされる根管治療では“治療の精密さ”が重要視されますが、実践するにはそれ相応の費用と時間、もちろん技術も必要不可欠となります。そのため、保険内ではなく自費診療でおこなう歯科医院がほとんどです。
歯科に対する意識が高い患者様の場合、良い治療を求めて情報収集を怠りません。HP等で取り扱う器具や道具等を確認した後に治療場所を決めるという方は大変多く、「保険内ではこの治療を受けたくない」と考える方も少なくありません。
処置後のトラブルは、歯科医院の評価を大きく左右するものとなりますので、質・技術共に高い治療を実現できる環境づくりを心がけて頂ければと思います。
根管治療の成功率を上げる器具・機材
自費診療を中心とした歯科医院で実際に使用されている、質の高い根管治療を実現するために有効な器具や機材等をご紹介します。
■三次元CTスキャン
歯の内部を立体的に撮影し、根っこの長さ、太さ、奥行き等を正確に把握できる三次元CTスキャンは、根管治療をより精密なものにします。
可視化が可能なため、根尖病変の早期発見、早期治療にも繋がります。
■ラバーダム
唾液の混入防止を目的としたラバーダムは、根管治療をする上で欠かせない道具の一つといえます。
しかし、「請求できる保険点数よりもラバーダムシート1枚にかかるコストの方が高い」「セットまでに時間がかかる」という難点があります。これらの理由から、保険内でおこなう根管治療で実践するケースはほとんどありません。
また、ラバーダムをセットするだけでは効果は不十分とされており、感染防止にはセット後の消毒(オキシドールやヨード)が必要となります。
■マイクロスコープ
目視では確認できない根管内の小さなヒビや、感染物質や汚物の取り残し等を正確に調べられるマイクロスコープ。近年は導入している歯科医院も増えたため、患者様の認知度も高い傾向にあります。
通常の8~12倍の拡大率で治療がおこなえ、アメリカでは1990年にはすでに普及が始まっていました。
マイクロスコープの処置中の映像を録画できる機能は、処置後の説明をより分かりやすくする効果があるため大変便利であり、患者様からの評価も高いといえます。
■ニッケルチタンファイル
高い柔軟性をもったニッケルチタンファイルは、複雑な根管内でも湾曲して根尖部まで行き届くことから、従来のステンレスファイルに比べ、成功率を大幅に上げるとされています。
しかし、ニッケルチタンファイルの導入率は、アメリカがほぼ100%であるのに対し日本は20%といわれています。初期投資や維持費に高いコストがかかることが理由としてあげられます。
また、ステンレスファイルに比べて折れやすく、使用期間が短いという欠点があります。
■EDTA・次亜塩素酸ナトリウム
根管内に残る削りカスを溶かす効果のあるEDTAや次亜塩素酸ナトリウムは、保険内で使用している歯科医院は少ないものです。実際は、削りカスを残したまま根管充填をおこなうケースがほとんどです。
削りカスにも細菌は存在するため、削りカスを残した治療は、除去した治療に比べて根尖病変を引き起こしやすくなります。
■MTAセメント
根管充填時に使用するセメントとして、とろみがあり隅々まで行き届きやすいMTAセメントが良いとされています。
アメリカでは、評価が高く一般的に使用されるMTAセメントですが、日本の健康保険制度では適用されないため、自費診療のみで使用されます。
殺菌効果や歯の組織の再生を促す効果もあるため、根尖病変の発生率を下げることができます。
■ファイバーポスト
金属のポストに比べて柔軟性のあるファイバーポストは、歯根破折のリスクが軽減できます。GC社製のファイバーポストが保険治療に認可されたことで認知度が急激に高くなり、今では多くの歯科医院で使用されています。
歯根破折はそのほとんどが抜歯となるため、使用するポストにも注意しなくてはなりません。
細かな説明と納得のいく結果が大切
患者様の信頼を得るには、検査から診断、治療後、更にはその後のメンテナンスまでの細かな説明をおこなう必要があります。
治療がいくら質の高いものであっても、説明が不足していると治療後を受けた達成感が得られずに、結果虫歯の再発や個人でおこなうお手入れに不足があらわれます。
また、患者様にとって歯科治療は直接見えるものではないため、費用が高ければそれだけ不満も残りやすく、ネット上の口コミでクレームとして説明不足が目立つのはそのためです。
質の高い治療をおこなうには毎回説明が必要不可欠であり、高い費用と時間を使った後に得られる達成感が、今後の患者様自身の予防歯科へと繋がるといえます。
まとめ
海外では当然のようにおこなわれている精密治療ですが、日本では実践することは難しいのが現状です。しかし、実際におこなっている歯科医院は存在し、自費診療であっても患者数は多い傾向にあります。
高い成功率をうみだすには、数%の低い数字をいくつも積み重ねることが必要であり、それらが今回ご紹介した器具や機材等になります。
導入後のHPを使ってのアピール、そして患者様への細かな説明を意識することで、歯科医院の評価は大きく変わり、結果として新規の患者誘導に繋がることでしょう。