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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

個人開業の歯科医院に転職する際の違法性のあるトラブルの避け方

どこに転職し自分の人生を費やすかは、大きな選択のひとつといえます。当然トラブルの多い歯科医院で働きたい人はいないでしょう。しかし違法行為によって逮捕された開業医の例もある中、知らずに「危ない」歯科医院に転職してしまいトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

ここでは、トラブルの実例と、見極めポイントをいくつかご紹介します。

違法行為により逮捕となった実例

違法行為により逮捕となった実例

違法行為により逮捕された歯科医は、たとえば以下の例が記憶に新しいのではないでしょうか。

実例1:
2016年1月に歯科医師免許を持たない歯科助手に医療行為をさせたとして、警視庁生活環境課は歯科医師法違反容疑で、東京都品川区のT歯科クリニック院長S容疑者と、助手M容疑者を逮捕しました。逮捕容疑は2014年3月から2015年5月にかけて16回にわたり、助手Mに印象採得などの医療行為をさせたとしています。院長のS容疑者は不在にすることが多く、助手のM容疑者に多くの治療を任せていました。同クリニックでは2009年からの6年間で1,500人に対し違法な医療行為が行われていたとみられ、「歯の根が化膿した」「顔が腫れた」と訴える患者もいたとのことです。

実例2:
2005年11月歯科衛生士が資格の範疇を超えた歯科の医療行為を行なったとして、歯科衛生士N・Mと、夫で歯科医師N・K両容疑者を歯科医師法違反の疑いで逮捕しました。歯科衛生士N・Mは、2004年6月から11月まで夫婦で経営している歯科クリニックで窩洞形成や抜髄を行い、夫で歯科医師N・Kは黙認していました。歯科衛生士N・Mによる治療の後、激痛を訴える患者もいたとのことです。

実例3:
2016年1月医師にしか認められていない医療行為を歯科医師が行ったとして、東京都江東区のAクリニック院長で歯科医師のTら3人を医師法違反容疑で逮捕しました。クリニックは歯科医師しかいないにも関わらず、「遺伝子治療」などとし内臓にがんを抱える患者らに対し、通常医師にしか認められていない点滴注射などの医療行為をした疑いがあります。また同容疑者が理事長を務める医療法人S会においては、2015年11月脱税の疑いで東京地検特捜部が捜査し起訴しています。

実例4:
2010年11月東京都板橋区の医療法人K会が2008年5月から8月。中学1年生ら4人に抜歯や入れ歯などの歯科治療行為を行ったかのように見せかける虚偽内容の診療報酬請求をしたことで、同医院の理事長および元院長が再逮捕されました。ふたりは親族や知人の診療報酬を架空請求したり、患者の診療報酬を水増しする行為を続けていました。また、歯科助手や歯科技工士らに抜歯などの歯科治療行為をさせていた容疑で逮捕・起訴されていましたので、再逮捕となりました。

実例5:
2016年11月診療報酬の不正請求を調べる厚生労働省の個別指導において起こったことです。コンサルタント会社を営む元厚生官僚が、指導対象となった大阪市の歯科医師らに不正が発覚しないよう資料の改ざんを指南していたことがわかりました。この元厚生官僚は、東京と大阪で毎年開かれるセミナーでも資料の書き換えを助言していました。

■歯科助手の職務範囲と違法行為
歯科助手は、医療行為は一切できません。職務範囲は、受付・診察台への誘導・診療の介助・器具の準備および片付け・清掃などで、患者の口の中に手を触れる行為は、すべて違法行為とみなされます。またレントゲン撮影や、ブラッシング指導などの保健指導もできません。

■歯科衛生士の職務範囲と違法行為
歯科衛生士は国家資格で、職務範囲には一部の医療行為が含まれます。歯科衛生士法において、歯科医師の指導の下に①歯科診療補助②歯科予防処置③歯科保健指導を行うことができます。

●歯科診療補助
歯科衛生士が術者として直接患者に対応し、介助も含め歯科治療の一部を担当するなど、歯科医師との協働で患者の診療にあたります。余剰セメントの除去や対合歯の印象採得、ホワイトニングなど歯科診療補助の範囲は多岐に渡ります。麻酔や外科的処置、歯質の切削、窩洞充填、根管治療、レントゲン撮影はもちろんのこと、本印象採得や補綴物の咬合調整も違法行為となるので注意が必要です。
 
●歯科予防処置
齲蝕や歯周病予防を目的としたフッ化物などの薬 物塗布を行うことができます。小窩裂溝填塞法も含まれます。また、歯垢・歯石などのスケーリングやポリッシング(機械的歯面研磨)を行います。しかし予防処置としての行為に限局します。
      
●歯科保健指導
セルフケアの向上のため、口腔内清掃道具の選定やブラッシング指導、生活習慣・栄養指導、場合によっては舌トレーニングや摂食・嚥下機能訓練も行います。しかし、投薬の指示や停止などは違法行為となります。


なぜ違法性のあるトラブルが起きるのか

なぜ違法性のあるトラブルが起きるのか

歯科医院の違法性のあるトラブルの原因の多くは、院長の「開業の一番の目的」が、「自分自身の儲けのため」であることかと考えられます。患者の健康面や経済面の利益よりも、自分自身の金銭的な儲けを優先するが故、歯科医師としての尊厳を捨て違法行為をすると思われます。

効率よく利益を生み出すには、人件費を最低限に抑え、診療報酬額を多くすることです。まず人件費ですが、歯科医師の平均時給は約3,000円、歯科衛生士は約1,500円、歯科助手は約1,000円です。法律を無視すれば当然安い賃金の方がよく思えます。

診療報酬額の面においては、患者に領収書を発行する際、任意で明細も発行しますので水増しできません。しかし保険診療の場合は、診療報酬明細書(レセプト)を作成する際に水増しし、公的医療保険を請求できます。支払基金や国保連合会の審査はありますが、上手く通過すれば難なく利益が得られます。

もし審査機関や内部告発、また不審感を抱いた患者の告発などによって、不正が明るみに出るならば、院長だけでなく違法性を知りながら加担した従業員も逮捕されることになります。


違法性のあるトラブルを避ける見極めポイント

違法性のあるトラブルを避ける見極めポイント

転職活動の際、必ずすべきことは「診療時間内の歯科医院の見学」です。院長の患者とのコミュニケーションの取り方で「開業の一番の目的」が見えてきます。ここが見極めポイントです。患者の話を聞き、最善の医療を提供する姿勢があるか否かを、ぜひ観察します。

また、院長と従業員とのコミュニケーションも大切です。院長は従業員をわが子のように大切に思っているか、また従業員は院長を敬っているかを、観察します。そして、実際の治療に違法性がないかを見て、可能ならば院長が出勤している日と不在の日の両日を見学することをお勧めします。実情がより明らかに見え、違法性のあるトラブルから身を避ける情報が多く得られます。

そして、就業規則(書面で存在すること必須)などで曖昧さがないかを確認することで、雇用トラブルも避けることができます。

せっかく転職するのですから、自分自身が歯科医療従事者として、そして人としても成長できる歯科医院で、貴重な時間を費やしたいものです。そのためには、最初の見極めが肝心。

歯科医院の中には、人手不足のため少しでも早く補てんしようと良いところしか見せない医院もあるかもしれません。ぜひ心の目もしっかり開いて見学し、試用期間も経て転職することをお勧めします。

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