歯科医としてより良い環境で働きたいと望んでいる場合は、今働いている歯科クリニックを退職し、新たな職場環境を求めても良いといえます。その際、必要となるのが転職活動です。これは、歯医者に限らず、すべての職種にいえることですね。ですから、もうすでに勤め先である歯科医院の退職を心に決めているのであれば、早めに転職活動を始めましょう。

注意すべきなのは、歯科クリニックを退職してから転職活動を始めようとするケースです。これでは、すぐに転職先が見つかるとも限りませんし、キャリアの中に空白ができてしまう可能性も出てきます。何より、収入がなくなる期間が生じることもありますので、可能であれば退職前から転職活動を開始することをおすすめします。

歯科クリニックを退職し、新たな仕事場を探すために転職活動を行っている歯医者の多くは、在職中から動き出しています。なぜなら、それが最も効率の良い方法であるからです。ただ、転職活動に力を入れ過ぎると、本業である歯科医としての診療に差し障りが生じることがあるため、要注意といえます。そうなると、現在勤めている歯科クリニックに迷惑がかかるだけでなく、患者さんの治療にも悪影響が出てくる可能性があるのです。そうした状態は好ましくありません。そのため、転職活動は患者さんの診療に支障が出ない程度に行う必要があります。

歯科クリニックを退職することを決意し、在職中に転職活動を開始する際、その意思を職場へ伝えるかどうかは、ひとつの判断が必要になります。もちろん、退職する前にいつかは必ず院長やスタッフに対して、退職する旨を伝えなければならないのですが、難しいのはタイミングですね。

まず、ひとついえるのは、現在勤めている歯科クリニックの院長やスタッフとの関係が良好で、何でも話せるような状態であれば、すでに退職および転職を決意した時点で、その旨を伝えても良いでしょう。そうすれば、在職中に転職活動をするにあたっても、周りの理解が得られていますので、診療のスケジュールなども調整してくれる可能性は高いでしょう。何より、突然退職されるよりは、あらかじめ早い段階から知らされていた方が、周囲の人間としても気持ちが良いものです。

これまでお世話になってきた分、退職の意思を現在働いている歯科クリニック側に伝えにくいという気持ちは、だれしもがある内容でしょう。しかし、民法上では原則、退職の2週間前までにはその意思を伝えなければならないと定められています。同時に、勤め先である歯科クリニックでも、また別の規則を設けている場合がありますので、事前に内容を確認しておきましょう。つい伝えそびれてしまって、なかなか退職することができないケースもまれにあります。

転職や退職を決めるのは個人の自由ですが、やはり勤め先である歯科クリニックの都合もありますので、退職の意思を伝えた際には、退職交渉に入ることがほとんどです。なぜなら、退職しないように促されるわけではなく、退職日など、細かい日程を当事者同士で話し合う必要があるからです。そうした退職交渉はできるだけ早い段階で行う方が、歯科クリニック側にとっても、転職を考えている歯科医師側にとってもメリットが大きいといえるでしょう。また、円満退職することで、お互い気持ち良くそれぞれの道を進むことができます。

転職が決まって、新たな環境で働き始めたとしても、実際は肌に合わないことも珍しくありません。その結果、古巣の歯科クリニックに再就職する人も意外に多いものなのです。ですから、そうした再就職も視野に入れたうえで、退職交渉などを行うと良いでしょう。もちろん、戻ってくる可能性があるということを明言するのではなく、あくまで円満退職をすることで、戻りやすい状況を作っておくと良いといえます。

このように、歯科医の転職や退職は、事前にその意思を伝えたり、退職交渉を行ったりするなど、一般の職種と何ら変わりありません。しかし、医療業界では古巣への再就職というケースが意外に多い点に注目しておきましょう。つまり、一般的な職種よりも古巣へ戻り可能性が高くなっていますので、円満退職することがより重要といえます。もちろんそれは、転職する歯科医師自身のためだけでなく、雇っていた歯科クリニックのためにもなりますので、決して悪いことではありません。退職報告や退職交渉などのタイミングを十分見極めたうえで、気持ちよく転職できるよう事前に準備をしておきましょう。