歯科医のワーキングプア化を防ぐには
歯科医はワーキングプアなのか

そもそもワーキングプアとは基本的に、所得が生活保護水準より低い労働者に当てはまる概念です。ですから厳密に言えば、所得が生活保護水準を下回っている人だけがワーキングプアと呼ばれるべきなのです。もし自分の労働時間に比べて給料が低いと感じるとしてもそれがワーキングプアにはあたるとは限りません。
そこで歯科医の給与が本当に生活保護額より低いのかどうか、正確に把握しなければなりません。実際に歯科医の給与を調べたところ、生活保護額より低い給与の歯科医は見当たりませんでした。おそらくワーキングプア歯科医とは、歯科業界の実情を表現した言葉というよりも、雑誌などの売り上げを伸ばすためのキャッチフレーズとして作られた言葉なのでしょう。
歯科医の収入はどれくらいか
ある医療関係ジャーナリストの分析によると、歯科医業界内での収入格差がとても大きい事が明らかになりました。歯科医の収入を単純に五階級に分け、第一階級は収入が一番低く、第五階級は収入が一番高いというように分けて比べたものです。
まず第五階級においては、2001年は平均月収が265万、2007年は260万とわずかに下がっているもののそれほどは変わっていませんでした。注目したいのは第一階級の月収の変化です。2001年は平均月収が25万6千円なのに対し、2007年は15万7千円となっていて、大きく下がっています。
この分析の中の第一階級に属する歯科医の月収も、ワーキングプアの定義に当てはまるには至りません。しかしそれに近い線まで収入が低下しているのは事実のようです。
歯科医は高給取りであるというイメージを世間の人も持っていますが、それは先ほどの分析の第五階級の収入の高さが目立つからに過ぎないでしょう。
歯科医の収入低下の原因

■高齢になった歯科医
収入の低い歯科医がいる原因の一例として、高齢の歯科医が週に2,3日しか働かないというケースがあります。定年退職の年齢を超えても歯科医としての勤務を続けていて、体力など無理のない範囲で勤務している歯科医は決して少なくないでしょう。
これらの歯科医はお金を稼ぐためというよりも自分の生きがいのために続けている人もいるので、高い収入は望んでいません。ですから月収はフルタイムで勤務していた頃と比べて減るのは当たり前です。
■女性歯科医
高齢の歯科医だけに限らず、パートタイムで勤務している女性歯科医がいることも原因の一つでしょう。例えば女性歯科医は結婚、出産や子育てなどによって生活スタイルが大きく変化します。家庭の状況が変われば、子育てや家事と仕事の両立をするために労働時間が減り、同時に収入も減少していきます。以前は常勤で働いていた女性歯科医も働き方を調整せざるを得ないので、パートタイム勤務にうつった場合も収入が低下します。
■臨床歯科研修医
また別の原因は、臨床歯科研修医などの収入をそのままカウントすると、ワーキングプアに近い月収になるという状況が生じることです。自分の研修医時代の給料を思い出してみると分かりやすいかもしれません。労働時間の点では院長や他のドクターと変わらない、もしくは彼らよりむしろ長く勤務しているとしても、手元に入る収入はほんのわずかなものと感じた事でしょう。この時の研修医の収入が他の勤務医などより低いのもまた当然です。
歯科医は将来性のある職業
確かに歯科医院や歯科医の数が過剰で溢れるほどいるという分析もありますが、地域によっては歯科医不足に悩まされている場所があるのも事実です。また社会の高齢化や、一般人の予防歯科に対する意識が高まっている傾向も伴い、歯科医師はまだまだ必要とされている職業なのです。
もとより、歯科医師は立派な資格でもあります。歯科医になるための専門知識や技術を多く学び、経験も積んで、最後に国家試験に合格してはじめて取得できる、国が認めている国家資格です。そもそも歯科医師というプロフェッショナルな仕事を他の業種と比べることすら、本当はおかしいことではないでしょうか。歯科医として勤務することには誇りを持って良いことです。
新卒の歯科医でも収入は決して低くありません。常勤の歯科医として勤務していれば収入は決してワーキングプアにあたるほど低くはならないでしょう。そして勤務年数が長くなるにつれて、収入もさらに増えていくことが期待できます。
まとめ
現役で勤務している歯科医も歯科医は素晴らしい職業であることを忘れず、歯科医の必要性を理解した上でさらに充実した仕事をできるように心がけていきましょう。