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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

将来は開業しないとダメ?歯科医の研修後の進路の選択肢について

歯科医師国家試験に合格すれば、はれて歯科医師として国から認めてもらえます。医師の場合、開業せず病院勤務医や研究者の道を選ぶことも多いですが、歯科医師はその大多数が開業の道を辿るのが特徴です。

大多数といったのは、そうではない進路もあるからです。大学院に進み研究者の道を進まず、臨床医として患者と向き合う選択をするなら、開業ではなく、病院勤務医という選択肢もあります。自衛隊に勤めるという道もあります。

そこで、開業しない歯科医師の研修終了後の進路についてまとめてみました。

歯科医師国家試験に合格したら

歯科医師国家試験に合格したら

臨床研修が義務化されて以降、国家試験に合格した後は、臨床家としての歯科医師を目指すのなら、研修医として少なくとも1年間は過ごさなければなりません。
研修を受ける医療施設は、主に臨床研修施設としての認定を受けた歯学部附属病院、医学部附属病院、歯科診療所になります。

研修内容は、各臨床研修施設での裁量による所が多いのが特徴です。
例えば関連病院の充実している歯学部もしくは医学部附属病院であれば、大学病院だけでなく市中病院での研修が研修プログラムに含まれていることもあります。

臨床研修が終了したら

臨床研修が終了したら

臨床研修が終了したのちは、開業することも出来ますし、臨床研修医療施設でない開業医に勤めることも出来ます。

なお、厚生労働省の統計によりますと、なんらかの業務を行なっている歯科医師のうち98%弱が各種の医療施設に勤務しています。残りは、研究者や行政機関での保健衛生業務などに従事している歯科医師です。
医療施設に勤務している歯科医師は、その約85%にあたる87,000人ほどが歯科診療所に勤務しています。大学などの教育機関の附属病院に勤務している歯科医師が約9,700人で11%ほど、市中病院に勤務している歯科医師が約3,000人でおよそ3%の割合になります。

約15%の歯科医師は、開業しない選択肢をとり、大学病院か市中病院に勤務しています。これらの医療施設に勤務している歯科医師数の中には、研修医も含まれていますので、研修終了後の歯科医師に限れば、さらに割合は低くなります。市中病院に至っては、研修医を省けば3%を切ることが確実となりますので、非常に狭き門と言えます。

大学病院での勤務について

大学病院での勤務について

大学歯学部もしくは医学部附属病院での勤務です。医学部附属病院の場合は、たいてい口腔外科となります。
医局は、教授・准教授・講師・助教・医員などにより構成されており、その他、非常勤講師、臨床教授などがいます。このうち助教以上が正規職員となることが多く、医員は日々契約更新の立場だったりします。また助教以上には、この他に手術部副部長などの役職がつけられることもあります。

なお、医員以上の職員の枠は医局ごとに決まっているため、定員からあふれた場合は研究生となって医員の枠が空くのを待たなければならないこともあります。

■大学病院での業務について
勤務内容ですが、外来担当と病棟担当に分かれます。
外来担当では、曜日ごとに内容が変わることが多いです。基本的には午前中に初診を行い、午後から再診を行ないます。

初診については、講師以上の歯科医師が曜日で交代しながら診察し、再診については腫瘍外来、顎関節症外来、粘膜疾患外来などにわけられることが多いようです。そして、その方面を得意とする講師以上の歯科医師が中心となって診療を行ないます。

手術日が設定されていれば、その日は全日、依頼業務が行なわれないこともあります。また、各歯科医師の勤務日数が週5日だったとしても、全部出勤することはなく、このうちの1ないし2日は、外勤日としていわゆるアルバイトに行くことがあります。

病棟担当になれば、手術日の前日や翌日には、教授回診や准教授回診などが設定され、手術患者の状況を病棟業務担当歯科医師が全員で確認します。また、週一回、手術前の事前検討会議が行なわれ、全員出席のもと、主に研修医や下級医師が症例を報告したり、主治医が手術方法について発表したりします。なお、入院患者の点滴や採血は、看護師ではなく研修医が行ないます。

当直業務も大学病院の場合は行なわれます。大学医学部附属病院の場合は、各科が独自に当直業務を行ないます。たいていは2名以上で、上級医と下級医(研修医を含む)の組合せとなります。下級医は通常書類仕事に追われ、治療に携われる機会が少ないのですが、救急患者が来た時ばかりは、上級医の指示のもと直接治療を行なえる貴重な機会となります。

また、地域の歯科医師会などでの講演会での講師を依頼されることもあります。

市中病院での勤務について

市中病院での勤務について

国立・都道府県立・市立・町立など公的病院と、民間病院にわけることができます。その経営形態に関わらず、たいていは大学病院の医局(多くは口腔外科医局)の関連病院となっており、医局からの派遣が多いです。

多くの病院では、2人以上の複数の歯科医師が勤務しており、部長職はあまり交代することはありませんが、それ以外の歯科医師は医局人事でのローテーションで2〜3年おきに交代することが多いです。こうした点は、歯科医師だけでなく医局から派遣された場合の医師も同様です。

