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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科で役立つ心理学の知識とは?患者のケアで安らげる医院作り

汚れている、見た目が不快だといったように、生理的に受け付けないものに対して生じる嫌悪感のことを【生理的嫌悪】とよびます。生理的嫌悪は本能から発するものだけでなく、社会規範や経験が生じさせるものもあり、人は本能的に、苦手意識のある人、嫌悪感を抱かせる対象から距離を取ろうとするものです。
一般的に、歯医者さんを苦手だと思う人はとても多いので、身なりではあえて「歯医者さんっぽくない」印象をねらうことでイメージアップが期待できます。いちばん簡単にできるのは、できるだけマスクを外すこと。また白衣ではなく明るい色のスクラブを着ることも明るい印象につながります。また嫌悪感を抱かれないためには清潔感も重要です。清潔感を保てる範囲で、女性なら可愛らしさ、男性なら爽やかさを身なりに取り入れることで歯医者さんのこわいイメージを払拭しましょう。

適切なパーソナルスペースを考慮する

適切なパーソナルスペースを考慮する

【パーソナルスペース】とは文化人類学者エドワード・ホールにより分類されたもので、他人が近づくと不快に感じる空間のことです。親しい人が対象になると狭くなり、敵視する相手には広くなります。また、一般的に男性より女性の方が狭い傾向があります。
(1)ごく親しい人にのみ近づくことが許される「密接距離」=45センチ以内。
(2)相手の表情が読み取れる「個体距離」=45~1.2メートル。
(3)会話が容易にできる程度の「社会距離」=1.2~3.5メートル。
(4)複数の相手が見渡せる「公共距離」=3.5メートル。と分類されています。

診察時に患者に触れるのは当然のことですが、説明や会話をするときには少し注意が必要です。歯科のユニットでは一般的に空間はせまく、意識しなければ(1)「密接距離」=45センチ以内になってしまい、普通のコミュニケーションでの距離感と比べて明らかに近づきすぎです。歯科医院に通院している人にとってはこの距離感は自然ですが、ひさびさに歯医者さんに来た、という患者様にとっては少し違和感を覚えるかもしれません。新患で来院された方、はじめて担当する方とコミュニケーションを図るときには不快にさせないような距離感の工夫が必要です。

相槌で自然と会話をリード

相槌=聞き手に徹しているように見えますが、実はその話題をリードしていることが心理学の実験で明らかになっています。アメリカで行われた実験は、まず2人の人物に自由な会話をしてもらい、ただし一方には相手が複数形の名詞を口にするたびに、相槌をうつよう指示が与えられました。やがて会話が進行するにつれて、被験者は口にする名詞のうち、複数形の割合が無意識のうちに多くなっていくという変化がみられました。

人間はもともと、他者から肯定されたいという【自己是認欲求】を抱いていると考えられています。「自分」ではなく「他人」に認められたいという欲求で、人はこの欲求を満たしてくれた相手に対して好意を抱く傾向があり、相槌を受けることは自己是認欲求を満たすもっとも簡単な方法でもあるのです。
 問診で考えると、患者の主訴にあたる部分で意識的に相槌をうち、治療方針の説明につなげる、などといった工夫ができそうです。

説明は短く!

説明は短く!

相手に理解を生むためには、要点を10秒にまとめて話すことが必要です。歯科治療はいくつか段階をたどる治療のため、説明がつい長くなってしまいますが、結論にいたるまでに何分もかかってしまうと「一体、この先生は何がいいたいのか?」とイライラを募らせてしまいます。1957年にアメリカ・ニュージャージー州の映画館で、「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」というメッセージを5分に1コマの感覚で挿入したところ、売店でコーラとポップコーンが飛ぶように売れる、という出来事がありました。
この現象は【サブリミナル効果】と呼ばれています。ニュージャージー州の例のように、人間の潜在意識や、意識と潜在意識の境界領域に加えられた刺激によって発生する、行動や認知全般のことを指しています。受け手が気づかないほど短く提示しなければ効果が発揮されず、短ければ短いほど効果が高まるといわれています。

モチベーション維持には暗示を3回繰り替えし、同調を利用する

プラークコントロール向上のためには、患者のモチベーションの維持が欠かせません。とくにインプラントを入れた患者様はプラークコントロール不良がインプラント周囲炎を招くなどの危険性があり、モチベーション向上・維持はとても重要な問題です。
やる気を引き出すためには、まず上手な言葉で応援して「やれる!」という簡単な暗示をかけてあげましょう。暗示の効果を高めようと思うなら、同じようなフレーズを3回繰り返して伝えます。言葉を重ねることでポジティブな印象が心に刷り込まれ、行動につながるのです。

また【同調傾向】を上手く利用することも効果的です。対人コミュニケーションにおいて、行動や言動が連動し、類似化してく現象。人がやっていることは自分も、というのは誰にでも身に覚えがあるでしょう。

例えば、歯間ブラシやフロスを使ってもらうことを考えてみます。自分は面倒くさがりな性格だから無理だ、という患者さまに対してまず「きっとできますよ!」と【暗示】をかけ、来院されるたびに3回以上声をかける。同時に「来院されている方のほとんどが続けられていますよ。」などと言って【同調傾向】に働きかける、といった使い方ができそうです。

無理な要求にもスマートに対応し、患者様の不満を残さない

無理な要求にもスマートに対応し、患者様の不満を残さない

臨床現場では、どうにも原因の分からない痛みや違和感で悩んでいる方に遭遇します。力になれないと悟ったとしても、とにかく一緒に考え、一緒に悩むことが大切です。ネガティブな返答をした直後に、「力になりたい」という態度を示すことで最初の印象は打ち消すことができます。

【不満】は相手が自分の気持ちを理解してくれていないと感じたときに起こる心の状態です。お互いの理解に何らかの問題が生じている不満を感じるということは自立心が少ないことの表れで、誰かに便りやすい人ほど不満を感じやすくなります。テキサス大学のジェームズ・ペネベーガー博士は、「不満などのネガティブな感情を吐き出させると、約49%の人はそれだけでスッキリしてしまう」と、独自の研究結果を発表している。結果的に問題自体は何も解決しなくても、自分の意見・不満を吐き出すだけで、心が晴れ晴れとし、不満自体がやわらぐケースがあります。はっきりと気づいていない不満が、取り返しのつかないくらい大きく膨れ上がる前に、患者の気持ちをガス抜きしてあげましょう。

帰り際は「ありがとう」の言葉でリピート率アップ

 ペンシルベニア大学のアダム・グラント博士の研究で、ある心理学実験のために被験者を集め、実験を終えたあとで、再度新たな実験をお願いできないかを全員にメールで連絡しました。この文面には「今回参加してくれてありがとう」と最後にひと言添えた場合とそうでない場合の2パターンがあったが、前者のほうが返事をくれる確率が倍以上になったそうです。
感謝の気持ちは人間関係の基本。治療が終わって疲労困憊の最後の力をふりしぼって、「今日はお忙しい中、来て下さりありがとうございました。」と一言添えてみましょう。きっとまた患者様は先生に会いに来てくれるはずです。

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