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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科医師が急増した背景 需要過剰と将来について

歯科医師の数の過剰問題が取りざたされるようになって久しくなりました。この問題は50年ほど前の歯科医師不足問題に端を発しています。歯科医師不足の解消のために、歯科大学や歯学部が一気に増やされました。

その結果、不足気味だった歯科医師数は、逆に過剰になりました。人口10万人あたり歯科医師50名が適正とされていますが、現状では人口10万人あたり80名を超えるようになっています。コンビニより歯科医院の方が多いなどと、歯科医師の数の多さを指摘する声も多くなりました。こうした現状がある中、歯科医師は将来をどの様に創り上げて行ったらいいのでしょうか。

歯科医師が急増した原因

歯科医師が急増した原因
昭和40年代に、虫歯の多さが問題となりました。いわゆる「虫歯の洪水」です。歯科医師数の不足に原因があるとされ、1県1医学部構想もあり、歯科医師数不足の解消のために歯学部・歯科大学も増やされることになりました。なんと4倍近くも新設されたのです。

昭和40年代は人口10万人あたり歯科医師数30名で、歯学部・歯科大学の定員が1,100人でした。それが、10年ほどの間に定員が3,500名にまで急増しました。結果、平成22年に歯科医師数が10万人を超え、とうとう人口10万人あたり80名に達するに至りました。このため、逆に歯科医師数の過剰が叫ばれるようになりました。

歯科医院はコンビニより多い?

歯科医院の数の多さを示す時、よくいわれるのが「歯科医院はコンビニより多い」という表現です。この結果は確かに正しいです。しかし、正しいからといってこの統計が、実情を正しく反映しているとは限りません。昭和59年度から平成23年度までの歯科医院とコンビニエンスストアの店舗数の推移をみてみます。

昭和59年度が歯科医院数約43,000軒に対し、コンビニエンスストア数7,000軒と歯科医院の数がおよそ6倍でした。平成23年度になると、歯科医院数約68,000軒、コンビニエンスストア数48,000軒とともに増加していますが、その差は非常に縮まってきています。将来逆転する日がくるかもしれません。

歯科医院よりコンビニエンスストアは、新しい業種です。新規参入企業のほうが、旧来の企業の数より少ないのはある意味当然ですし、歯科医院よりコンビニエンスストアの方が多かったことは一度たりとてありません。「歯科医院数はコンビニより多い」といっても、実際のところは新規参入企業であるコンビニエンスストアが歯科医院に追いついてきているというのが実情です。

歯科医師の構成について

歯科医師数に関しては、医師数や薬剤師数と同様に厚生労働省が定期的に調査しています。

■平成26年
医療施設で働く歯科医師が100,965人、男性が78,530人、女性が22,435人と男性の方が女性よりも圧倒的に多いのですが、29歳以下に限ると男性3,941人、女性3,041人とほぼ拮抗しています。すべての年齢層で男性の方が多いのですが、若い年齢層では女性の割合が多くなっていきます。年齢構成で最も多いのが50〜59歳となっていて、平均年齢は50.4歳です。

■平成16年
医療施設で働く歯科医師の総数が92,696人、男性が75,552人、女性が17,144人でした。全ての年齢層で男性の方が多いですが、29歳以下では女性の割合は41.2%と半分弱を占めるようになります。年齢構成で最も多いのが、40〜49歳となっていて、平均年齢は47.4歳です。

■10年間の推移から
この10年間の推移で、年齢構成で最も多い層が40〜49歳から、50〜59歳とちょうど10歳分あがりました。女性歯科医師の割合も上昇しつつあることがわかります。この傾向は今後も続くことと思われます。

歯科医師国家試験の合格者数の推移

歯科医師国家試験の合格者数の推移
歯科医師国家試験に合格して晴れて歯科医師となれるわけですから、新規に参入する歯科医師数は歯科医師国家試験の合格者数をみればわかります。近年は歯科医師国家試験の合格率の低下が顕著となっています。10年前は75%ほどでしたが、ここ数年は60%前半となっています。合格者数は、10年ほど前が2.200人ほど、今では2,000人を切るようになりました。したがって歯科医師数の増加は、年々減少していることがわかります。歯科医師が増加しすぎたことにより、転院割れする歯学部が出てきたことで、歯科医師の質の低下、という意見も出始めていました。平成30年には国会試験の内容も変えることで、歯科医師・歯科治療の質の向上が期待されています。

歯科医師会が考える理想の歯科医師数

人口10万人あたりの歯科医師数が50人が適正であると、国は昭和44年に閣議決定しました。その点から現在の人口10万人あたり歯科医師数80人は過剰であると歯科医師会は訴えています。歯科診療所の患者数の推移では、人口10万人あたり歯科医師数52.5人であった昭和59年、1診療所あたりの患者数25.1人でした。それが平成22年では、人口10万人あたり歯科医院数80.4人、1診療所あたりの患者数18.2人となっています。

国の理想とする人口10万人あたり歯科医師数50人だった昭和59年の1診療所あたりの患者数25人でした。歯科外来の診療日数は平日16日間、木曜・土曜の半日が9日間として、月20.5日とすると、歯科医院数は54500軒が適正であるとしています。ここから算出される理想とする歯科医指数は81,641人というのが、歯科医師会の考えです。

将来の歯科医師数について

現在の新規に参入する歯科医師数は、減少したとはいえ毎年2000人ほどです。
歯科医師会の予測では、新規参入の歯科医師数から平成34年では歯科医師数102787人、人口10万人あたり歯科医師数84人、平成44年では歯科医師数98571人、人口10万人あたり歯科医師数86人と算出しています。
理想とする歯科医師数よりもおよそ2万人ほどオーバーした状態となっています。もし、平成44年に理想とされる歯科医師数にまで削減するためには、新規参入の歯科医師数を1500人ほどにまで減らさなければならなくなります。現状が2000人弱ですから、さらに500人ほど減らす計算です。

まとめ

歯科医師数の適正な数を求めるのはとても難しいです。
ここでは歯科医師会のいう82000人を取り上げましたが、開業歯科医の中では75000人であるという考え方もあります。

また、需給問題についても、歯科医師会では平成44年になってもまだ過剰であるとしていますが、私立歯科大学協会の考え方では今から10年後には不足していくとしています。
これは、将来を推計するための統計の根拠によって異なるものと思われます。ですから、どちらが正しいというのは、実際にその時にならないとわからないのではないかと思います。
歯科医師が高齢化していることは明らかです。そして、歯科医師には定年がないので、新規参入が続く限り、数字上の歯科医師数は増えていきます。歯科医院も廃業しない限り減りませんし、年数に制限もありません。

しかし、高齢化に伴い歯科医師1人が単位時間あたりに診療出来る患者数は減ってきます。もし、夫婦共に歯科医師の場合、一緒に開業すれば歯科医院の新規参入数はその分減ります。女性歯科医師の増加に伴い、歯科医院数の純増数がこの後どう変化していくかは、いままでの統計では予測出来ないでしょう。そして、結婚や出産を契機に臨床を離れていく女性歯科医師も増えると思われますが、これも予測は困難です。

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