■市中病院での歯科医師の立場と待遇
配置に関して、歯科医師は医師と同じく診療部門に配属されます。なお、病院の機構は、医師が配属される診療部門、看護師が配属される看護部門、事務方が配属される総務部門の3部門で構成されていることが多いです。ただし、この名称は各医療施設によって多少異なります。

待遇面では、医師とほとんど同様の処遇を受けることが多いです。ただし、当直業務に関しては、医師には課されますが、歯科医師については診療可能な業務範囲が口腔領域に限られるため、病院当直業務を行なうことは稀です。その代わりに、宅直とよばれる自宅待機、正確には病院に規定時間内に駆けつけられる範囲での待機が命じられることになります。当直の場合は、給与の支払がなされますが、宅直は呼ばれない限り基本的に無給だったりします。

■市中病院での業務について
勤務日は、公立病院であれば月曜から金曜となりますが、私立病院であれば土曜日まで行なわれることもあります。勤務時間については、歯科診療所と異なり17時30分までということがほとんどです。
ただし、私立病院などでは、夜間診療として19時頃まで診療をしていることがあります。そして、大学病院と異なり、外勤日は特に設定されることはありません。外勤をしたい場合は、休診日などの業務時間外に行なうようになります。

診療業務は、病院によって異なります。例えばがんセンターであれば、悪性腫瘍の治療が中心となります。がんセンターではない一般的な市中病院で、最も多いのが、埋伏抜歯をはじめとする口腔外科疾患です。他、基礎疾患や障害があり一般の歯科医院での対応が難しいと判断される患者の歯科治療をおこなうこともあります。

なお、一般的な歯科治療については、対応しているかどうかはそれぞれの病院の方針によって違ってきます。歯科診療所とは異なり病床を利用出来るという利点を生かして、蜂窩織炎などの重度の炎症患者の治療や、外傷の治療などを入院下で行なうこともあります。
最近では、重度の基礎疾患がある患者の抜歯や嚢胞摘出術を入院下で施行することも増えてきました。また、全身麻酔下での口腔外科領域での手術も行います。配属される歯科医師は2〜3名のケースが多いこともあり、いろいろな症例を経験出来ます。

ところで、診療業務以外にもさまざまな業務があります。市中病院では、業務を円滑かつ安全に遂行するために、いろいろな係が設定されています。たとえば、感染対策委員会では、病院内における各種感染対策から針刺し事故への対応まで行ないます。医療事故対策委員会では、ヒヤリ・ハットから医療事故まで検討と対策を行ないます。栄養支援委員会では、経口摂食が難しくなった患者への対応を検討したりします。
診療部長にまでなれば、病院の経営会議に出ることもあります。この他にもいろいろな係がありますが、こうした委員会に出席して、対応策を検討するのも歯科医師の役割のひとつです。

また、大学病院と同様、地域の歯科医師会や各種保健施設で、講演会を行うこともあります。

■市中病院の特徴
市中病院の特徴のひとつに、さまざまな診療科がありますが、大学病院とは異なり、内科や外科といったメジャー科は別として、各診療科は歯科口腔外科と同じく2〜3名の医師で構成されている場合が多いという点があります。医師であっても自身の診療科以外のことはわからないことが多く、担当患者のことを相談しやすい雰囲気があり、年も近ければ自然と医師同士の横のつながりが出来てきます。

開業医に勤めていると、医師達との横のつながりの形成は希有ではないかと思います。反面、歯科医師の友人は少なくなりますが。基礎疾患を持つ患者が増えつつある昨今、医師との横のつながりが出来る利点は大きいです。


防衛省・自衛隊

自衛隊にも歯科医師は勤務しています。歯科医師は自衛隊の場合、歯科医官とよばれます。業務内容は、自衛隊病院や駐屯地や基地の医務室、艦船での自衛官の口腔衛生管理などになりますが、PKOや海上自衛隊のパシフィックパートナーズなど、海外で業務を行なうことも増えています。

防衛医科大学校には歯学部はありませんので、自衛隊に勤務している歯科医師は、他大学を卒業したのちに自衛隊に入隊することになります。卒後直ちに入隊する歯科幹部候補生と、卒後ある程度の経験を積んだのちに入隊する医科歯科幹部があります。自衛隊の歯科医官の利点として、在日米軍の病院での研修を受ける機会があるということがあげられます。国内にいて海外の医療技術に触れる機会があるというのは、滅多にない利点です。


行政機関・保健衛生機関

厚生労働省や各地域の保健所などの行政機関に勤務することもできます。行歯会という行政機関の歯科医師の団体があるほどです。けれども募集はほとんどなく、非常に狭き門です。

行政機関に就職した場合、臨床を行なうことはほとんどありません。保健衛生業務などのデスクワークが中心となります。


まとめ

多くの歯科医師が開業の道を選びますので、歯科治療を行なって生計を立てて行こうとすると開業をするしかないような感じがします。しかし、開業しない選択肢もあります。大学病院だけでなく、市中病院もあれば、防衛省・自衛隊という道もあります。直接歯科治療をしなくても、行政機関で大局的見地から口腔保健衛生に携わるという道もあります。

開業医が大多数を占めますから、それ以外の選択肢はなかなか見えてきません。しかし、知らなければ選ぶことも出来ません。開業以外にどのような進路があるのか、知った上でどの道を選ぶかを決めるようにしてください。


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