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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科医療は海外と日本で違うのか?文化や制度の違いから見えてくるデンタルケア

保険制度や意識の違いなどによって歯科医療事情や個々のオーラルケアは大きく異なります。今回はアメリカと日本を比較し、オーラルケアについて考えていきましょう。

アメリカと日本の歯科医療における保険制度の違い

アメリカと日本の歯科医療における保険制度の違い

日本では「国民皆保険制度での治療」または「自費治療」とわかりやすいシステムです。一方、アメリカには日本のような国民皆保険制度は存在せず、完全に自由なシステムで歯科治療が行われています。2013年から政府が導入した国民皆保険制度は、民間の保険を前提にして、経済的な事情で民間保険への加入が難しい国民の受け皿として政府が保険料金の一部を援助するというものです。

アメリカでは、基本的に全額自己負担でどこの会社のどの保険プランに加入するかを個人で決定します。ただし、会社員は福利厚生の一環で会社が保険料の一部を負担し、保険会社と契約を結ぶ場合もあります。すべて民間の保険であり、保険会社ごとに補償内容などは実にさまざまです。

また、保険に加入しても任意の歯科医院に通院できるわけではありません。保険会社から歯科医院のリストが送付されてくるので、そのなかから歯科医院を選択します。リスト外の歯科医院への通院も可能ですが、その場合は保険会社からの負担が減額されます。そのため、一般的には保険会社がリストアップした歯科医院に通院します。リストアップされた歯科医院は保険会社、患者双方の負担額が少なく設定されています。そのぶん歯科医院が安価で治療しているのです。

歯科保険に加入している人が、保険会社と契約していない歯科医院へ通院した場合、治療費は全顎自己負担、もしくは保険会社が一部のみ負担し、残りを患者が支払います。月々の保険料が高額であるほど手厚い保障が受けられますが、高額な保険料を考えると損得は個々のケースにより大きく異なります。

アメリカでは、保険の歯科医院と自由診療の歯科医院とのすみ分けが図られており、さらに低所得者用、中産階級用、富裕層用の歯科医院が存在します。向上心のある歯科医師は勉強と臨床経験を重ね、技術を向上させ、富裕層を対象とした歯科医院を目指します。

アメリカは貧富の差が非常に大きく、平均的アメリカ人という定義が難しい社会です。いわゆる富裕層では、数百万円の歯科治療費は微々たるもので、可能な範囲で最高の治療を受けたいと思う人が大勢います。

一般的に保険に入れないような低所得者は、ボランティアで治療してくれる施設を利用し、中産階級の人々は、保険会社のリストに掲載されている歯科医院に行きます。中産階級で保険に入っていない人は、口コミやインターネットの情報を頼りに歯科医院を探します。

アメリカと日本では歯に対する美意識が異なる

アメリカと日本では歯に対する美意識が異なる

アメリカ人が歯を大切にする理由は主に二つあります。一つはしっかりとメンテナンスを行うことで支出を抑えたいこと、もう一つは歯に対する美意識が非常に高いことです。また、歯を保護するためにナイトガードを装着して就寝する方も大勢います。歯ぎしり防止ではなく、歯の咬耗や脱落を予防するための装着です。実際ほとんどのスーパーや薬局で市販品のナイトガードが販売されており、普及率の高さがうかがえます。

アメリカと日本でのオーラルケア

アメリカと日本でのオーラルケア

アメリカと日本でのオーラルケアに対する意識調査が行われました。まず、「オーラルケアへの自信」に対しては、アメリカでは「自信あり」と回答したのは約8割と多数にもかかわらず、対して日本では61.8%が「自信なし」と回答しています。

また、日本とアメリカでは、オーラルケアアイテムの使用についても大きく異なります。アメリカでは、フロスやリンスは当たり前に使用すると考える人が約7割の多数派に対し、日本では約半数。一方、日本ではブラッシングだけで充分と考える人が半分以上を占めています。アメリカでは、8割以上の人が歯や口のケアを念入りに行いたいと考えているのに対し、日本では、歯や口のケアを手軽に行いたいと考える人が約半数を占めます。

実際に使用しているオーラルケアアイテムでは、デンタルフロスの使用率が60.1%とアメリカでは半数を超えるのに対し、日本では19.4%とまだまだ少数派といえます。デンタルリンスの使用はアメリカで半数以上、日本では3割程度です。

また、オーラルケアアイテムにかける年間平均購入金額でみてみると、アメリカでは8,000円程度に対して、日本は5,000円程度。日本は、欧米諸国と比べ約6割程度でした。オーラルケアアイテムへの「こだわり」や「お金をかける意識」では欧米に比べ日本は低い傾向といえます。

予防歯科に対する意識の違い

予防歯科に対する意識の違い

歯科医での定期健診受診回数については、直近一年間にアメリカでは1回以上受けている人が過半数であるのに対し、日本は受けていない人が6割を占めています。また、歯科医院の好き嫌いでの調査では、歯科医院を好きと回答した人の4割以上がアメリカであるのに対し、日本では、14%もの人が歯科医を苦手と回答しました。

予防歯科については、アメリカでは約6割に浸透しているのに対し、日本では20割程度です。予防歯科の実践についても、アメリカでは、約7割が取り組んでいるのに対し、日本は30%と大きく差があります。

オーラルケアは予防歯科への理解から

オーラルケアは予防歯科への理解から

日本では、国民皆保険制度がある反面、医療機関は「病気になってからいくところ」という意識が根付いています。実は健康な人を含めると、歯科医院を訪れる機会はアメリカよりも日本のほうが少ないようです。歯科医院に年に1、2回必ず行くことにより、歯に対する意識が高くなっていると考えられます。

近年では、グローバル化が進み仕事上外国人と接する機会が増えたことやテレビのCMでさかんに「歯周病」や「予防歯科」というキーワードを耳にする機会は増えており、オーラルケアへの意識が高くなっています。一方で、歯医者さんに対する苦手意識を持つ人は意外と多いのが現状です。「キーン」という歯科医院ならではの音が嫌だという人や、自分の口は汚いから歯医者さんに診せるのがこわい、と言う人すらいます。

オーラルケアを充実させるにはまず、健康な人を含めて歯科医院にいく機会を増やすことが重要なようです。今後は学校歯科健診のように、大人になってからも定期的に歯科検診を受けられるよう人間ドックや健康診断に歯科が参加していくのもひとつのアイディアかもしれません。

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