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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

開業歯科医も軽視できない労務管理の勉強の必要性

開業歯科医の場合、トップになるのは自動的に歯科医師(院長)です。管理者としてスタッフの労務管理も行わなければなりませんが、専門家ではありませんので管理体制が弱いと思われます。そこで、所属するスタッフが快適に働ける環境づくりのため、基本的な労働法についての勉強も必要ではないでしょうか。

歯科医院が労務管理体制に弱い理由

歯科医院が労務管理体制に弱い理由

■経営者の知識不足
一般的な開業医の歯科医院において、事業主は院長である「歯科医師」です。経営から診療までこなさなくてはなりません。患者のための医療技術の習得に時間をとられ、労務管理の勉強まで手が回らないという実情があるでしょう。

■専門職の混在や労働時間の管理が複雑
歯科医院は「歯科医師」「歯科衛生士」「歯科助手」「受付」「歯科技工士」等で構成されています。職種によって処遇や条件が異なり、それぞれ管理が必要になります。またシフト制を敷いていたり、急患が入る・残業があるなど複雑な時間管理が必要になります。

■スタッフの経営に対する意識が乏しい
民間企業のように、社員が経営にも関わるのとは違い、スタッフは診療第一で経営(儲け)を考えることはあまりありません。しかし歯科医院も経営難ではスタッフに給与が払えません。経営のことも考えながら診察の指示を出す院長と、経営は考えずに提案するスタッフとの意識の差がトラブルになることもあります。

労務管理体制ができていないことで起こるトラブル

労務管理体制ができていないことで起こるトラブル

■トラブルの原因が経営者側にある場合
まず採用時に、きちんと採用基準を設けているでしょうか。しっかりと見極めず採用すると、あとから「医院の雰囲気にはそぐわない」ということも起こり得ます。また就業規則や管理体制を構築していない場合、スタッフの仕事ぶりがルーズになったことでのトラブルなども起こる可能性があります。

■トラブルの原因がスタッフ側にある場合
たとえば医療従事者にそぐわない人材を採用してしまったとします。独善的な意見を言ったり、だらしない性格、仕事の期限を守れないなどの性格的に職務に適していないことを行うことからトラブルに発展することがあります。当事者もですがスタッフの風潮も良くないことが常態化していれば人材育成も成されず、さらにトラブルが発生しやすくなります。

■トラブルを生まないために
まずは経営者側が問題を起こしそうな人材を採用しないように、採用基準をしっかりと決めておくことが大切。そして問題を生まないために、労働基準法や社会保険法を学び、就業規則を構築しておきます。また、チーム医療を浸透させるためスタッフミーティングを活用。院長自ら経営理念を浸透させ、スタッフと一緒に問題解決に参加しましょう。

歯科医院で起こり得る労務リスク

歯科医院で起こり得る労務リスク

■労働時間管理をめぐるトラブル
労働時間を適正に把握できるシステムが無く、就業規則36協定を超えた時間外労働になっていたり、時間外の労働に対して適正な残業代が支払われていないというようなことからスタッフの不満の原因となることがあります。

■退職に関するトラブル
モラルの欠けたスタッフによる無断欠席や遅刻、すぐに退職してしまうなどの事案は、業務に支障をきたすこともあります。他の職員の精神的・肉体的負担も増えることでマイナスの影響を及ぼすことになりかねません。過剰なストレスから連鎖的に退職者を出さないためにも早期に対応が必要となります。

■組織内モラルに関するトラブル
昨今、セクシャルハラスメント、パワーハラスメントなどが鳥沙汰され、「男女雇用機会均等法」にて事業者に対応が義務付けられました。これに伴い、歯科医院でも就業規則に明示するようになってきています。パワハラに関しては業務上の指導との境界線が難しいところですが、先輩スタッフの指導などをマニュアル化し、スタッフ全体で統一して共有することでトラブル回避につなげることができます。

事業主として勉強し実行すべきこと

事業主として勉強し実行すべきこと

■基本的な労働管理のことを勉強する
労働法は「労働基準法」をはじめとする「民法」「労働契約法」「職業安定法」「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」など、多様な法律を理解しておかなければなりません。日々の診療もあり大変ですが、労働管理を行うにあたりこれらの法律に順守するため、しっかり学んでおきましょう。

■「就業規則」を正しい手続きで作成
就業規則を作成あるいは変更する際には、事業者が勝手に行うことはできません。職員の過半数の意見を聴取し「意見書」を作成。就業規則届け出の際に添付することが必要です。
そして作成した就業規則は「スタッフへの周知義務」があります。

■「就業規則」を適正に運用する
就業規則が完成したら、それを適正に運用していくことが大切。就業規則に反した対応であったり、規定の表現が理解しづらいと幾通りにも解釈できてしまったりしてトラブルに発展しかねません。スタッフには、内容や目的を十分理解してもらえるように説明を怠らないようにしておきましょう。

労働基準監督署による臨検監督

■労働基準監督署による臨検監督(臨検)
開業している歯科医院は、労働基準監督官が立ち入り調査を行い、労働基準関係法令に対する違反がないか調査を行う対象。5年~10年の間に1回程度が多く、就業規則があるかどうか、割増賃金の計算方法などについての調査を受けます。法違反があった場合にはその是正を勧告され、指導が入ります。

■定期監督と申告監督の違い
臨検監督は先にご紹介したような定期的なものと、労働者からの申告によって行われるものに分かれます。定期監督の場合、厚生労働省が定める行政方針に基づいて決定された「重点指導項目」や「業種」に従って実施。申告監督の場合は、何らかの労務トラブルを抱えている労働者側からの相談により、監督官が違法性が高いと判断した場合に行われることが多く、厳しい審査となります。

■調査後の指導はより良い院内へ改善の一歩!
このような調査は、労災トラブルの予防を目的としており、よっぽどのことが無い限り通常業務の歯科医院では大きな問題になることはないでしょう。調査が入ったあとは、改善点などがあれば「指導票」が出されます。これらを参考に、今後より良い歯科医院づくりのため改善に前向きな姿勢で取り組んでいきましょう。

まとめ

一般企業では当たり前のように構築されているシステムですが、歯科医院のような規模の小さい事業所は、労務管理体制が整っていないこともあります。また、経営者である院長は歯科医師であり、日々業務に忙しくこの分野を得意としない人が多いようです。しかし、経営者としてとても重要なことであり、知っておくべきこと。ぜひ今一度歯科医院の管理体制は十分かどうか見直していくための知識を勉強されることをおすすめします。

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