Quick Search
気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

歯科医院勤務だけが歯医者の道じゃない!歯科麻酔専門医という仕事

歯医者であれば歯科麻酔専門医の存在を知らないはずはありませんが、一般の人にはほとんど知られていません。
また歯医者であっても「歯科麻酔専門医と一緒に仕事をしたことがない」という先生も珍しくないでしょう。
そのため、一般の歯科クリニックの院長や勤務歯科医は、歯科麻酔専門医の「いまの仕事と業務」についてほとんど知らないのではないでしょうか。
実は歯科麻酔専門医は、ひそかに活躍の場を増やしているのです。

強い恐怖心を持つ患者さんの「味方」

強い恐怖心を持つ患者さんの「味方」

歯科麻酔専門医が活躍している現場の1つが、東京歯科大学・千葉歯科医療センター(千葉県(千葉市美浜区)のリラックス治療外来です。
ここで行っている歯科治療は原則、「普通の治療」です。しかしこちらのリラックス治療外来では、患者さんにリラックスしてもらった状態で治療を行っているのです。

このように説明すると「うちのクリニックでも患者さんにリラックスしてもらっている」と反論されそうですが、こちらのリラックス治療外来の「リラックスのさせ方」は、一般の歯科クリニックとは異なるのです。
「普通の治療」でも、全身麻酔下で歯科治療を行っているのです。

ただ、すべての患者さんがリラックス治療外来の対象となるわけではありません。対象となる患者さんは次のような方です。

●歯科治療に強い恐怖心を持っている人
●嘔吐反射が強い人
●これまで歯科治療中に気分不快に陥ったことがある人
●循環器疾患を持っている人や高血圧の人
●脳血管障害や認知症などを発症して中途障害を負った人
●長時間の口腔外科手術を受ける人

すなわち「普通の治療」を受けることが困難な患者さんだけが、リラックス治療外来で受診することができるのです。


リラックス治療外来で使われる麻酔法

東京歯科大学・千葉歯科医療センターのリラックス治療外来では、全身麻酔と笑気ガスや鎮静薬を使った精神鎮静法の2種類の麻酔法を使っています。

全身麻酔は、意識を失わせて痛みを感じさせない方法です。普通は一泊程度の入院が必要ですが、最近は日帰り治療でも全身麻酔下治療を実施できるようになっています。
精神鎮静法は、痛みを麻痺させるのではなく、薬によって緊張感と恐怖感を抑制する手法です。

この麻酔法を実施、管理するのが歯科麻酔専門医たちです。
また歯科麻酔専門医は治療中、血圧計や心電図などでモニタリングして患者さんの全身を管理します。


静止した状態をとることが難しい障害者への治療でも活躍

自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害や、ダウン症などの知的障害を持ったお子さんは、静かに歯科治療チェアに座ることができません。
また、てんかんや脳性麻痺の患者さんも「動いてしまう」ことから、一般の歯科クリニックでは治療が困難になってしまいます。
そこで歯科麻酔専門医による全身麻酔下での治療が有益になります。
すなわち歯科麻酔専門医は、いつも困難な治療現場に立ち会うことになるのです。大変な一方で、とてもやりがいのある業務といえるでしょう。


歯科麻酔専門医になるには

歯科麻酔専門医になるには

歯科麻酔科業務にあたるには、一般社団法人日本歯科麻酔学会が認定する歯科麻酔専門医の資格を保有していたほうがよいでしょう。
歯科麻酔専門医の資格を取得するには、歯科麻酔専門医試験に合格する必要があります。試験では、筆記試験と口頭試問の2つを課されます。

ただどの歯科医でも歯科麻酔専門医試験を受験できるわけではありません。
受験資格は次のとおりです。
●歯科医師免許証を保有していること
●学会の認定医資格を持っていること
●5年以上学会に所属していること
●歯科麻酔分野の業務に専従していること
●歯科麻酔学指導施設の所属長が認めた者
●認定医取得後、全身麻酔や疼痛治療症例を担当または指導していること
●専門医にふさわしい業績を持っていること
●最近5年間の全身麻酔症例および全身管理症例および疼痛治療症例のなかから500例を一覧表にして提出すること

かなりハードルが高い資格といえます。


歯科麻酔専門医の業務のやりがい

歯科麻酔専門医は2018年5月現在、日本全国に200人弱しかいません。それだけに先ほどみたリラックス治療外来のような歯科治療受診困難者への対応は、まだほとんど社会に浸透していません。
しかし障害があって一般的な歯科クリニックに通えない人たちは、日常の歯磨きもままならないことが多いので、実は彼・彼女たちこそ歯科治療を必要としているのです。
こうしたことから、歯科麻酔専門医はこれからますます活躍の場を広げていくことができるでしょう。


まとめ~インプラント手術にも、一般歯科治療にも

歯科麻酔専門医は、インプラント手術でも活躍しています。インプラント手術は通常、居居所麻酔で行い、執刀する歯科医が自身で麻酔の処置をします。
しかしインプラントの本数が多く手術が長時間に及ぶ場合、患者さんが全身麻酔を要望することがあります。しかし歯科麻酔専門医が少ないことから、全身麻酔下でのインプラント手術を行える歯科クリニックは限られています。
そのためインプラント治療件数を増やしたい歯科クリニックは、歯科麻酔科専門医の力を必要としているのです。
また歯科麻酔科専門医のなかには、麻酔業務をしながら、一般歯科治療に携わっている先生もいます。
このように歯科麻酔科専門医は、業の幅をかなり広げることができるのです。


お問い合わせ
当サイトに掲載されているコラムの内容や求人情報に関するご質問は左のボタンからお問い合わせください。

^