地域医療支援病院とは、あまり聞き慣れない医療施設ですが、1997年の医療法改正に伴って発足した医療施設です。文字通り、地域医療を支援する目的で、設置されています。地域医療支援病院は、それぞれの地域全体を支える医療機関だけあって、設置するためにはたくさんの条件をクリアしなければなりません。

例えば、病院内の設備が十分に整っていたり、救急医療に対応していたりすることは前提条件として挙げられています。さらに、地域の病院からの紹介による診療だけでなく、地域の病院への逆紹介も行っている医療機関がほとんどです。そうした地域医療の担い手となっている病院が「地域医療支援病院」として認められるのです。そんな特殊な病院で歯科医師が働くメリットとは、どんなものがあるのでしょうか。

地域医療支援病院は、「地域の中核病院」と言っても過言ではないほど、重要な機能を担った医療施設です。小さな病院と大きな病院をつなぎ、地域に住んでいる人が滞りなく良質な医療を受けられるよう、機能するからです。そんな医療施設で働けること自体、歯医者としては幸せといえます。もちろん、民間の小さな病院で働くことにも意義はありますが、中核病院で働くこととはまた少し違った面があるでしょう。

地域医療支援病院には、歯科はもちろんのこと、医科の診療科もほぼすべてそろっています。そのため、診療においても他の診療科のスタッフと連携する場面が非常に多くなるのです。いわゆるチーム医療と呼ばれるものですね。医科の様々なスタッフとともに、お互い切磋琢磨しながら、地域の医療に関われるというのは、非常に貴重な経験といえます。歯科医院で勤めていると、歯科の領域内の診療にしか携わることができませんが、地域医療支援病院なら複数の診療科とオーバーラップする部分もあり、医学に関する知識もどんどん増えていくことでしょう。

地域の医療支援病院には、たくさんのスタッフが働いており、人材も豊富です。そのため、働いていく中で妊娠や出産、子育てといったライフイベントが訪れても、病院側としては柔軟に対応してくれることが多くなっています。シフトを調整したり、場合によっては採用条件を変更してくれたりすることもあります。そういった意味では、将来的に妊娠や出産などを控えている女性歯科医にも、おすすめの転職先といえるでしょう。また、出産や子育てなどでブランクが生じても、仕事復帰しやすい職場であるともいえます。

ここまで、歯医者が地域医療支援病院に転職するメリットについて解説してきましたが、もう1点、この病院が承認される上で必要とされている要件について説明します。それは「逆紹介率」というものです。地域医療支援病院では、大きな病院から地域の小さな病院へと患者さんを紹介する「逆紹介」がどれくらい行われているかが重要視されています。具体的には「紹介率が50％以上かつ逆紹介率が70％以上」という文言で、要件が記載されています。このパーセンテージにはいくつかのパターンがあるのですが、逆紹介率が重視されていることに変わりはありません。そこで気になるのが逆紹介率を重視する理由でしょう。

地域医療支援病院における逆紹介とは、主に入院治療が終わった後に行われるものです。つまり、退院後も地域医療支援病院が紹介した診療所などで治療を受けることで、アフターフォローもしっかり行えるようになるということです。これは患者さんにとっても病院側にとっても非常に大きなメリットといえます。なぜなら、また病態が変化した際には、すぐに連絡を取り合って、必要な対応をとることができるからです。そういう現場で働けるというのも、歯科医としては有意義なのではないでしょうか。

このように、地域の中核病院である地域医療支援病院に転職することは、歯医者としていろいろなメリットが得られます。たくさんの診療科と連携しながら診療にあたり、歯科の技術や知識以外も吸収していくことが可能となります。歯科医としてキャリアアップを目指している方は、地域医療支援病院を転職先に考えても良いかもしれません。気になる方は直接病院とコンタクトをとってみてください。