Quick Search
気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

スタッフの安全を考える|歯科医院が実施すべき減菌について

患者が歯科医院を選ぶ基準のひとつに「消毒・滅菌がきちんと行われているかどうか」があります。そして歯科治療における感染の危険は患者だけではなく、スタッフにも当然及ぶわけです。歯科医院としては、患者とスタッフの安全と感染予防についてどうあるべきかをもう一度考えてみましょう。

あなたの歯科医院は安全対策や予防がきちんと取られていますか

あなたの歯科医院は安全対策や予防がきちんと取られていますか

歯科は、内科と異なり多量の血液や唾液を伴う治療であるため、常に細菌感染の危険と隣り合わせです。患者側としても、歯科医療における細菌感染の可能性が気になります。今はネットで簡単に情報が得られる時代なので、下手をすれば、歯科業界の人間よりも患者のほうが肝炎やその他血液、飛沫感染などについてよく知っているケースもあります。

このような患者は「この歯科医院は安全」「あっちは滅菌がちゃんとされていないようだ」など、医院の下調べをしっかりするため、来院予約を取る取らない以前の問題となってしまいます。

■腕が良くても安全管理が整っていなければ患者の足は遠のく
家族や大切な人に自分の勤務先で治療を受けて欲しいと思えますか。日常の診療から見て腕前は確か、見立ても予後も良く、信頼できる歯科医師であり、是非とも自院で治療を受けてもらいたいと思う一方で、安全対策がほとんどなされていないから、受けさせたくないと葛藤することはありませんか。

感染に対するモラルの低さだけではなく、コストを抑えるために減菌をきちんと行わない、あるいはスタッフが足りないからそこまで気も手も回らないなど理由はいくつか考えられるでしょう。

しかし情報化社会の今、それでは患者だけでなく、働くスタッフに対しても何の責任も負わないことになります。患者は「あの歯科医院で治療したけど、不潔だった。」と感じ、スタッフは「減菌や安全対策が行われていないこの医院で、患者さんも自分も細菌感染したらどうしよう」と不安に感じてしまうことでしょう。

歯科医院側は、患者と働くスタッフに対して安全を確保するという義務を果たすべきですが、残念ながらその考えが全ての歯科医院に浸透しているとはとても言えないのが、今の日本の歯科業界の現状のようです。


滅菌・感染予防から問われる院長の資質

一時期、タービンの使いまわしによる院内感染がニュースとして取り上げられ、このことをきっかけに歯科医療と院内感染、滅菌について関心事として知られるようになりました。しかし今もタービンやコントラを滅菌せず、治療後SPワッテで拭いただけでユニットにつけたまま、次の患者の治療を行う歯科医院は残念ながらまだ存在しているようです。

また、グローブの使い回しも大きな問題を引き起こしかねません。グローブは未だ破れるまで洗って使うという、歯科医院も存在しています。

実際にいつ起こるかもしれない院内感染への危機管理ができていないことが原因です。「自院であれば問題無い。大丈夫。」そういった意識を持った歯科医院への就職や転職は、絶対に避けたいですよね。

一見、感染の被害が及ぶのは患者のみのように感じますが、その治療に携わる院内スタッフへの感染も十分に考えられます。

いざ就職や転職してから、その勤務先がご紹介したような危険な管理をしている歯科医院である可能性もあります。慎重に就職先を選ぶことも、まず自身で行うことのできる感染予防ことを忘れないでください。


どこまでが最低ライン?滅菌はどこまで行うべきなのか?

では患者が安心して治療を受けるため、またスタッフが安全に働くために行うべき対策を再度考えてみます。

■使い捨てできるものは患者ごとに取り替えるべき
使い捨てができる消耗品、例えばグローブや紙コップ、エプロンなどは患者ごとに取り替えることが基本です。特にグローブは、前の患者に使用したものを再び次の患者に使うことは厳禁です。器具の滅菌も基本セット同様、タービンやコントラ類も一度使ったものはオートクレーブ滅菌をかけることが、院内感染予防の基本です。

オートクレーブのクラスは上位のものがより望ましいでしょうが、まず感染防止意識を持つことが安全管理において非常に重要です。シリコン製のものや滅菌をすると割れてしまうもの以外、治療で使用したものは全て滅菌することが最低ラインです。当たり前のことですが、この意識を再認識することが、歯科医療現場における基本中の基本です。

■感染は器具からだけとは限らない
ご紹介してきたように、歯科医院では器具の使いまわしによる感染の可能性もありますが、大勢の患者様が出入りされる分、ウイルス感染による可能性もあります。

患者様の年齢層に合わせて考えられるウイルスも異なるのですが、まずできる方法としては問診票に健康状況を詳しく書いていただけるようにお願いすること。他に院内スタッフの予防接種を促すこと。基本的なことではありますがマスクの着用を徹底することなどが挙げられます。

■滅菌専任スタッフの常駐
急患などでたて込んでいる場合、滅菌や消毒が手薄になってしまうことも考えられます。経済的に負担はかかりますが、滅菌のプロに片付けや滅菌などを託すことで、歯科衛生士や助手などのスタッフは各自の仕事に集中することができるのではないかと考えられます。


スタッフの安全面を約束する

スタッフの安全面を約束する

スタッフの支えあっての治療現場であるからこそ、スタッフに対する安全面をできる限り守る必要があります。特に歯科助手は麻酔注射やファイルなどの針刺し事故の危険性が高く、細心の注意が必要です。

特にB型肝炎患者の場合、誤って針刺しを起こすことで今後の人生に重大な影響が出てしまう可能性があります。B型肝炎はその感染力の強さから、死に至る可能性がある重篤な感染症であることを、まずスタッフに再認識してもらわなければいけません。

歯科医院側としてスタッフをこのような事故から守るために、出費を惜しまずB型肝炎の予防接種を受けてもらうことが望ましいでしょう。特に結婚前の若い歯科助手は後のライフスタイルを考え、必ず予防接種を受けてもらうことを徹底するべきです。

このようにスタッフの安全を守ることによって、患者の安全を守ることに繋がり、結果的に良心的な歯科医院であると認識されるでしょう。


安心して治療を受けてもらうために

日本の歯科医療における滅菌、予防策は海外に比べて落ちると言われています。感染に対する危機意識をもう一度学び直し、徹底することで患者に安心して治療を受けてもらう環境を整えることがまず先決です。

またホームページや初診カウンセリングなどで滅菌をきちんと行っていることをアピールすることも勿論効果的です。患者とスタッフを感染から守るための努力を惜しまないことは、歯科医療そのものに真摯に向き合うことと言えるのではないでしょうか。


お問い合わせ
当サイトに掲載されているコラムの内容や求人情報に関するご質問は左のボタンからお問い合わせください。

^