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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科医師の仕事さまざまな現場でのやりがいや活動

歯科医師の仕事というと、歯科医院での虫歯の治療、抜歯、歯周病の治療などをイメージしがちですが、実はそれ以外にも歯科医師の仕事はあります。たとえば、工場などの事業場における産業歯科医です。また、労働衛生コンサルタントという仕事もあります。どちらも、法律に明記された歯科医師の従事可能な仕事のひとつです。実際、産業衛生に関する分野で、産業歯科医や労働衛生コンサルタントとして活躍している歯科医師もたくさんいます。そこで、産業歯科医や労働衛生コンサルタントについてまとめてみました。

産業歯科医とは

産業歯科医とは

■産業医と産業歯科医の法律上の違い
産業医という職業を聞いたことはありますか。産業医は、事業場における労働者の健康管理を行うために、専門的な立場から事業主に対して指導や助言を行う医師のことです。労働安全衛生法に、一定規模の事業場は産業医を選任する義務が明記されています。
ところが、産業歯科医は、産業医と異なり、労働安全衛生法ではなく、労働安全衛生規則の見出しにあるのみで、労働安全衛生法の条文には規定されていません。ですから、産業医のように事業場に選任する義務は課されていません。

■産業歯科医の役目
歯科医師の産業衛生上の役割に健康診断があります。これは、労働安全衛生法の第66条にありまして、歯科医師が健康診断について行える旨、規定されています。
では、その対象となる業務は何でしょうか。
それは、塩酸・硝酸・硫酸・亜硫酸・フッ化水素・黄リン・その他の歯又はその支持組織に有害な物のガス・蒸気又は粉じんを発散する場所における業務に従事している労働者です。こうした労働者を常時50人以上業務に就かせている場合、事業主は、労働者に対しては、雇い入れ時、当該業務への配置替えの時、そしてその後6か月以内おきに1回定期的に歯科医師による健康診断を受けさせなければなりません。これは、労働安全衛生規則第48条に規定されています。そして、この健康診断の結果により、事業主に対し、歯科的な意見を述べたり、労働者の健康管理のために必要な勧告を行ったりすることができます。
これが産業衛生の分野において、産業歯科医として歯科医師が活躍できる根拠になっています。

■産業歯科医になるためには
産業歯科医になるためには、年1回日本歯科医師会にて行なわれている産業歯科医研修を受講する必要があります。これを受講すれば、産業歯科医の免状を発行してもらえます。ただし、これは産業医のような法律に規定された資格ではなく、あくまでも日本歯科医師会が認定する資格でしかありません。しかし、1日の講習を受けるだけなので、後述する産業医よりは挑戦しやすいと言えます。

■産業医になるためには
産業医に関しては、労働安全衛生法に資格要件が記載されており、その条件に適合しなければなりません。例えば、産業歯科医のように、日本医師会の産業医学基礎研修などを受講する必要があるのですが、産業医の場合、1時間の研修を1単位とする基礎研修を50単位以上も受講しなければなりません。すなわち、産業歯科医より格段にハードルが高くなっています。
しかし、それほど長い時間講習を受けなくても産業医になれる道があります。それは、労働衛生コンサルタントになることです。


労働衛生コンサルタントとは

労働衛生コンサルタントとは、労働安全衛生法第84条に基づき労働衛生コンサルタント名簿に登録したものを言います。この労働衛生コンサルタント名簿に登録してもらうには、労働安全衛生法第83条に規定されている労働衛生コンサルタント試験に合格しなければなりません。すなわち、労働衛生コンサルタントは、歯科医師と同じく国家資格なのです。

■労働衛生コンサルタントの業務
労働衛生コンサルタントの業務は、労働安全衛生法第81条第2項に規定されています。すなわち、「労働衛生コンサルタントの名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の衛生の水準の向上を図るため、事業場の衛生についての診断及びこれに基づく指導を行うこと」とされています。この業務に当たるに際し、信用を失墜させる行為や、守秘義務に違反する行為を行うことは、同法第86条においてかたく禁止されています。特に秘密を漏えいした場合の罰則については、同法第117条に「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる」と規定されています。

■労働衛生コンサルタントになるためには
労働衛生コンタルタントになるためには、労働衛生コンタルタント試験を受けて合格する必要があります。労働衛生コンサルタント試験は、試験区分が保健衛生と労働衛生工学に分かれており、そのどちらかを受験します。歯科医師は保健衛生を受ける方がいいでしょう。なお、どちらを受けても、合格したのちの資格には違いはありません。
労働衛生コンタルタント試験は、歯科医師なら誰でも受けることができますが、毎年秋頃に日本歯科医師会が行っている3日間にわたる産業医学講習会を受講すれば、一次試験である筆記試験を免除してもらえます。二次試験は、口述試験となります。口述試験は、毎年1月ごろに東京と大阪で行われ、概ね15分程度です。試験官は3名で代わる代わる質問されます。
試験の内容は、「労働衛生のしおり」という中央労働災害防止協会の発行する本の内容に準じて質問されます。日本歯科医師会が、産業医学講習会の翌月あたりに労働衛生コンサルタント試験受験講習会を開催していますが、産業衛生分野での実務経験に基づいた質問をされます。そのため、実務経験がなければ、難しいのが実情です。
こうしたこともあり合格率は高くありません。産業医を目指す医師も、労働衛生コンサルタント試験に合格すれば、50単位もの講習を受ける必要はないのですが、難易度が高いため、産業医学基礎研修を受講する場合の方が多いようです。


まとめ

まとめ

歯科医師の仕事といえば歯科治療だけと思われがちですが、実は産業衛生の分野にも歯科医師に出来る仕事があり、活躍している歯科医師も多いです。具体的には、産業歯科医や労働衛生コンサルタントという仕事があります。
産業歯科医は、塩酸・硝酸・硫酸・亜硫酸・フッ化水素・黄リン・その他の歯又はその支持組織に有害な物のガス・蒸気又は粉じんを発散する場所における業務に従事している労働者を常時50名以上業務に従事させている事業場における、労働者の健康診断を主に行います。健康診断の結果をもとに、事業主に対し、歯科的な意見を述べたり、労働者の健康管理のために必要な勧告を行ったりすることができます。もちろん、それ以外の事業場で歯科医師が健康診断をしてはならないというわけではありません。該当しない事業場でも歯科医師が健康診断を通じて、活躍していることもあります。
産業歯科医になるには日本歯科医師会の産業歯科医研修を受ければ認められます。ただし、産業医が労働安全衛生法に資格、職務、選任に関する条項を設けて記載された資格であることに対し、産業歯科医は、そうではないという大きな違いがあります。なお、産業医になるためには、産業医学基礎研修を50単位(1単位1時間)受講するか、後述する労働衛生コンサルタント試験に合格するか、などの資格要件があります。
労働衛生コンサルタントは、労働者の衛生水準の向上のために、事業場の衛生についての診断と指導を行います。労働衛生コンサルタントになるためには、労働衛生コンサルタント試験に合格する必要があります。歯科医師であれば受験することができます。毎年秋に行われている産業医学講習会を受講すれば、筆記試験が免除され、口述試験だけで受験することができます。口述試験の内容は、労働衛生のしおりという本に基づいて質問されますが、産業衛生分野での実務経験についての質問もあるので、経験がなければ合格は難しいのが実情です。しかし、合格者がいないわけではなく、合格し、労働衛生コンサルタントとして活躍している歯科医師も全国各地にいます。

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