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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科医師が大学病院に勤務するのはスキルアップに繋がるのか

医療の最先端というと大学病院を想像する人は少なくないでしょう。しかし、実際に大学病院で勤務したほうがスキルアップに繫がるのでしょうか。

今回は、大学病院に歯科医師が勤務した場合のスキルアップについてと、勤務する場合は永続的に勤められるのかどうかをご紹介します。

歯科医師の割合

歯科医師の割合
我が国では大多数の歯科医師が、診療所での勤務を選びます。その割合は、平成26年の厚生労働省の調査によると85.4%に達し、医師のそれが32.7%であることを考えると、診療所勤務の割合の高さがわかります。

なお、同調査によると歯科医師全体の57.5%が診療所の開設者、もしくは法人の代表者、28%が診療所の勤務医となっています。したがって、歯科医師のおよそ3人に2人が開業の道を選んでいます。

診療所勤務の比率が高い歯科医師ですが、病院に勤務している歯科医師もいます。その割合は、11.7%です。病院勤務の内訳は、病院の勤務医が2.9%、大学病院が8.7%となっており、診療所の勤務医に次に多いのが大学病院の勤務医になります。

すなわち、歯科医師全体の1割弱が大学病院に勤務しているわけです。診療所に勤務している歯科医師が大多数を占める我が国において、大学病院に勤務するのは歯科医師にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。それは、歯科医師にとってスキルアップに繋がるのでしょうか。

大学病院について

我が国において歯学部がある大学は、国公立大学が12校、私立大学が17校あります。それぞれの大学に、大学病院が附属施設として設けられています。その他に、医学部の口腔外科学講座という形で、医学部附属の大学病院にも歯科医師が勤務出来るところがあります

大学病院では、教育・臨床・研究の3つの機能を有しており、それぞれが組み合わされて運営されています。

医学部と歯学部の大学病院には大きな違いがあります。医学部の大学病院の多くは、総合病院で、かつ高度先進医療の推進のための特定機能病院の指定を受けています。対して、歯学部の大学病院ではそうではなく、特定機能病院の指定を受けているところは多くありません。

医学部附属の大学病院では、歯学部附属のそれにはない、特殊で高度な全身疾患で入院加療をうけている患者の歯科疾患の治療を経験出来ます。高齢社会の進展に伴い、さまざまな既往歴のある患者を診療する機会が増えている昨今の状況では、とても有用な経験になるといえます。

どちらの大学病院でも、臨床研修歯科医師を募集しています。歯科医師は卒後1年間の臨床研修が義務づけられています。歯学部附属の大学病院での研修は法定の1年で終わります。医学部附属の大学病院の場合は、医師の卒後臨床研修が2年間であるので、歯科医師も同じく2年間のプログラムが組んであることがあります。

臨床研修が修了した後は、そのまま同じ大学病院、もしくは他の大学病院に勤務するか、大学院に進むか、歯科診療所に勤務することになります。大学病院に勤務する場合は、臨床だけでなく研究や教育にも従事しなければなりません。

研究

大学病院では、歯学に関する基礎研究や臨床研究を行っています。新薬の開発においては、臨床試験を担うのもその役割の一つです。

歯科医師の大多数が臨床の道を選ぶとはいえ、研究の道に進むことができないわけではありません。臨床医ではなく研究者としての歯科医師人生を歩む歯科医師もいます。

研究者として進むためには大学院に進学するのが、その第一歩となります。通常の4年制大学では卒業して学士として認められます。大学院に進学すると、まず修士過程、その後は博士課程に進み、学位が与えられれば、修士・博士として認められるようになります。

歯科医師の場合は、歯学部を卒業した時点では、学士(歯学)の資格が与えられています。なお、これは歯科医師国家試験の合格には関係ありません。歯科医師国家試験に合格していなくても学士(歯学)です。歯学部が6年制であることにより、修士に準じた扱いを受けることができ、大学院に進学すればいきなり博士課程に進めます。

ところで、大学院によっては、社会人枠が設けられているところがあります。社会人枠を利用出来れば、勤務歯科医を続けながら、週1回大学院に通い、学位の取得を目指すことができます。収入が確保出来るので生活費の面で安心です。

