Quick Search
気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

医師との連携!チーム医療の中の歯科医師

チーム医療という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか。近年、医療の高度化に伴い、医師や歯科医師に専門性が求められる様になりました。

一方で専門性に特化していくと、場合によっては十分な医療が施せないことになります。医師や歯科医師は自分自身の得意とする専門分野に関してはエキスパートになっていくのですが、それ以外の分野についてはそうではなくなってしまいます。

しかし、病気は1つの症状だけで終わることはありません。さまざまな症状が重なっていることも多く、さまざまな診療科の連携が必要となってきました。それは、歯科医師の担当する歯科医療についても同じです。そこで、歯科医師と医師の連携した医療について紹介したいと思います。

チーム医療とは

チーム医療とは

さまざまな医療の専門家が連携して医療を行なう必要が生まれてきました。そこで提唱されたものが『チーム医療」です。

チーム医療とは、「医療とは、医師や歯科医師が単独で行うものではなく、看護師、歯科衛生士、検査技師、放射線技師など、その他の医療の専門職が連携して行なうべきものである」というコンセプトです。

ですから、医師が専門外の診療科の医師や歯科医師と連携するだけではありません。医療に関する職種すべてが、その連携対象となってきます。

■歯科医師にとってのチーム医療
歯科医師は、開設者か勤務医かに関係なくその85%が歯科診療所に勤務しています。病院に勤務している歯科医師は大学病院を含めても12%に過ぎません。病院に勤務している歯科医師が、病院の他の診療科の医師や看護師などと連携していることは、想像しやすいと思います。

一方、歯科医師の大多数が勤務している歯科診療所では、他職種との連携というと歯科衛生士や歯科技工士くらいしかなさそうに思われがちです。ですが、実は在宅医療が推進される現在では、医師や看護師との連携が重要となってきています。


歯科医師に関係の深い連携分野

歯科医師が病院内において医師と連携している分野で、特に関係の深いものを列記してみました。なお、名称については統一した決まりはありませんので、それぞれの医療施設において独自の名称がつけられています。ここでは、一般的と思われる名称で紹介させていただきます。

■口腔ケア
口腔ケアは、むし歯や歯周病の予防によるお口の健康増進だけでなく、肺炎や感染性心内膜炎などの感染症の予防、全身状態の改善などの目的にも行なわれます。口腔ケアを行なうことにより、肺炎の減少とそれによる死亡率の低下、抗菌薬をはじめとする薬剤費の低減効果もあります。

この口腔ケアは、医科での単独実施よりも、歯科と連携して行なうことを国も勧めています。それは保険診療の診療報酬においても表されており、周術期口腔機能管理という項目が設けられています。これは、悪性腫瘍や心臓血管系の病気により手術を行なう医科の入院患者に歯科が介入して口腔ケアを行なうことが目的に設けられた項目です。すなわち、医科と歯科の連携のための項目といえます。

■栄養支援対策・栄養サポート
食べるということは、①食べ物を認識する、②口に入れて噛む、③喉に送る、④飲み込む、⑤胃に送るの5段階で構成されています。歯科医師の仕事の中心は、お口にあるのですが、このうち②③④に密接に関連しています。
食べ物をうまく食べることが出来ない病気を摂食嚥下障害といいます。この治療には、医師だけでなく、お口の専門家である歯科医師も連携する必要があります。さもないと、食べるという機能を回復させることは出来なくなります。

そして歯科医師だけでなく、看護師、歯科衛生士、検査技師、リハビリテーションなどいろいろな医療職が集まり、栄養サポートチームを編成して摂食嚥下障害の改善にあたっています。
なお、平成28年度の診療報酬の改訂により、歯科医師が栄養サポートチームに加わった場合、歯科医師連携加算を算定することが出来る様になりました。ここでも、国が医師と歯科医師の連携を評価しているとみることができます。

■睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群を診断することは、歯科医師には認められていません。睡眠時無呼吸症候群の治療法に、口腔内装置というものがあります。いわゆる睡眠時無呼吸症候群用マウスピースです。これは、歯科医師しか作ることは出来ません。睡眠時無呼吸症候群を診断した医師からの情報提供に基づいて作製します。

■糖尿病
糖尿病と歯周病の関連性が、近年、注目されています。糖尿病になりますと、免疫力(身体が持っている細菌や異物などへの抵抗力のことです)が低下したり、血液の流れが悪くなったりします。これにより歯周病になりやすくなります。また、歯周病も糖尿病を悪化させることが知られています。これは、歯周病がインスリンの作用を阻害するTNF-αという因子の産生を促すからです。重症な歯周病を治療するとHbA1cという糖尿病の指標が改善できることが明らかになっています。糖尿病の治療においても、歯科医師と医師が連携した治療が必要となります。

■心臓疾患
歯周病と動脈硬化の関連性が指摘されています。動脈硬化の原因に血液中のコレステロールやタバコ、高血圧症などが指摘されていますが、これでは説明のつかない場合、歯周病の関与が疑われています。
また、感染性心内膜炎という心臓病において、お口の中の細菌の関わりが指摘されています。感染性心内膜炎をおこした患者から検出された細菌の3分の1がお口の中の細菌と同じであったという報告もあります。
この点からも、心臓疾患の患者の治療に、歯科医師が連携することは有意義であると考えられます。


病院内での各種委員会においての連携

病院内での各種委員会においての連携

病院などの医療施設において設けられている各種委員会・会議にも歯科医師の出席が求められています。

■院内感染対策委員会
院内感染とは、病院や診療所などの医療施設内において、もともとの疾患とは別の新たな細菌もしくはウィルスなどの病原体に感染することとされます。院内感染対策とは、院内感染を防ぐための対策のことです。院内感染対策の対象となるのは、患者だけでなく医療従事者も含まれます。

院内感染対策は、それぞれの診療部門が単独で行っていても効果は出ません。医療施設内でまとめて初めて有効な対策を講じることが出来ます。例えば、歯科であれば、抜歯鉗子の様な観血的処置を行なうものから、スパチュラまで、他の診療科であればまずお目にかかることのない器材がたくさんあります。他科の医師や看護師などは、その用途さえわからないものあります。これが、歯科が関与する必要がある所以です。
また、歯科だけでは、気がつかない点もあります。他職種からみた視点で問題点を洗い出すことも効果的です。同じ理由で、歯科医師も、病院内の感染対策巡視に加わっています。

■医療事故対策委員会
院内での医療事故の対策会議でも歯科医師は医師とともに出席することがあります。医療は人間のすることである以上、いつ事故が起こってもおかしくありません。歯科医療は、基本的には外科治療が中心となりますが、医師や看護師は歯科治療について知らないことが多いので、歯科医師もメンバーに入るようになります。もちろん、歯科医師も他科や他部門の事故対策の検討に加わります。

まとめ

医療の高度化や専門化にともない、横断的な医療体制の構築が求められる様になりました。医師や歯科医師、看護師、歯科衛生士、臨床検査技師などが集まり、医療を行なうことが行なわれています。こうした医療従事者の集合体による医療行為をチーム医療といいます。

口腔ケアや栄養支援など治療行為だけでなく、院内感染対策委員会や医療事故防止委員会など各種対策会議においても歯科医師の出席が求められています。
こうした医療連携の推進のために、保険診療においても医科と歯科の連携に関する点数が設けられる様になりました。

歯科医師は歯科医療だけをしていればいい時代から、歯科医師もこれからはチーム医療の一翼を担う存在として、医師と連携して活躍することが期待される時代になりました。すなわち、歯科医師も歯科以外の知識をもっていることが求められる時代といえるでしょう。

お問い合わせ
当サイトに掲載されているコラムの内容や求人情報に関するご質問は左のボタンからお問い合わせください。

^