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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

小児歯科医の今後の課題と必要性について

専門としての小児歯科医・小児歯科衛生士が、不足していることをご存知でしょうか。ここでは、小児歯科医の重要性や必要性を示し、小児歯科の普及の対策や、小児歯科医・小児歯科衛生士を増やすための対策をご紹介します。

小児歯科の重要性

小児歯科の重要性

小児歯科は、生涯の口腔の健康を守る入り口として、非常に重要な役割があるといっても過言ではありません。「こどもは小さな大人ではない」と言われているのと同様に、乳歯には乳歯の特徴があり、永久歯のナビゲーターとして大切な役割を担っています。しかし、こどもの歯を守るためには、こども自身での十分な管理は難しく、保護者の補助は不可欠です。またその保護者を歯科医師が援護することが望ましく、信頼できる小児歯科の存在は、こどもの健やかな成長の助けとなります。

もし保護者や歯科医師が、「乳歯は生え替わるもの」という低い意識で、その場しのぎの治療をこどもに受けさせているならば、こどもの口腔内環境は将来良い状態を保てるとは、言い難くなります。小児歯科の歯科医師は、こども特有の口腔内環境の深い知識をもって、長期的な計画の元に最善の治療を施すことが求められます。食習慣や歯磨き習慣、また指しゃぶりや舌癖・口唇癖等の悪習慣も、治療に深く関与しますので、こども本人以上に保護者に対する指導が必要となります。そのためには、年齢段階に応じた、こどもの精神的・身体的な発達・発育の特徴も熟知していることは不可欠です。こども本人だけでなくその保護者とのコミュニケーションも円滑になり、よりよい治療を施すことができるでしょう。

こども及び保護者にきちんとした教育をすることができたならば、そのこども自身が自分の口腔に関心を持ち、予防や治療の必要性を理解し、少しずつ自己管理できるようになります。そしていずれ自分の子や孫に、小児歯科で教育された知識が生かされるようになるのです。
また、超高齢化社会の現在、生涯にわたり口腔の健康を保持していくためには、小児期からの歯科疾患の予防と治療はとても重要です。そして口腔の健康維持が全身の健康維持に深い関わりがあることも、様々な研究から明らかになっています。歯科だけでなく医科の医療費も軽減できることからも、小児歯科の役割は大きいと言えます。


小児歯科医・小児歯科衛生士の現状

「小児歯科」と標榜している歯科医院は全国に数万件歯科医師は約40,000名いるといわれていますが、そのうち小児歯科学会員は4,500名、小児歯科専門医は約1,200名、小児歯科学会認定の小児歯科衛生士は数百名しかいません。特に、小児歯科専門医になる為には、5年以上小児歯科学会に所属し、指定の医療機関で5以上の臨床を経験や試験などがあり、高い知識と技術が必要となります。資格を取得後も5年ごとに更新され、学術大会の参加や報告を行うことが義務づけられています。
それに対して15歳未満のこどもの数は、平成27年の総務省の発表では1617万名ですので、十分な小児歯科医療を受けるには小児歯科医は少なく、重要な課題のひとつとなっています。


「小児歯科の普及」と「小児歯科医師を増やすための対策」

「小児歯科の普及」と「小児歯科医師を増やすための対策」

大学歯学部を卒業して小児歯科の医局に残る歯科医師は、全国的に減少傾向にあります。その原因は小児歯科医療に関わる保険収入は相対的に低いため、小児歯科医院の経営問題もあるのが現状です。日本小児歯科学会から、いくつかの対策が挙げられています。

●小児歯科を標榜する歯科医師は、日本小児歯科学会会員になり小児歯科専門医の資格を取れるように努力すること
●小児期の患者管理の高度化のため、カルテをはじめ、様々な資料の収集と分析能力の向上を図ること
●小児歯科だけではなく関連する矯正歯科、予防歯科をはじめ全身管理を含む幅広い歯科医療・保健の知識と技術の研鑽と向上を図ること
●患児の転院もあるため、小児歯科専門医共通の資料様式の作成を検討すること
●小児歯科医療の向上のため、小児歯科専門で歯科医院経営が成り立つような社会保険における適切な配慮、個々の歯科医師の努力と創意工夫をすること

日本小児歯科学会は、こどもの笑顔とともに「小児歯科医療の発展と向上」「国民の福祉と医療の発展に寄与すること」として、学びや情報の場を広く提供しています。


小児歯科衛生士を増やすための対策

日本小児歯科学会では、小児歯科衛生士を増やす対策として、いくつか提言しています。

●小児期からの歯科医療や保健の向上のためには、地方自治体の保健センターや保健所に、歯科衛生士の配置を義務化すること
●予防処置と保健指導、口腔機能の訓練が重要である小児期での歯科医療の充実のために、歯科衛生士の役割に配慮した保険点数の評価の向上
●日本小児歯科学会の会員となり、認定歯科衛生士の資格を取得することにより、歯科衛生士としての活躍の場を拡大していくこと

妊婦に対する口腔衛生指導を徹底するならば、知識不足によるこどもの口腔内環境の悪化を、未然に防ぐことができます。1歳半検診で気づくのでは、遅いこともあるのです。


小児歯科医療向上のための国民の意識の現状と課題および対策

小児歯科医療向上のための国民の意識の現状と課題および対策

小児歯科医療の向上のためには、国民がその意義と必要性を理解していなければ進みません。しかし現状は、二極化しており非常に意識が高い保護者と、無関心な保護者がいます。意識が高い保護者は「かかりつけ医」を持っていますが、無関心な保護者は「かかりつけ医」を持たず、痛くなったら歯科医院へ行けばよいと言う意識な方もいます。無関心な保護者には以下のような対策が挙げられます。

●小児期の歯科疾患の予防・治療の重要性を知らせること
●すべての小児に「かかりつけ医」を持たせ、予防・治療・管理を徹底すること
●口腔の健康が、全身の健康に関与することを知らせること


まとめ

現在の少子高齢化社会において、日本の将来を担うのは高齢者ではなく、「こども」であるということは言うまでもありません。小児期の歯科医療・保健対策がとても重要であり、その中心機関である社会保険制度がより良い制度として向上する必要があります。また歯科医師、歯科衛生士においても、小児歯科は、こどもの将来に影響することを念頭に置き、知識や技術の向上を続けていくことが必要です。


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