大学院を修了したのちは、そのまま大学病院に残ったり、国内外の様々な研究機関にうつったりして研究を続けるか、臨床医の道に変わって進むことになります。

大学病院に残って臨床とともに研究を続ける場合には、大学院を出て博士号を取得することは大いに意味がありますが、臨床医という道だけを歩む場合は、博士号にさほどの意味はありません。博士号があっても、歯科医師の腕前には関係がないからです。

余談ですが、臨床医にとっての博士号を、「足の裏の米粒」と例えることがあります。とっても困らないし、とらずにそのままでも困らないという意味です。

専門医や認定医

専門医や認定医
日本には様々な学会が設立されており、その多くでは専門医や認定医制度が設けられています。専門医や認定医になるためには、それらの学会に所属している必要がありますが、条件はそれだけではありません。

学会によって異なりますが、学会発表が何例必要、論文執筆が何編必要、指導医や指定研修施設での臨床経験が何年必要などと、定められています。学会での発表は誰でも簡単にできるものではありません。申し込んで受理されなければなりません。

論文も同じで、書けば誰でも認めてもらえるものでもありません。学会発表や論文執筆をするためには、大学病院の教授や准教授など上級スタッフの指導や推薦が必要となります。

大学病院に勤務していれば、そうした指導や推薦が受けられるばかりでなく、大学病院の多くが学会の指定研修施設の指定を受けています。学会の専門医や認定医を目指すなら、大学病院に勤務するメリットは、とても大きいと言えます。

大学病院勤務は永続的にできるのか?

大学病院で勤務する上で、不安に思うのが永続的に勤務し続けることが出来るのかという点です。

歯学部を卒業した後、臨床研修医となり大学病院に勤務します。この間は、給与が保証されています。問題はこのあとです。研修終了後は、医員を目指すことになります。

ところが所属する医局の医員の枠には限りがあります。医員になることが出来れば、給与が支給されます。医員になることが出来なければ、医員の枠が空くまで研究生として研究費を支払いつつ医局に在籍することになります。研究費を払うのも大学院の学費を払うのも同じなので、大学院に進む歯科医師もいます。

大学病院の関連病院に空席が出来れば、その病院の勤務医になることができることもあります。ただし、医師とは異なり、歯科医師の関連病院はそれほど多くないので難しいでしょう。

医員になることができれば、助教を目指して臨床だけでなく研究を行ないます。大学病院が臨床だけでなく研究も担っているので、在籍して上を目指すのなら、研究もし続けなければなりません。

そして、いずれ訪れるのが、教授の交代です。教授は医局の頂点にある立場です。医局の方針や人事を決定する立場にあります。その教授も定年があり、定年になると退職し、新しい教授が公募されます。

新しい教授が着任すると、前任の教授とは医局内部の雰囲気が変わってきます。医局の人事にも影響が出ます。解雇されることはないでしょうが、希望する臨床や研究が続けられるとは限りません。そのとき、医局の方針に従えなければ退職することになります。大学病院に勤務を続けることは出来ますが、希望する立場になれるかどうかは未知数です。

まとめ

我が国では、歯科医師の大多数が診療所での勤務を選んでいます。一方、1割弱は大学病院で勤務しています。

大学病院は、臨床だけでなく研究や教育を担っています。大学病院に勤めるなら、研究や教育も行なわなければなりません。臨床だけでキャリアアップを目指す場合は、大学病院は適していないでしょう。

学会の専門医や認定医の取得を目指すなら大学病院に勤務するのは適しています。学会の専門医や認定を取得する条件に、指定研修病院での勤務歴や学会発表や論文執筆が課されていることが多いからです。大学病院は学会の指定研修病院の認定を受けていたり、学会での発表や論文執筆で指導を受けやすいので、大学病院に勤務していると有利です。

大学病院に勤務する上で不安な要素が、勤務し続けられるかどうかという点です。大学病院の勤務医の枠には限りがあります。医員の枠に空きができなければ、医員になることはできません。医員になることが出来なければ、研究生として医局に籍を確保することになります。

そして、必ずやってくるのが教授の交代です。医局の頂点である教授が交代すると、医局の方針や人事に変化が生じます。解雇されることはないでしょうが、新任の教授の方針に人事や医局の今後が大きく影響されることは間違いありません。もし、新しい方針や人事に従えない場合は、退局せざるを得なくなるかもしれません。

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