矯正歯科医師になるには研修期間が大事
矯正歯科は、昨今の歯科業界において人気の分野になってきています。しかし、矯正歯科医師として働きたいと思っても、なかなか狭き門のようです。矯正歯科医師として活躍するにはどうしたらよいのでしょうか。また、研修期間はどのような流れになっているのかなど、詳しくご紹介します。これから矯正歯科に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
矯正歯科医師になるまでの概要
■いきなり矯正歯科医師にはなれない?!
当たり前のことなのですが、歯科医師免許を取得しなければ矯正歯科医師を目指すことはできません。まず大学の歯学部歯学科を卒業後、国家試験に合格して歯科医師免許を取得します。それから卒後臨床研修を1年以上受けます。矯正歯科医師としての研修は、それからさらに各大学の矯正学教室に入局して、研修医期間が必要です。
■矯正歯科基礎研修期間
まず、各大学の矯正学教室へ入るのにも難関です。矯正の臨床研修は時間と費用がかかるため、医局も受け入れ数を制限しています。入局試験に合格し研修医になると、最低2年、大学によっては3年の基礎研修を受けることになります。
■基礎研修後の臨床研修期間
基礎研修が終了したら、さらに最低3年間の臨床研修を受けます。大学に残って研修を続ける方法もありますが、指導医・専門医のいる歯科医院で働きながら研修することもできます。ただし、どの矯正歯科でも良いわけではありません。「日本歯科学会」認定の歯科医師の指導のもとであることが必須です。そして学会の設定したガイドラインに沿った研修を受ける必要があります。
■「日本矯正歯科学会認定医」になるまで
ここまでの長い研修期間を経て、最終的に指導医もしくは専門医が認定試験の受験資格があるか判断します。そして初めて矯正歯科認定医の試験を受けることができるのです。最短でも歯学部6年、卒後研修医1年、矯正歯科基礎研修医2年、矯正歯科臨床研修3年と考えると、12年かかってようやく「認定医」になれるのです。
認定医になれば1人前の「矯正歯科医師」として活躍できます。
矯正歯科医師になるために大切なこと
■矯正歯科医師数の中での専門医の割合
現在約21,000の歯科医院が診療科目に「矯正歯科」を標榜しています。実際、その中で専門教育を受けた歯科医師は約3,000人。その中で診査に合格し、「専門医」の資格を持った人はさらに少なくなります。現在3つの矯正に関する学会・団体が専門医資格を授与しています。現在、日本矯正学会専門医が約300人、JBO認定歯科矯正専門医が約60人、日本成人矯正歯科学会が約90人とわずか450人ほどとなっています。
■矯正歯科医として働く場の実状
現在日本では、歯科医師の免許があれば誰でも「矯正歯科」を標榜することができる仕組みになっています。その結果、矯正の専門技術が不十分な歯科医師でも治療を行っていることが問題視されています。昨今、歯科医院数が増大し、患者が歯科医院を選べる時代。治療を受ける患者さんは、信頼と高い技術を求め、「矯正専門医」という資格を医院選びの際に目安にされることも増えてくると考えられます。矯正歯科医師を目指すのであれば、ぜひとも専門医を目指せる環境下で働きたいものです。
■矯正医専門の資格「認定医」と「専門医」の違い
「認定医」は上記のように、研修や臨床経験など一定条件を満たした歯科医師が診査を受け認定されます。「専門医」は、今まで治療を行った患者さんの症例検討を学会等の審査員が技術審査します。そして、厳しい判断基準に合格した人のみに与えられるもので、合格には高度な技術と知識、臨床経験が必要になります。日本矯正歯学会員約6000人のうち、認定医が3,000人、専門医はその中でも約300人程度しかいないのです。「認定医」は矯正歯科医師として最低限取得したい資格、「専門医」はそれからの実績をふまえ評価された称号といえるでしょう。
矯正歯科医師としての研修期間
■研修医時代をどう過ごすか
これまでご紹介してきたことをふまえると、矯正歯科医師になるには、「矯正歯科医師としての研修期間をどう過ごすのか」ということがとても重要になってきます。矯正歯科を標榜して行っている大学病院や歯科医院は沢山あります。歯科大学卒業後の進路が最初のカギになりそうです。
■しっかり学べる体制のある現場であるかを見極める
研修期間は「しっかりとした診療体制のある現場」であることがポイント。矯正歯科に携わってさえいれば良いという訳ではありません。ですから歯科大学卒業後の就職先選びは最も重要になります。大学矯正科での研修を引き続き受けるか、臨床研修機関の認定を受けた歯科医院へ就職し、臨床経験を積む事が必須です。まだまだ対象機関が少なく難関となるでしょう。認定機関に勉強に通うなど、研修期間から積極的に動くのもよいとおもいます。
■論文提出も見据えておきましょう
認定医を取得する際に「筆頭論文」があります。就職してからでは論文に関しての勉強はなかなか難しいもの。できれば大学矯正科で研修期間のうちに論文に強い指導医などに相談しておくのが良いでしょう。
■日頃から丁寧な症例データを残しておきましょう
認定医診査においては10症例の提出が必要となります。矯正歯科認定医を見据えて就職するのであれば、臨床現場での症例をしっかりとしたデータで残していきましょう。画質も診査の基準になりますので、顔写真や口腔内写真、パントモやセファロなど、アナログのものはデジタルデータとして保存しておきましょう。いざ認定を受ける時になって慌てて症例を集めるとなれば大変な作業ですし、簡素なデータでは認定基準に達しないと判断されかねません。
まとめ
歯科医師の国家試験に合格し、矯正歯科医院に就職すれば「矯正歯科医」として働くことはできます。しかし患者さんに信頼をもって通ってもらえる矯正歯科医として「矯正歯科認定医」を取得するためには、卒業後の就職先を早いうちから見据えておく必要があるようです。卒業後の進路を矯正歯科医に興味を持ったら、研修期間を有意義に過ごせる就業先を早いうちからリサーチしてみてくださいね。