一般歯科と審美歯科、目指す上で必要な資格や勉強内容は異なる?
審美歯科は、一般の歯科と何が異なるのでしょうか。
審美歯科とはそもそもどのような治療を行っているのでしょうか。
審美歯科を行うには、歯科医師免許以外の資格が必要なのでしょうか。
そのような「審美歯科にまつわる疑問」にすべてお答えします。
そもそも「審美」とは
「審美」とは「美を審査する」と書きます。「美しいものとそうでないものを見分ける」という意味です。
このように説明すると「虫歯の治療に美しいとか美しくないとかがあるの?」という疑問がわくと思いますが、歯の治療には美しさはとても重要です。
メンタルにも大きく関わる「歯の美」
虫歯の治療は金属を使うことが多いのですが、これだと歯が銀色になってしまいます。多くの奥歯に金属を詰めていると、虫歯が治っても恥ずかしくて口を開けて笑うことができなくなる人もいるのです。
容姿が悪化すると全てにおいて自信が持てなくなり、気持ちがふさいでしまいます。
歯の美しさはメンタルに大きく影響するのです。
歯科治療の技術をフル活用して美を目指す
ここで別の疑問が湧くと思います。
「美を追求するなら、歯科医がやらなくてもいいのではないか」
ところが歯の美の追求は、歯科医しか行ってはいけないのです。
なぜなら、歯に触れることは多くの危険を伴うので、美を追い求める審美歯科であっても、知識と経験と歯科医師免許という国家資格を持った人でないと行うことができないのです。
審美歯科の施術は、歯科医の技術をフル活用することで目的を達成できますし、歯科医以外の者は携わることができない領域なのです。
医療保険は使えるのか
審美歯科の施術の1つに、奥歯の虫歯の治療でセラミックスを使う治療があります。セラミックスの利点は、色を自由に調整できることです。元の歯の色とまったく同じ色のセラミックを詰めるので、治療した後にまったく違和感がなくなるのです。
セラミックを詰める治療のことを「セラミッククラウン」ですとか「セラミックインレー」といいます。
この治療は医療保険を使うことができません。
医療保険が使えるかどうかは、厚生労働省が決めます。医療保険を使わない診療形態を自由診療といい、自由診療の治療費は100%患者の自己負担になります。
審美歯科の施術のメニュー
セラミッククラウン以外にも審美歯科の施術メニューはたくさんあります。例えが次のような治療があります。
<ラミネートベニア>
歯の表面を薄く削って、セラミックのカバーを装着する「ラミネートべニア」という治療は、歯を白く見せることができます。またカバーの大きさを装着する歯より若干大きくすることで、「隙っ歯(すきっぱ)」を解消することができます。
「キレイなモノで被せる」という発想は、ネイルアートの付け爪と似たような発想です。
<セラミックボンディング>
欠けた歯の治療にセラミックを使うセラミックボンディングも審美歯科メニューです。欠けた歯に補強材を盛って再生する治療ですが、セラミックを使うと欠けている歯とまったく同じ色にできるので、「修復の跡」がほとんど分からなくなります。
審美歯科は儲かる?
自由診療の治療費は、歯科医や歯科クリニックが自由に設定できます。歯科医師が「他の審美歯科より上手に施術できるので、高い料金をいただきたい」と考えれば、高いお金ももらっても問題ありません。
あまり大きな声では言えないのですが、「審美歯科は儲かります」。
審美歯科を行うために必要な資格とは
歯科医師免許を持った歯科医であれば、誰でも審美歯科を始めることができます。
ただ、審美歯科の治療を受ける患者の心理を想像してみてください。昨日まで一般歯科の治療をしていた歯科医師が、今日から審美歯科を始めたとしても「受けたい」とは思えませんよね。
やはり「審美歯科の経験を多く積んでいる歯科医」に審美歯科治療をしてもらいたいです。
「この医師は審美歯科の技術を持っています」という認証制度があります。
学会認定の歯科医師とは
審美歯科を専門に行っている歯科医たちが「一般社団法人日本歯科審美学会」という団体をつくり「認定医」を認定する制度を行っています。
日本歯科審美学会から審美歯科の知識と経験が認められた歯科医師は、「審美歯科の認定医」を名乗ることができるのです。
審美歯科を目指す歯科医師なら、この認定医資格はほしいところです。
また審美歯科を受ける患者は、認定医の資格を持つ歯科医を探したほうが無難でしょう。
審美歯科を目指す歯学部生は何を学ぶのか
審美歯科を目指す歯学部生でも、まずは一般歯科の知識と技術を身に付ける必要があります。学生時代は、まずは虫歯の治療の勉強に集中したほうがいいでしょう。
審美歯科は儲かる一方で患者の要求水準がかなり高いので、テクニックを磨いたり最新治療の情報を集めたりする必要があるでしょう。
また、審美歯科の患者の多くは富裕層なので、歯科医にも接遇スキルが求められます。
美的センスも必要になります。
まとめにかえて~機能性も備わった美しさが理想
「機能美」という言葉があります。これは機能をとことん追求した製品は、自然に美しくなっていくという意味です。
審美歯科治療も機能美に近いところがあります。審美歯科は、一見すると美だけを追求しているように映るのですが、実はより丁寧な治療が行われているのです。
保険診療による一般歯科治療は、治療費が固定されているので、どうしても歯科医はコストを考えなければなりません。
しかし審美歯科は自由診療ですので、患者が納得すればいくらでも高い料金を設定できます。歯科医はコストを気にせず「最良の治療」を追求できるというわけです。