生涯研修事業とは|歯科医師が勉強し続けることの大切さ
この機会に歯科医師が国家資格取得後も勉強し続けることについての意義を改めて考えてみましょう。最新歯科学や治療法の知識をもった歯科医師を患者側も求めているということを知っていただき、今後の歯科医師人生に繋げていただきたいと思います。
歯科医師が勉強し続けることの意義
日々訪れる患者と向き合い、症例をこなしている中で得るものも大きいのですが、実際には時代の流れで歯科医療は大きく変化するものです。日々経験を積むことに加え、常に新しい技術や知識に敏感であることも必要なのではないでしょうか。
■歯科医師の国家資格を持っているだけではダメ?
中には、歯科医師としての臨床経験は長くても、大学卒業後に学会や研修会セミナーなどに参加したことが無いという歯科医師もいます。
確かに、保険診療内でのレベルの歯科医療であれば、経験を重ねることで問題なくこなしていくことはできます。しかし昨今、患者の知識や関心度も向上してきています。また歯科医院数の増加によって、患者獲得のためには保険外の最新治療や最新設備も求められる時代になっているのです。
■歯科医師の「生涯研修事業」
歯科医師ひとりひとりが技術の向上と学術研鑽を図るための機会を得ることを目的とした研修制度のことです。日本歯科医師会をはじめとし、日本学校歯科医師会や都道府県ごとの歯科医師会単位で取り組んでいるものもあります。
このような制度を導入し認定を受けることは、歯科医師にとってもモチベーションを高く持つことができますし、患者側も歯科を受診する際の安心感・信頼感につながります。
生涯研修事業としての取り組み
■日本歯科医師会の取り組み
日本歯科医師会では、会員の歯科医師を対象に学術研修事業を実施し、積極的に研鑚に努めています。また、都道府県歯科医師会と協力し、「生涯研修セミナー」の実施を通じて、研修教材の制作や配信等を通じた研修事業もおこなっています。
このように、歯科医師が時代の流れと共に学び続けることのできる場の提供をしている事業なのです。
■日本学校歯科医師会の取り組み
幼児、児童生徒の歯科保健向上を目的として活動を行っている日本学校歯科医師会でも会員向けに生涯研修事業をおこなっています。
「全ての学校歯科医が歯科医師としての専門性を活かしながら教育者としての資質を備え、積極的に学校歯科保健活動を推進し、生涯にわたってその資質の維持と向上を図り幼児、児童生徒及び教職員の歯・口腔の健康増進に貢献すること」を目標に、全国で研修をおこなっているのです。
■都道府県ごとの医師会の取り組み
都道府県単位の医師会で生涯研修事業に取り組んでいる場合もあります。たとえば大阪府医師会は日本医師会の生涯教育制度を補完するものとして位置づけし取り組んでいます。実施にあたり郡市区等医師会、本会医学会協力医会および各種研究会等と連携してシステムの充実を図っています。
このように研修会、講習会、ワークショップの開催をおこなっています。また、体験学習、医師国家試験問題作成、、臨床実習、臨床研修制度における指導など実践的なものもあります。より実践的なものとしては、医学学術論文、医学著書の執筆、)日本医師会雑誌を利用した解答、日本医師会e-ラーニングによる解答などがあり、カリキュラムはさまざまです。
■どのようにして認定される?
主催する歯科医師会等が主催する研修セミナーに出席し研修を受けることによって、生涯研修事業の認定証が交付されます。当たり前のことのようですが、コツコツと学びを深めている歯科医師であるという証のひとつといえるでしょう。
自慢する必要は無いものかもしれませんが、受付などに飾っておくことで患者側からの信頼度も向上することにはつながるかもしれません。
患者が求める歯科医師像とは
■患者が現在の歯科医療に望むこととは
厚生労働省のホームページに掲載されている歯科専門職の資質向上検討会歯科医師ワーキンググループが発表した「患者が求める歯科医師とは」によると、以下のような回答が挙げられます。
・確かな技術
・検査や治療前後の説明
・ホスピタリティのある対応
・医療費の明細と説明
・衛生的な空間と治療
・プライバシー保護
・役割が確立したチーム医療
このことからわかるように、歯科医療全体に求めることではありますが、これらの要望を満たしている歯科医師が求められているといっても過言ではありません。
今や患者は待っていてもやって来る時代では無くなってきています。逆に患者が望む歯科医院になるために、努力を惜しまない歯科医師が求められる時代なのです。
■患者が歯科医師に求めること
同じように虫歯の治療を受けるのであれば、10年間ずっと同じ方法で治療している歯科医師と、日々研究を重ね最新の技術を導入している歯科医師どちらに診てもらいたいでしょうか。
そして勉強熱心な歯科医師であるかをどこでどう判断して歯科医院を選択しているでしょうか。このことからも「生涯研修事業」に取り組む意義が見えてくると思います。
まとめ
そこで、日々の診療をこなしながらも学会参加や研修会セミナーに参加した実績は、もちろん自身のためにもなりますが患者側も「最新の技術を受けたい」と感じる人が多いのです。
これからの時代は、ますます歯科医師の生涯研修事業への理解と参加が求められている時代になってくることでしょう。